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第13話 内助の功

 都市までやってくると、この土地本来の温暖さが続いていることに一つの納得を得た。

 北風に冷たさは感じるが、多少着込んでいれば野宿をしても死ぬことは無い。

 元よりそういう土地なのだろう。


 だが溶岩地帯はそうではなかった。

 遮るものの乏しいあそこは、北方からの冷たい風が凄まじい勢いで吹き付けてくる。

 特に断崖付近の風は一際強い。

 あの長い壁に吹き付けた風が纏まり、更に勢いを増しているのだろう。


 加えて黒一色の大地。

 石は土に比べて熱を貯め込み易く、冷めやすい。

 だから夏季でも夜はそれなりに冷え込んだが、火山側から流れてくる温風もあって過ごしやすい環境だった。

 寒暖差の激しさは当初より問題視していたが、冬季になってそれが顕著化すると、体調を崩す者が続出した。

 一時的な気候の変化だとしても、入植していくのであれば、薪となる森の再生無くしては困難だろうと思わせるほどに。


 いや、と。


 入植なんて。


「カーリ」


 市壁を越えて、二人が待っているだろう家へ向かおうとしたら、誰かに呼び止められた。

 いや、誰か、はすぐに分かった。

 もうすっかり耳に馴染んだ、いつまでも聞いていたくなる人の、声。


 朝のひばりの中から差し込まれる様な、ぬくもりにも似た声音だった。


 向き直った先、灰色の髪の少女が立っていて、私の顔を見て少し表情を曇らせるも、すぐに笑顔となって迎えてくれる。

 かつて故郷ではドレスを身に纏い、一戸の屋敷に住んでいた方なのに、今ではそこらの町娘とも変わらない様な格好をされている。住んでいる家も、出来る限り安全で格の高い場所を選んだが、庭の一つも無い小さな所だ。


「エラお嬢様……家でお待ち下さいと連絡したのに」

「いいじゃない。カーリと早く会いたかったのよ。ここしばらく、ずっと森向こうで頑張ってくれてたから」


 いきましょう、そう言って先導する彼女の周りを探っても、メェヌの姿は無かった。

 家だろうか。

 だとしても一人で歩かせるのは危ない。


「ほらっ、こっちよ」


 日差しを背に笑い掛けてくるエラお嬢様に従い、人の流れへ乗って進んでいく。


「家の方向とは違いますよね?」

「お買い物よ。それと少し散策しましょう? カーリ、こっちへ来ても用事を済ませるだけで、いっつも遊んだりしてなかったじゃない」


 現場を任せて出て来ている以上、不必要な時間は使えなかった。

 だが今日くらいはいいのかもしれない。

 エラお嬢様が楽しそうだし、今更現場を気にしても仕方ないんだから。


「今日はゆっくりしましょう? 良い所があるの、案内するわ」


 腕を捕まれ、その事に驚きながらも、抵抗する気力も湧かず付いて行く。

 日差しがやけに眩しい。

 目が眩んで、先が見えない程だ。


    ※   ※   ※


 小高い丘の上にある長椅子に座って、街並みを眺める。

 こんな椅子、誰が設置したのだろうか。領主なんかが作らせたにしては造りが不格好で、なのに角にはしっかりとやすり掛けがされ、手触りも悪くない。

 道中同様、周囲には草が生い茂っていて、人の踏み鳴らしただろう細い道が続いているだけの場所。


 なのに見える街並みは絶景だった。


 遠く都市を囲う市壁から、川の上流に位置する貴族街と、そこに程近い富裕層の住む場所。高い場所を選んで建ててあるのが教会だ。生活用水を汲んでくるのだって大変だろうに、連中はいつだって目立ちたがりだから。

 そこから下流へ視線を投げれば下町がある。

 都市の中を流れるほどに汚れていく川と街並み。

 憤る者も居るのだろうが、私は不思議と人の息遣いを感じた。


「たまにね、ここへ来るの。都市を出歩くなんて初めてだったから、最初は街中を見て回るのが楽しかったけど、昔からこうしていたからかな……少し離れた所から見る景色も嫌いじゃないの」


