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見つけたヒントは?!



「こっちの方もまた、黒ジミが増えたぞ!!」

最後の方は悲鳴に近くなってしまっても許されると思う。大嫌いなホラゲの中に何故か自分が入ってしまったのだから。いや、正確に言うならば現在の俺がそういう状況だと言うことなんだよ。


飲み込まれていく…。

と,言っても森に変わってゆくだけなら良かった。

森に変わってた街が黒ジミに侵食されて消え始めたのを見た時は本当に怖すぎて悲鳴を上げてしまった。

更に、その黒ジミがだんだんと広がってゆく有り様は俺をパニックさせるのに充分な衝撃的な光景だった。でもさ、誰だってこんなの怖いに決まってる。 

あの時…。

そんな、恐怖にやられた俺の慌てぶりと真反対なエガランがいなかったらマジでヤバかった。ぐるぐる逃げ惑う俺はを捕まえて、「大丈夫だ。2人で必ず脱出しよう。」と落ち着いて言ってくれるエガランに感謝しかない。

俺1人なら、思考する事すら不可能だったよ。エガラン、マジすげ〜よ。


「ザルツ。大丈夫だよ。この黒ジミには明らかに規則性がある。東西南北のそれぞれが一定間隔で少しづつ狭まってきている。この分なら、まだかなり余裕がありそうだ。」


えっ?途中は聞こえなかったけど、最後「かなり余裕がある」のセリフだけはちゃんと聞こえたよ、俺。


震えながら縋りついているエガランの上着の裾を更に握り込んで見上げれば、ほんの少しの笑顔が見えた。


じゃあ…まだ大丈夫?!


「ザルツ。大丈夫だと言ってやりたいが、この規則性がいつまで保たれるか不明なのだ。

少し落ち着いて考える余裕がある。と、いうくらいの事だと思って欲しい。そして出来れば

先程までの、明察をまた頼みたいのだ。」


いや、明察なんて何もしてないよ。

ただ、黒ジミに見覚えがあるってパニックになって叫びながら言っただけで。


「落ち着いて、黒ジミをどこで見たか教えてくれ。」

と問うエガランに頷いた。



あれは。。。


『魔の森』で見たんだ。

迷い込んだ時に毒キノコを料理をしていた時だ。毒キノコの毒抜きをする為に懐から調味料を取り出そうとした時だ。

足元に黒い影が横切ったんだ。


ゾワッとした。

何故かその影が無性に恐ろしかった。

でも、その時は空を雲が通り過ぎた影が横切ったんだと思って気にしてなかった。

でも…実際にはあの『魔の森』に空なんか無い。

いや、ちゃんと言うと空なんか全く見えないが正しいのか。

あの時の俺は料理に夢中でよく考えなかったから平気だった、みたいだ。


それに後から気づいた時、ゾワッとした恐怖が蘇って震え出した俺に、ゼリアが慌てて駆けつけてくれた。

突然震え出した俺の額に手を当てたり抱き上げて布団に寝かしつけられたりして困ったんだ。アイツ、ああ見えて世話焼きなんだよな。まぁ、そのおかげで恐怖心から逃れられたんだけどさ。


「黒ジミの事はこのくらいだよ。エガラン。少し余裕があるならちょっと休めないかな?俺、足が痛くてさ。」


「詳しい話をありがとう。とても参考になったよ。

いつから足は痛むんだ?俺に言ってくれれば背負ったのに。とにかく、足を見せてくれ。」と、言うなり強引にその場に俺を触らせて足を持ち上げて観察を始めた。


びっくりからたち直った俺は必死に叫んだよ。

「いや、大丈夫だから。ドワーフの膂力が凄いのは理解してるから!!」

叫ぶ俺を完全無視したエガランはまだ、しげしげと足を観察中だ。


「痛っ!!」

足首を動かされて、思わず呻いた。


「不味いな。完全に筋違いしているぞ。これは前からかなり痛んだだろう。」眉間に皺を寄せたエガランが心配そうにこちらを見た。


。。。


無言を貫くぞ、俺は。何故ならこの筋違いはあの公園で薬草摘みをしている時に何にも無いところでコケたせいだからだ。



ドジ。


前世から言い尽くされたこと言葉は、今世こそ言われたくないのだ!!そんな無言な俺にエガランは苦笑しながらため息をついた。


「ふぅ。変なところが我慢強いというか、頑固というか。とにかく、俺の肩に掴まれ。」


そう言うと有無を言わさぬ強引さで俺を担いだエガラ。おいおい、俺は成人男性だぞ!!

