ドワーフの提案!!
少し手直ししました。
話の流れは変えておりません。誤字脱字など本当にすみません。そしてそんな拙いお話をお読み下さる皆さん、本当にありがとうございます。
「はい。皆さんの望む脱出は現状不可能だと思います。」とガゼランさん。
ふぅ、やっと見分けのついたよ。
ドワーフは、全部一緒に見えるから困るんだ。
一応髭なしの方が王様の次女ヤークル様
殺気込めるヤークル姫様第一主義がマクガさん
そして寡黙な賢者っぽい人がガゼランさん。
この人が【石竜】出した張本人ね。
そのガゼランさんから聞いた青天の霹靂。
脱出不可能って…。
ゼリア達の顔色もかなり悪い。
嘘のないのがドワーフの特徴だから、事実なんだろうけど。
『では、どうするのだ。提案があるのじゃろ?』いつの間にか立ち上がった山椒魚っぽく成長した名前は【ヤモリ】が尋ねた。
大きくなるなら、名前付け変更したいって言ったら尻尾で頭を殴られた。
守護者の癖にタンコブ出来たぞー!!!と怒ってるのに反撃食らったよ。
『怒っておるのはこっちじゃ。名付けを軽く見おって。其方は一定方向以外は完全なる阿呆じゃな。』とか言ってプリプリしてるし。
仕方なくさっき湖から採った潤菜っぽい野菜で、汁物を作ったら機嫌が直った。
鑑定したら【解毒効果A】だったよ。
顔色のあまり良くないカザンに食べさたら、少し笑顔になった。
汁物を食べながら、今後についてドワーフから是非にと話があると言われた。
ゼリアが食いついている。
「ガゼラン殿。もし、ご提案が有れば是非に!!」脱出不可能との言葉が余程堪えたみたいだ。
「実はここから我が国への道を拓く方法は心得ております。ただ、そこから人間たちの国へは…」
おや?ドワーフと人間って不仲なの?
しまった!!
疑問が口から出てたみたいで全員が一斉にこちらを向いてびっくり顔だ。
「ザルツはいったい何処の箱入り息子だよ。
ここ数十年、人間は他の種族との繋がりが絶たれているんだ。まあ難しい事は端折るけど多種族との境の国、アザレント公国での出来事がキッカケなんだよ。それ以来、どの種族も我々人間との繋がりを持たない。」
知らなかったよ。
いや、正直社会科の白地図テストは前世から苦手だから。
アザレント公国がどの辺りかも知らん。
ゼリア達からため息が漏れる中、落ち着いたガゼランが我々に希望の光を齎してくれたよ!!
「ヤークル姫様の兄君、エガラン王太子殿下は昔の事は水に流して人間との架け橋になろうとされております。
ですから、姫様の命の恩人であるザルツ殿達は特別ルートが開かれると思います。」
命の恩人。。。
そうなんだ。
さっき、【ヤモリ】とドワーフ達との話し合いで俺の作った川のお陰で魔獣ゼクランから逃れたのだとか言ってたっけ。
ゼクランって、そんなに凶暴だっけ?確か以前に【罠】にかかってたような。。。
そんな考え事をしていたのが、悪かったのか気づけばドワーフ全員から感謝の握手の嵐がきたけど。
正直、迷惑だった。
だってさ、握力、たぶん100以上なんじゃね?
俺の柔な手が砕けるから!!
特に、ニチニチと握って離さないピンクの頬が定番となったヤークル姫は困りすぎる。
失礼すると、カザンに睨まれるし。
痛いよりも、手汗がすごいし。
とにかく!!
ゼリア達はドワーフの提案に乗り気だったから明日一緒にドワーフの国へ出発しようと決めて今夜はテントで休む。
旅の前には安眠は何より重要だから
ドワーフ達にも『ほやほやログハウス君』を貸した。
清浄な空気に満ちている湖の周りは魔獣が出にくいらしいけど【ヤモリ】が危ないって言うから。完全に復活してないとか言ってたな。
とにかく、『ほやほやログハウス君』が大変気に入ったらしいヤークル姫からの『抱擁と言う名の羽交締め』に今度は肋骨が危機に陥った。
ふぅ。
ドワーフを友人にするのは、命懸けだな。
きっと、アザレントでもコレが原因で仲違いしたに違いない。名推理をした俺は『石竜』解体ショーでの疲れが出て即寝落ちした。
*** ガゼラン視点 ***
見張りに立って暫くして、やはりかの御仁は現れた。それを見越して、我々で見張りを買って出たのだ。
「『聖なる主様』きっとお越しになるとお待ち申し上げておりました。」
やはり、また成長されている。
これはザルツ殿のあの食事のせいなのか。
「ふん。我の事は其方の思考範囲などには収まらぬ。探ろうとするでない。
それよりも、何故我がここに来たか理解しておるか?」
私は深く腰を曲げてお辞儀をすると『聖なる主様』を見つめ返して予測を口にした。
すると、細い目を更に剣呑な雰囲気に細められた。その圧力が強すぎて膝をつかずに見つめ返すだけで精一杯だ。
「ほう。我を直視出来るか。ドワーフにもその領域まで達した者がおったか。
そうじゃな。我が守護したモノを利用しようと言うのだ。それなりに理由は必要じゃぞ。」
「利用などとは。ただ、ザルツ殿の類稀なお力をお借りしたいと。」
「たわけが!!その内容を言わずに脱出不可能と言う言葉の餌で釣るとは情け無いな。
それほど、王太子は切羽詰まっておるのか?」
やはり全てをご存じか。
我が国の問題も、王太子殿下の危機的状況も。
だからこそ、ヤークル姫が『魔の森』に望みを繋いで賭けに出たのだ。
あんな見事なモノを見ては…欲が出るのも仕方ない。
まぁ全ては言い訳だ。
私の表情が物語ったらしく、ため息混じりの返事がきた。
「ふぅむ。一刻の猶予すら無いとは。まあ良い。カザンの方も余裕が無くなっておるしの。
何だ?気づいとらんかったのか?」
!!
まさか…。
「数奇な出会いじゃな。カザンは恐らくは『聖印持ち』であろう。そうでなければ、あれほど弱るまい。」
『聖印持ち』
まさかのこんな場所で出会うとは。
「まあ、半端モノじゃろ。だが、それでも『魔の森』は天敵に近いからの。」
あまりの出会いの奇跡に息を呑んだ。
それは、この話し合いをこっそり盗み聞きしているゼリアとマクガも同じようだった。
その後、誰も口を開かずそれぞれの居場所へと戻った。
こうして夜は更けていった。




