episode11.呪い子
僕の父さんはトパーズで、お袋はアメジストだった。
男前で、頼れる父さん。
優しくて、あったかいお袋。
宝石の瞳以上に、僕には光って見えた人柄。
"みんな「ほうせきのひとみなんてえほんのなかのはなしだ」なんていうんだよ、ここにいるのに”
"そうねえ....
......でも、自分だけが特別って考えたら、かっこいいでしょ?"
"'とくべつ?"
"そうだぞ、お前の瞳は世界中何処を探しても無いだろう。たった一つの.....
父さんたちの自慢だ"
そう言って低い位置にある僕の頭を撫でる父さん。
僕は両親の自慢で、両親は僕の自慢。
なんて素敵な話なんだろう。
例え両親の悪口を言っている奴がいたとしても、その人はきっとお袋たちのいい所を知らないだけで。
例え僕の悪口を言う奴が現れても、それは僕のきらきらした瞳が羨ましいだけで。
優しい両親の、2人の片目を受け継いで、あの優しい眼差しを受け継いで、幸せだった。
起きて、3人でご飯を食べて、村の子と遊んで、父さんが帰るのを待って、本を読んで貰って、3人で寝る。
この日々に、一体どれくらいの価値があるだろうか
きっと、この瞳より、この涙より、きっと、きっと...
__________
「......」
「......っく、ふっ…..」
床に、ばたばたと落ちる涙に、僕らは唖然とした。
「......結晶になってない...」
「消えて...ない......」
紫の瞳から、輝く金色から、零れる涙は、瞳を消そうとしなかった。
呪いの子......と、誰かが呟いた。
「、分かってる.......分かってるんだ...」
「僕が根んでるのは、お前なんかじゃなくて、きっと...エメラルドでもなくて。」
止む気配のない雫は、シオンさんの頬を赤くする
バルトさんが何か声を掛けようとしているのか、たじろいでいる。
僕なら、こういう時、なんて声を掛けるだろう。
...考えるだけ、無駄だろうか。
「...御伽噺なんか信じる僕がおかしいのか」
「......村のみんなは、父さんたちのことを事故だって言ったんだ。
目が覚めたら、父さんたちはいなくて、村の人達が僕に落ちた後のことを話した」
「僕も話した。あいつが落としたんだ、って。エメラルドが僕らを......って..」
「......言、った、のに...」
"何を言っているんだこの子は...”
"きっと事故の後遺症じゃないかしら"
"まあ!可哀想に......”
「みんなは揃って僕がおかしいと言う。崖から落ちて頭を打ったせいでおかしくなったって。」
「病気だって言われて、誰も僕を引き取ろうとしなくて、孤児になった。」
「あの村が優しい?
ふざけるのも....大概にしろって話だ...」
歪む顔を見つめる。
「バルトの時だって.........夜中に騒いだ僕らが叱られた。きっと、誰もじてくれなくて...」
「......」
「バルトと村を出て、騎士になった。エメラルドのせいだって思い込みたくて、エメラルドを探そうと...」
「......後悔はしてないんだ。
王を守るのなんてどうだっていい。ただ、僕が村を出た口実を作りたくて。」
「...」
「1番、恨んでるのは...?」
「......え、」
「君は..誰が、何が憎いの......?」
「.........」
彼の口元が震え、同じように震えた手が胸元を掴んだ。
「......ぼ、くは...っ」
今度こそ、紫の瞳と、黄金の瞳、両方と目が合った。
「僕が...っ
僕が本当に恨んだのは....っ」
「エメラルドでも、宝石狩りでもない。」
を言じず、僕たちを追い出した村の人たちと、」
「勝手に失って、勝手に悲しんで、勝手に他を恨んだ、….」
「この、僕だ」




