人猫伝
猫になりたいと言っている友人がいた。
よって友人のあだ名は“ネコ”であった。
アクセントは猫ではなく、根古というふうのネコである。
「どうして猫になりたいの?」
と、れいが訊くと、猫が好きだからと答えた。
確かにネコは犬と同様に猫が好きで、猫もネコが好きだった。
ネコが外を歩いていると飼い猫、野良猫、子猫、大猫問わず寄って来た。
ネコほど猫に愛され、猫を愛した人を知らない。
東に病気の猫あれば、行って看病してやり、西に疲れた猫あれば、その稲の束を負い、南に死にそうな猫あれば行って怖がらなくてもいいといい、北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないから辞めろと言った。
ときには猫の集会に参加して、猫たちと世間話に華を咲かせている光景をれいは度々目撃した。どうやらネコは猫の言葉がわかるようである。
「猫から教えてもらったんだけど、どうやら猫になる方法があるらしいんだ」
と、ある日、ネコがいった。
「どうやって?」
「簡単だ。猫のように生きればいい」
「はあ?」
その日から、ネコは猫のように生き始めた。
猫のように眠り、猫のようにしゃべり、猫のように食べ、猫のように考え、冬はこたつで丸くなる。ネコは本当に根古になった――。