その膂力はどこからくるんだよ…羨ましすぎる。。


コホン。。。


とにかく、馬鹿力で叶う筈もない俺はエガランに担がれて公園へと向かう。


公園へと、言うのもエガランの提案だった。


「公園の正式名称は『国立中央公園』と言うのだ。この規則性が保たれるならば、あそこが一番安全のはずだ。」


公園のベンチに俺を下ろしたエガランが突然、洋服を破き出した。


「おい、おいってば。まさかまた変に…」


「大丈夫だ。その足の応急手当てに使うのだ。」


「あのなぁ…」


ため息が出るよ。

エガランはいい奴だけど、一言足りないんだよ。最初のあの獣の様な有り様を知ってる俺としては信じられないくらい今は信頼してる。

きっと、本来はこちらが本質なのだろうな。

テキパキと足を固定してゆくエガランは、今はまだ窶れている。


「エガラン。とにかくコレを飲めって。まだ本調子からは程遠いんだろ?」


空間魔法使いの俺は、しまった『薬草茶』をエガランに差し出した。

俺も自分用に一つ出して飲む。


「苦っ。。やっぱり元気が出るけどあじが問題だな。帰ったら改良しなきゃな。」

改良方法を考え込んでいる俺の横で、エガランが「ほう…」と一息ついた。


エガラン…味覚音痴か。

コレ飲んでその表情って。。


「こんなに効く『薬草茶』は初めてだ。それに味のある物を食べたのも久しぶりだ。乗っ取られると、全く味覚が無くなるからな。

しかし、ザルツ。こんな貴重な薬草はどこの森で採ったのだ?」


味覚が無くなる。

そんな酷いことあるか!!

俺は料理人だ。美味しく食べる、食べれるモノを作るのが俺の前世からの変わらぬ信念だ。


その俺の前に何年も味覚なしで過ごしたエガランがこの苦いお茶を笑顔で飲んでいる。


その事が胸に迫った俺の涙腺が、ちょっと故障した。え?泣いたんじゃないかって?


違う違う。

俺は泣き虫じゃ無いし!!


「聞いてるのか?ザルツはどこでこんな素晴らしい薬草を手に入れるのだ?」


1人でアワアワしていた俺に再びエガランの落ち着いた声が聞こえた。


「あ、これ?これはこの中央公園の森から頂戴したんだ。え?ダメだった??」


その答えを聞いた途端に、エガランの顔から血の気が引いた。

まるで、幽霊の様な顔色になったエガランに慌てて近寄れば腕をかなり強く掴まれた。


「痛っ!!エガラン、痛いよ。力を緩めてくれよ。」血走った目で俺を見つめるエガランがこえーよ。


「ザルツ。ザルツよ。答えてくれ。本当に、本当にこの中央公園から全ての薬草を採ったのか?」


あまりの迫力に俺は壊れた人形の様に首を縦に振った。


「この中に使われているゴマノハグサもか?!」


おぉ、よく知っているな。ゴマノハグサ…別名地黄。強壮剤として有名だよ。

俺は大きく頷いた。


「まさか…怒りが解けたというのか。ザルツ!!そうならば、この公園こそがヒントにあった違うモノだ。ここは毒素に汚染された呪われた森なのだから。」


その言葉を黒ジミが聞いていたんだと思う。


だってさ。

エガランがそう言った瞬間、中央公園以外の街全てが黒ジミの中に沈んだから。


恐怖に震える俺を担いだエガランが向かった先こそ、エガランの言うヒントの場所だったのだ。


そして、タイムリミットはすぐそこまでに迫っていた。






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