 隣で楽しそうに話すエラお嬢様。

 思えば故郷では伝染病と偽って時間稼ぎをしていたのだから、出歩くことは滅多に無かったのだろう。

 ならせめて、都市について調べて、案内をするべきだったのか。


「いつか、私達が開拓していった土地に人が住む様になって、こんなに大きな都市が建つことになれば、どんな形がいいかなって考えるの」

「素晴らしいお考えです。先々を見据えて、構想を練るのは、頂点に立つものがまず行うべきことですから」


 でも、という思考は押しやって。


「なるほど。都市で活動して頂くことには、そんな利点もあったのですね。私はどうにも、定めた目標にばかり目が向いて、視野が狭まっていたようです」


 道を作るということは、人が行き来する環境を作る事。

 ただ均して舗装した土地が延々と続いていても、それは道とは呼べない。

 僅かであれ、人が通ってこそ。

 ならばどんな都市を作るか、という思考は当然持っているべきものだった。


「人から好かれる所もそうですが、交渉の上手さなんかも考えると、本当にエラお嬢様は領主としての才があるのかも知れませんね」

「ほんとう?」

「えぇ」


 私などでは推し量ることも出来ないが、もしあのままファトゥム家の領地を引き継いでいたらなら、とても良い治世を築いたと思える。


「そっか。よかった」


 長椅子の端を掴んで、足をぱたぱたを振る。

 はしたないですよ、と言い掛けた口が、つい吐息を漏らした。


「どうしたの?」

「いえ」

「ほんとうに?」

「はい」

「……うん」


 それでね、と言葉が続いて、街での経験が語られた。

 商人達との交渉や、こちらでのお祭り、何気無い風習、道で会った老婆から聞かされた昔話。

 本当に良い経験をされた。

 港湾都市の、あの屋敷の奥へ押し込められていた時では考えられない、色鮮やかな日々だったと心から思えた。

 我が事の様に胸が熱くなる。

 嬉しい。

 楽しい。

 貴女が幸福を感じてくれているのなら、なによりも。


 けれど。


「申し訳ありません、お嬢様。この事業はここまでです」


 資金が枯渇した。

 これ以上続けていく事は出来ない。


    ※   ※   ※


 綺麗に見えていた街並みが急激に褪せていくのを感じた。

 今まで愉しそうにしていたお嬢様の表情を曇らせること、この先の夢を叶えてさしあげられないこと、全て自分の無能さ故であると後悔せずには居られない。


「どうして……? まだ、活動出来るだけの資金は十分にある筈よね?」


 買い付けを担当して頂く以上、私の纏めた帳簿は全て提出している。

 月々の雑費も含め、食費を把握しているもあって、お嬢様の疑問は正確だ。


「はい。活動だけならば、可能であると言えます」


 資金は残っている。

 元より異国からの船一隻分、目減りしていることを考えても一財産と呼ぶに十分過ぎる金だ。


「問題は、私達の使用している労働力が、奴隷が、犯罪奴隷であるという点です」


 通常の奴隷であるなら問題は無かった。

 奴隷は、売ればいい。

 けれどあの領土の特殊性がそれを困難にする。


「前に犯罪奴隷を領土から出すことは出来ないとお教えしましたよね」

「えぇ。開放する場合、領主が責任を持たなければいけないから。他所の領地に逃げて迷惑を掛けたら、解放した領主が賠償するって」

「これと同じく、犯罪奴隷を領民に売る事は出来ますが、売った奴隷が外に出た場合も一定の責任を負う事になります。犯罪奴隷は、通常裁きを行った領土に紐付けられて、外へ出ることが出来ません」


