地下室作り日記!?
地下室のドアが開くと、息を呑む音が背後から聞こえた。どーだい!!と言いたい。何せこの部屋は自分のやりたい事を詰め込んだいわば宝箱なんだ。
「ちょっと質問させて下さい。確か『地下室』に入ったはずですよね?」
ラルト皇子は意外に馬鹿なんだな。地下と地上の区別もつかないのか?
「お兄ちゃん!!漏れてるから。相変わらずダダ漏れとかいい加減にしてよ。」
ナラは機嫌が悪いようだ。
でも、この連中相手にダダ漏れは不敬で厳罰になる可能性があるから気をつけなきゃな。
「ザルツ。ダダ漏れでなく本音でそのまま喋れ。これではかえってややこしい。」
ため息混じりのガルクルトの声に振り向けば、全員の顔色が悪い。明るさが低いからか。
「申し訳ないな。今、明かりを強くするから。
スペード。頼むよ」
夏日の眩しさ並みの明るさを確保して振り返ったら何故か、更に顔を白くしたメンバーがいた。これは薬屋にいってポーションを飲ますしかないか。
*** 地下室作り日記 ***
5歳6日目
今日、妹の魔法が爆発した。手から火が出てコケたら前世を思い出した。
5歳10日目
夢の中で『異世界転生漫画』が大量に頭の中に出てきたら高熱が出た。両親はコケたのが原因と思って不安だったらしい。
高熱が下がったから、お約束の魔法を挑戦したら…全敗だった。また、熱が出そうだ。
5歳20日目
never give up!!剣士に挑戦・農夫に挑戦した。他ももちろん頑張ったが…結果は全敗だった。
人生の無情を知って、大人になった日だ。
誰でも持ってる低レベルの魔法すら無いなんて。
6歳125日目
不味いご飯にとうとうキレた俺は食糧探しに全振りする事にした。近くの森に行っては、様々なモノを拾って集めたのに…。
また、失敗した。
魔の森と呼ばれ親に禁止されている場所から、苦労して拾った草は毒草だった。
その上、毒に当たって笑いが止まらない。
笑い草…恨みは忘れないぞ!!
ミントの香りに騙された。
6歳250日目
やった!!
初スキルゲットだぜ。毎日、色々なモノを拾い続けた努力がとうとう報われたんだ!!(時折毒に当たって死にかけたけど…)
『鑑定』レベル1
赤ちゃんの持ってるレベルだって?!
いや!!もうこの際レベルなんて良いんだ。
俺も魔法使いだーー!!
と、言ったら母の目が優しかった。
精神年齢が前世と合わせて35歳の俺は誤魔化されないぞ!!そんな可哀想な目で見ても無駄だ。これからが勝負なんだから。
なんたって目的は『うまい飯』だからな。
いつかはびっくりさせるぞ!!
7歳32日目
とうとう、大発見をした。
空っぽの魔石に魔法を詰め込むのに成功したんだ。「鑑定」で見つけた小さな魔石に最近ゲットした『空間魔法』を毎日詰め込んでいたら小指くらいの空間バックを作製出来たんだ!!
もう、両親にも秘密だ。
(最近、禁止事項が多すぎるんだよ。やっぱり、裏庭の畑のせいかなぁ。魔の森の草が多いせいかなぁ…)
きっと、大きな魔石を作ってびっくりさせるぞ!!
12歳58日目
小屋くらいの大きさ空間をつくれた。沢山の空間魔法を詰め込んだ魔石のおかだ。そこに裏庭の作物を大量に溜め込んだ。でも、そろそろ手詰まりだ。
もう少し大きな『空間魔法の詰まった魔石』が欲しい。そんな事を考えていたら。
大発見をした!!
なんと、魔石って栽培出来るんだ。まぁ、これは俺の『栽培』スキルで出来るんだけどさ。
とにかく沢山のクズ魔石を裏庭で育てたよ。
このスキルならたった1日で桃だって実る。たわわに実った魔石の木に両親が腰を抜かすのは数日後だった。
凄いよな…俺って後天的天才か!!
15際185日目
ふぅ。無邪気な自分にさよならだ。
魔獣のせいなのか、作物の大凶作が続いて各地で飢えが充満。その上、魔獣が各地を襲った。
(魔獣も食糧が足りないらしいとか…)
もちろん、村人たちも例外じゃない。
餓死…その文字が現実化しそうだった。
だから…。
それまでために溜めた食糧を村に全開放した。
そしたら…。
あらぬ疑いがかかった。
泥棒…。
両親の悲しそうな顔が胸をつく。
スキルは隠すのが普通なのだが俺はその日、『栽培』を披露する事にして村長始め村人全員を集めて説明したら。
「これを育ててみよ」
村長の言ったのは、5年で5センチしか育たない「精霊の木」
おぉ、無理ゲーだとこんな無茶ぶりするとは。
俺ってば、かなり激怒してたのかもしれないな。
「じゃあ、見ていて下さい。」
レベル25クラスの俺なのに。なんと「精霊の木」はあっという間に2メートルの大木になった。
これを出来るのはレベル60以上の上級魔法使いだと後から聞いた。絶好調だったのかなぁ、あの日の俺。
そして…
当然、魔力不足で俺はその場で気絶した。よく、無事だったよ。丈夫さはもしかして、チートかも。
その日の夢の中で俺は知った。
「栽培」「鑑定」「空間」の三つを合わせると凄い事が出来ると(時折、前世の記憶が夢の中に出てくるんだ。忘れちゃう時が多いけどな。)
そして合わせ技もあると知った。
無茶振りも、役に立つと知った日だった。
18歳の誕生日
地下室は完成した。
空間魔法の魔石を数千個配置したその広さは
だいたい東京23区くらい(やり過ぎだと注意をするのは専らナラの役割だ。そのせいか、毎日小言の嵐だが…)
その中には俺の「うまい飯」の目的がぎっしり詰まっている。
そして…。
村人全員のための
「飢えのない備蓄」も。
あの、魔力不足で倒れて目覚めた日。
村人全員が家の前で土下座してくれていた。目覚めるまで、誰も家の前から動かなかったを聞いて俺の怒りは終わった。
とは言え、寝ると忘れるタチなんだけどね。
そして
その日から、村人全員が「地下室」のために全面協力してくれたからこの『地下室』が完成したんだ。
だからここにはこの国を救えるほどの食糧がある。
でも…
まだまだやるぞーー!!
21歳2日目
「地下室」の解放はこれからの為だった。
だけど…。
この「地下室」から俺でも信じられないモノが生まれるとは思ってもみなかった。
マジか…。