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牢屋、なう…?!



牢屋、なう。。


思ったよりも、汚くないし臭いもなくてちょっとホッとした。

床も血がこびり付いているとか、小説やアニメで見てたから最初はビクビクしたけど、まぁ普通の石の床だった。


だいだい8畳くらいの広さにこの人数だから狭いのは間違いない。薄暗いのは高窓の上、窓も小さい。

脱出不可能だと言うのは納得したけど、刑事ドラマだとこの壁辺りに隣に繋がる通路とかあるかも。


あの魔の森を抜けたからか、牢屋探索に俺がゆっくり楽しんでいる横で、怒声が響いていて煩い。


誰だよ。


犯人はヤークル姫様第一主義のマクガさんとヤークル姫さんか。


「貴様ら、姫様をこんな場所に放り込むとは必ずや報いを受けさせてやるぞ!!」

「やめい。吾から『ザルツ殿らを牢屋に収監するならば吾も入れよ。』と申し付けたのだから

無理はない。」

「しかし!!」


はい!これはエンドレスですね。

俺たちだけで大丈夫だと言ったのに、譲らなかったのはヤークル姫さんで。

本当に一緒に牢屋に入って来た時はびっくりしたけど、王族だけに責任感はあるみたい。


まあ、だけどだ〜ーれも来ない。

この牢屋には見張りなんかいないのだ。


そりゃそうだろう。

さっき【鑑定】で見たけど、エグい加工の仕方だ。

この檻を構成する石は、見た事ない。

後で参考にして、味噌倉の作り方にしたいなぁ。

あっ!!床に使われてる鉱石の成分表示が出ない。

コレ、お土産に欲しいなぁ。


やっぱり牢屋の社会科見学は面白い。


楽しい牢屋探索の脇は、更に賑やかになっていた。

いつの間にこんな面倒な事態になってたんだ?!


「だ、だから!!もう大丈夫なんだって。この国に来てからはめちゃくちゃ体調は良いんだから、もう心配しないで。それより、牢屋に入れられた事の方が大変じゃないか!!」カザンの半泣きの訴えはゼリアにすぐさま却下されていた。

「とにかく、さっきまでは確実に具合が悪かったのだ。まずはベットに横になれ!!牢屋の事を解決するにもまずは健康からだ!!」

「だから僕は健康だってば!!ベットだって、1つしかないのに」


うーむ。。こちらもエンドレス。


とにかく、止めさせるためにもちょっとだけ改装しようと思う。

いい事を思い付いた俺はポケットから携帯エチケットを取り出した。




*** ガゼラン視点 ***


姫様が牢屋に収監される。

前代未聞の事態にマクガの怒りも頂点となる。

しかし、姫様はおちついたものだ。

人族を我らの城へ招くという事の意味を、ご存じなのだ。この事態を予測して尚、人族を招かれる。

それほど王太子様の事態の深刻さは待ったナシなのだ。

マクガも承知しているが納得はいかないのだろう。


人族の方も揉め事は尽きぬようだ。

ドワーフ族の領域に入った人族は数百年来無いのだから、焦る気持ちも理解できる。


ドスンンンン…。


突然の爆音に一同が一斉に振り向いた。


何だ?!

この堅牢な牢屋で、爆音など。。


か、壁がない。

振り返れば、壁が丸く無くなっていた。

そしてそこから、笑顔で何故か嬉しそうなザルツ殿が,こちらを覗いていた。

後ろには、生気のない表情で唖然としている3人が立ち尽くしていた。


以前ならばさすがの我でも驚愕のあまり唸り声も出ただろう。


が、牢屋の壁如き。。ザルツ殿ならば容易かろう。


「やっぱり、こっちの部屋も変わらないじゃないか!ね?ベットは一つだったよ。」

ザルツ殿の言葉。

苦虫を噛み潰した様な顔で聞いているいつものゼリア殿、少し共感を覚える。

彼に常識を求めても無駄だなのだ。

いち早く諦めた者が勝ちだ。


「改革は簡単だな。さぁ、ちょっと下がって。」ザルツ殿の言葉に先程まで怒り心頭だったマクガまでコクコクと頷いて下がる。


危ない…絶対に。


彼の手にあるモノは、何なのだ?!

「あ、コレ?『ハサミ』だよ。でもさ、紙を切るだけじゃ勿体ないからちょっと改良したんだよ。やっぱり文房具セットは携帯なきゃね。あー、エチケット守って良かったよー。」


「はぁぁぁ、、、ザルツのは説明じゃねえよ。だけど、ココから逃げ出すつもりなら大賛成だ。ヤークル姫様には申し訳ないけど歓迎されてないだろ?俺たち人間は。。」


彼の恨み節も、理解出来る。

理不尽。。現状はそれに尽きる。

歯痒さからなのかヤークル姫様も俯いて黙ったままだ。我々が請うて招いた賓客のはずなのだ。

更に言えばそもそも、ヤークル姫様の命の恩人。


ジリジリとした沈黙の中、ザルツ殿から何故か思わぬ反論が飛び出した。


「ゼリア。逃げるのはいつでも出来るって。でもさ、ヤークル姫さんのお兄さん困ってるじゃん。俺『良いよ、頑張ってみる。』って約束したんだ。嘘つきにはなりたくないんだよ。」


「ザルツ殿…」姫様の声が揺れていた。


「ザルツ。でも、逃げるったって。今しかチャンスはないかもしれないぞ。」


「あー、それは大丈夫だよ。タササは相変わらず心配性だな。」


「おまっ。。俺のは絶対普通の感覚だ!!」


タササ殿の質問は正に全員からの問い掛けだ。

我がドワーフ属の誇る王城は難攻不落だ。

我々の持つ技術の髄を集めて罠もたす。。。

はっ!!


「ふふふ。さすがガゼランさんだね。

コレが何か分かったのか。」


得意げなザルツ殿の顔を二度見してしまった。


「まさかタロウ殿とジロウ殿では…?」


手のひらにいるのは、確かに『ゼクガーラン』だ。魔獣とも聖獣とも言われその生態はおろか見た者すら殆どない。そう言われる。

しかし、あまりに小型。

まさか…縮小する術を?!


「コレは分身の術だよ。ちなみに【ヤモリ】も出来るからポケットに今は入ってる。

とにかく、太郎たちなら一瞬で脱出出来るから大丈夫。」


。。。

「やっぱり、門前まで連れて行かなくて良かった。」


マクガの小声の独り言にうっかり頷きそうになる。脅しとも取られるかと、ザルツ殿に出入り口の前に頼んだのだ。


しかし、そんな裏技があったとは。道理であっさり同意されたはずだ。


「とにかく、腹ごしらえが先だね。この国に来てから元気そうになったカザンにも食べて欲しいから今から特別料理を作るからさ。」


しかし、、

この料理が大問題だった。


とてもとても美味しかったし不思議な力が漲り、カザン殿が完全回復された。いや、全員がフルパワーになった。


だが…。


匂いが大問題だ。

あんなにも香りがする料理は初めてだった。


その名も『カレー』


ザルツ殿にとって、特別な想いの篭るこの料理はある意味、城中を大混乱に落としたのだ。





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