 実態としてはなし崩し的に外へ出ている者も多いと聞く。

 古い取り決めというのもあって、この手の面倒な決まりは()()()()で済まされがちだ。

 それでも表沙汰になった場合は、領主は領主の力で以って買い取った者に責任を負わせる。

 ところが私達は売りつける相手も居なければ、責任を負わせる力も無い。


「エラお嬢様の持つ領主権限は、事業の破綻と同時に失効します。つまり、領土自体が無かったことになり、犯罪奴隷達は行き場を失う」

「それって、どうなるのかしら……?」

「これは過去の件を調べた一例ではありますが、かつて領地を追われた元貴族が、この犯罪奴隷の処理をし損ねた為に、彼らの逃げ込んだ領地の貴族から賠償を請求され、支払いが出来なかったことで…………その貴族の奴隷に落とされました」


 あくまで法を上手く利用し、陥れた結果ではあるだろう。

 何食わぬ顔で他領からの奴隷を受け入れ、労働力として運用しただけの場合も多分に存在する。

 奴隷の購入はそれなりに金が掛かる。

 横のつながりが強い土地では、脱走奴隷を捕まえたら持ち主へ返す、などという考えもあるが、大抵は持ち逃げして利用する。領土が違うのであれば尚更だ。


「そうならない可能性も十分にあります。ですが、私達は背景を持たず、爵位も持たない没落貴族。弱者から奪い続けることで成り立つのが貴族社会です、なにをされるか、ここからは想像もつかない」


 だからせめて法に準じて出来る限りの予防はしておきたい。


「話を戻しますが、資金の問題です。この犯罪奴隷達をここの領主へ引き渡す、それが最も安全で確実な方法でしょう」

「…………それは、お金が掛かることなのね」

「はい」


 犯罪奴隷は、実態は別としても危険な存在とされている。

 導く者たる王に連なる貴族は、民を先導する義務がある。

 故に、その責務を肩代わりさせるのであれば、当然金を支払わねばならない。


 弱者から奪い続けることで成り立つのが貴族社会、ならばこそ。


「以前、黒曜石の密輸団を捕らえた時の事を覚えていますか?」

「えぇ。カーリ達が森で見付けてくれたって」

「その際に、直接領主へ目通りすることは叶いませんでしたが、褒章を受け取る際に嘆願書を贈ることは許されました」


 商売下手な領主にとって、安定収入で文句の出辛い黒曜石に対する関税は、生命線の一つと言ってもいい。

 それだけにかなり寛容な判断を引き出せた。


「私達が抱える犯罪奴隷、その詳細と共に財務官と交渉した結果、この一年以内に売買する際の値段をほぼ固定する形で決定出来ました。あくまで現段階では見積もり状態ですが」


 この一言で全てを理解したのだろう、お嬢様は口を閉じ、小さく頷く。

 固く握られた両手、それを取る資格はないのだろうが。


「ですので、ここまでなんです。まだ資金はありますが、それはこの、犯罪奴隷達を領主へ引き渡す際に支払う分でほぼ使い切ります。残る額は僅か。それを以ってこの先どうするかを定めなくてはなりません」


 三人だけ、あの村に住み着いて、時折つるはしでも抱えて森を越えていくか。


 あるいは勅命など放り投げて異国へ逃げるか。


 船を使うにしてもこの国のものは見張られるかもしれないから、どちらにせよ北か南へ向かう必要はあるだろう。


 ここを越えれば、その選択肢すら持てなくなる。

 三人纏めて奴隷へ落ちるか、やはり裏切り者だと処刑されるか。

 それだけは。

 それだけはどうしても避けたい。

 例え私自身がどうなるとしても、エラお嬢様とメェヌだけは。


 だからこそあんな馬鹿げた挑発を王相手にやってのけたのだから。


 結果無用の警戒と毒を盛られることになったのだから、間抜けとしか言いようがないか。

 まさしく王の手腕は見事だった。

 あれがただの奴隷であれば、もっと粘ることが出来た。

 不要になれば売ればいいだけの財産だ。

 なのに煽り立てたこちらへ支援の体を取りつつ、騙される連中にとってはまさしく慈悲深き王と映る形で、私達の首を締めに来た。


 犯罪奴隷を送り込む、この一手で報復して見せたのだから、もう降参するしかない。

 この悪辣さがあるのなら、ブレイダルク王国は安泰だ。

 はっ、皮肉だけどな。


「確認するけど」

「はい」

「お金の問題なのね」

「えぇ。後の事も考えるなら、この冬に動くのが最も賢い。どうしますか? 寒いですし、南へ逃げるという手も良いですね」


 破綻を導いた身では心苦しかったが、こうしてお嬢様に打ち明けたことで、ある種の清々しさも感じていた。

 収入の無いまま財産を目減りさせていく日々は実に胃の痛いものだった。

 あの息苦しさは異国でもそう味わえるものではなかったしな。


 だからややも陽気に言ってみせた私に、お嬢様もどこか、ようやく安心したとばかりに柔らかく微笑んで。


「来て、カーリ」


 立ち上がって、手を伸ばす姿を見て、あれ、と思った。

 守ろう、助けよう、そう思ってきた女の子がふと、とても大きく強い存在に見えたから。


 この都市で一年近く、メェヌや私の補助を受けながらも過ごしてきた灰かぶりの姫君は、掴んだ私の腕をしっかりと引き上げてくれた。


    ※   ※   ※


 案内された宿の一室。

 いや、そこは部屋といって良いのか、二段式の寝台と小さな机が一つあるだけの、かつての使用人部屋よりも更に狭い、収納じみた場所だった。


「これと、これと、あっ、ここのも」


 机に積み上げられていく小袋の群れを、私は呆然と見詰めていた。

 寝台の下段ではメェヌがおり、悪戯を成功させた子どもみたいに()()()()と笑っていた。


「あの、ここは……」

「私達の部屋よ」

「結構初期から、ずっとです」


 寝台下の床をひっぺがし、新たな小袋を取り出すエラお嬢様。

 そんな所、絶対元々あったものじゃないでしょう?


「いやそうではく、私が選んだ家は? 私も時折訪問していましたが、あそことは別に宿を取ってらしたということでしょうか?」

「違うわ。最初から、カーリの選んだ家には住まなかったの」


 どういうことだ?


「貴方には悪いと思ったんだけど、お金が無いのは私達だって分かっていたから、早々に引き払って、以降はずっとここに住んでたの。朝晩働くことを条件に、なんと無料で使わせてくれてるのよ」

「貴方が来る時は、大家に頼み込んで誤魔化してましたね。まあ、ここの常連でもありましたから、エラ様がちょっと笑顔で頼めば簡単に、ふっ」


 状況が呑み込めない。

 それと、さっきから積み上がっていく小袋はなんだ。

 いや、音から中身は分かる。

 分かるが、理解が追い付かない。


「メェヌは連絡役で居ない事も多かったけど、殆ど毎日ここで働いてるのよ。カーリが来る時は特別。休みを貰ってたの」


 働く?

 エラお嬢様が?


 いや、商人達との交渉だって労働といえば労働だが。


「グィンさん達もよく食べに来て下さるの。大きな取り引きの時は時間を取るけど、普段通りのものであれば、休憩時間にパパっと交渉をしたりとかね」


「そういえばご老体もよく都市へ顔を出してたそうですが……」


「えぇ。もう何度も通って下さって。お酌をするととても喜んで下さったわ」


 ドン、と最後に大きな袋が乗せられる。


 もう。

 あぁ、もう分かってる。

 圧倒されているだけだ。


 お嬢様とメェヌは私の選んだ無駄に高い家を即座に引き払って、住み込みの仕事を始めた。

 交渉事などはしっかりこなしつつ、私が来る時にはバレないよう偽装までした。

 おそらく、知れば止められると思ったのだろう。

 それは正しい。

 だって、エラお嬢様を都市でも比較的大きな所とはいえ、宿の給仕として働かせるだなんて、私は絶対に反対した。

 そうして積み上がる小袋達。

 これは。


「貴方がくれた、ここでの生活費は殆ど手を付けてないの。お仕事中は食事も貰えるから。それと、今日までの私とメェヌの稼ぎもあるわ。これだけあれば、まだしばらくは活動出来る筈よね?」

「はい……」


 帳簿を知りたいと言われた。

 否やは無いと思い、木簡まで作らせて、報告していた。


 買い付け以外の、月々の出費を彼女も把握している。

 犯罪奴隷の処理という一点だけは、知識の外にあったが。


「ぁ、あぁ…………っ」


 思わず額に手をやり、頭を抱えた。

 感じているのは猛烈な羞恥だ。


「ど、どうしたの? 大丈夫、カーリ?」

「放っておいていいですよ。思い上がってたことにようやく気付いただけですから」


 メェヌの言う通りだ。

 私は三人で、と思いながらも、常に自分が全てを掌握し、動かすことを前提として行動していた。

 事業を進める上で重要な、資金上の問題すら胸の内に秘めて、限界まで明かさなかった。

 結局二人が自分のようには出来ないと勝手に決めつけて、切り捨てていたのだ。


 何が異国で学問を修めてきただ。

 帆船一隻分の借金を笑って受け取ってくれる友人が居る?

 王を相手に喧嘩を売って、疑心や敵愾心を自分へ集めようとしていたことなんて、どれだけ思い上がっていたのか。


 エラお嬢様は、メェヌは、最初から三人で戦い抜く事を選んでくれていたのに。


「申し訳もございません。私が間違っていました。二人には、今間違いなく救われています。本当に、ありがとう……っ」


 本気で謝罪し、感謝を述べると、お嬢様が頬を染めて視線を右へ左へと彷徨わせた。後ろのメェヌなんて寝台の上で皮肉げに笑っているのに。


「そ、そんな大層なこそじゃないわっ。その、最初はカーリをびっくりさせたくて、私も黙ってたんだし、今のだってちょっと調子に乗ってたかもしれないわ。だから私は別にっ」


 と、視線が絡んで向かい合う。

 自分も同じくらい赤くなっている自覚があった。


 灰色の髪が目元へ掛かり、紅潮する頬を隠す。

 なのに透明感のある髪は、真っ白な、けれど少し日焼けして健康そうになった肌は、彼女の羞恥を想いと共に見せ付けてくる。


 瞳が揺れた。


 大切な人が、自分を想って途轍もない苦労を背負い、力になってくれた。

 これは喜びであり、嬉しさであり、誇らしさでもあり、何より、


「カーリ、私……」

「エラお嬢様……」


 藤色の瞳に吸い寄せられていく。

 抱き寄せたい。その細くて小さな肩をかき抱き、力一杯愛を囁き続けたい。今なら千の夜を越えたって言葉が尽きないだろう。


 エラ。

 エラ。


 貴女の笑顔が見たくて。

 貴女を苦しめる全てを払いたくて。


 なのに私は、今も未熟なまま。

 けれど求める心が胸を焦がす。


 嗚呼、エラ。


「――――おほんおほん。流石にその先は二人きりの時にして下さい。本当に申し訳ないのですが、目の前でおっぱじまったら私もどうしたらいいか分かりませんので」


「お、お、お、おっぱじまるってなんんんのこと!?」

「そうだぞメェヌ!? なにも始まらない! 終わってすらいない! これからだ!! ……うん?」


「はいはい。分かったら今後の話をしましょう。それとも先に済ませますか。ええと、一刻くらいでいいですか? それか今日は別の所に宿を用意しましょうか。ちょっと空いている部屋を抑えに行きますね。折角ですから一番良い部屋にしましょう」


 私達以上に顔を真っ赤にしたメェヌが余計な事を始める前に、ファトゥム家当主及び家臣団一同の、合同会議を始めることにした。

 

 その後?


 私は夜を前に市壁を飛び出し、熱で茹だった頭を冷やすべく、全力疾走で村へ向かって駆けていったさ。あぁ、馬を忘れたままな。そういえば都市を離れてすぐに、鹿と出会ったんだった。

 別に他意はない。






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