祠は触っちゃいけません!!
戦いのシーンがあります。残酷なモノはありませんがご注意下さい。
お読み下さり
ありがとうございます。
まだかなぁ…。
ビュッフェスタイルは、花まで飾って完璧なのに。肩で騒いでいたドングリ達もテーブルに陣取って夢中で酒飲んでるしな。
「なぁ、ゼリア。アレなんだ?」
暇な俺の目に先程から気になるモノが見えていた。
崩れた石碑?!
しかも真ん中に指を入れる場所っぽいのが数カ所あるんだ。
!!
サスペンス好きの俺の血が騒ぐなぁ。
もしかして、あそこに何かを嵌め込むと古代の遺産が!!
ちょっとワクワクしている俺に冷静なタササのツッコミが来た。
「アレは村の歴史を刻む祠です。この辺の村にはあちこちあるので、珍しいモノじゃないです。」
おい!!目線の先が肉に固定されていて全くこっちを見てないじゃないか!!
「ちょっと、近づいて触ってみよう。」
俺は好奇心に負けて(暇に負けて…とも言う)近づこうとするとカザンが突然大声を出す。
「触んない方が良いよ!!」
そうなの?
でもさ、もう手が止まらな…
そこからの出来事はスローモーションみたいに記憶に残った。
俺を止めようと手を伸ばすカザン。
そのカザンの腕を掴むタササ。
タササの肩に手を置いて「ちょっとくらい大丈夫だって。」と余裕をかますゼリア。
全員が繋がった瞬間、俺の手は祠に触れていた。
祠の石は、何故か柔らかくて俺の掌を飲み込んでゆく。
え?
ええーーー!!!
めり込む手に驚愕した。
が…その後の記憶はない。
ただ、今の状況が超危機的だと理解してる。
ゼリアとタササが剣を構えて、立ち向かう先にはカザンを咥えた黒い魔獣がいるのだ。
口からはみ出る牙に引っ掛かかってるカザンの意識はない。血の匂いはしないから、怪我もないだろう。
けど…あの魔獣の目は間違いなく我々を狙っている。考えなくないけど、間も無くカザン諸共、黒い魔獣の腹の中が未来予想図だ。
あんまり危機的状況になると、人は固まるらしい。怖いと叫ぶのも出来ないまま、俺はひたすら魔獣の目を見つめた。
いや、前世の記憶じゃ『目を逸らしたら負け』だった気がするんだ。
その時、魔獣が大きく飛躍して襲いかかって来た。その衝撃で牙に引っ掛かっていたカザンが吹っ飛ばされた。
ガキン!!!
ひぇぇぇ!!!
すげーよ。ゼリアが剣で飛び上がった魔獣の牙を受け止めたぞ!!
火花が散って、ゼリアの呻き声がする。
「ぐぅぅ。」
魔獣を防ぐ剣にヒビが入ってるじゃん。
マジか…。
魔獣が、また飛んで今度は距離を取った。
肩で息するゼリアの顔色は悪い。
その横で剣先が震えるタササが真っ青な顔なのが見てた。
不味いよ。2打目は絶対防げない。
ど、どうすればいいんだろう。
不安から握りしめた手のひらにジャリジャリと砂の感触に俺は閃いた。
そうか…それならば俺も。
名案が浮かんだその時だ!!
魔獣が今度は俺の方へ向かって飛び上がって来た。
今だ!!
俺は魔獣に向かって目潰し作戦を決行した。
きっと、これなら…。
ドスン!!!
痛い!!!
肩が燃えている。肩に魔獣の爪が食い込んでる。だが、その痛みどころではない。
魔獣の牙が目の前にあり涎が口から俺の顔を濡らしているのだ。
万事休すだ。。
痛い…痛すぎてもう足掻く力も出ない。
声も出ない俺の耳にゼリアとタササの声がした。
「ザルツ!!魔獣は倒した。今助けるから気を確かに持て!!!」
た、倒した…。
ごめん…でももう俺。
その瞬間、痛みから解放する『気絶』へと逃げた。
*** ゼリア視点***
アレは単なる祠のバスだった。
どこの村でもよく見かける村の歴史書だ。
だから何でカザンが大声出して止めたか、分からず俺は半笑いでタササの肩を掴んだ。
それだけのバスだったのに。
今、深い森の中にいる。
しかも、俺たちの目の前には見た事のない大型の魔獣がいる。
凄い覇気を飛ばしてくるのに、こうやって向かい合っていられるのは恐らく『力水』のおかげだろう。
でも…それもかなり厳しい。
カザンがあの魔獣の上に落ちたせいで、荒ぶっている上牙に奴が引っかかっているのだ。
それも覇気の強まる理由だろう。
逃げる隙もない。
襲われた瞬間、剣で受け流そうとするも力が強すぎてマトモに受けてこの様だ。
剣にヒビが入った。
次はない。
そう思ったのに、ザルツ?!
何故か闘気を飛ばしたから、魔獣がそちらに気が逸れた。
俺たちを助けようとしてのか?あの攻撃力のないザルツが?!
しかし、結果は酷い状態だ。肩に爪が食い込んで激痛なのか意識も朦朧としている。
俺たちも加勢しようと、魔獣のヤツの土手っ腹に剣を突き刺すもまるで歯が立たない。
どうすれば…。
「ゼリア、魔獣はもう倒れているよ。たぶん、ザルツの投げた砂が原因だと思う。」
落ち着いたタササの声に足元を見れば『鮮土』が広がっていた。
革袋から溢れていたのだ。
なるほど…。
そのおかげなのか、辺り一面清浄な空気に満ちている。
魔獣もイチコロの訳だ。
「ザルツ!!しっかりしろ!!」
不味いな。聞こえてない。
「ザルツ!!魔獣は倒した。今助けるから気を確かに持て!!『力水』は持っているか?おい、ザルツ、ザルツ!!」
完全に気を失ったな。彼の持つ『力水』ならばこの状況のザルツも助かると思ったのに。
どうすれば良いのか…。
「はい!!これ『浄水君』だよ。俺…余ったのをポケットに。」タササがバツの悪そうな顔で差し出した石をザルツの口元に近づける。
「コクン…」
良かった…顔に赤みが戻っていく。肩の傷もあっという間に塞がったし。
「ザルツは?ザルツは大丈夫!?」
勢いこんで、覗き込んだのは吹っ飛ばされたカザンだった。アレで無傷とは…。
「俺はコレのおかげかも」苦笑いで差し出したのは、あの大皿に乗った『巨大肉』の一つ。
全員…助かったんだな。
そう思うと俺の腰は抜けたらしく、その場に座り込んだ。
鬱蒼として森の中で。
何処なのか、全く分からないくて。
その上…全員満身創痍で。
「とにかく、このザルツにこんな場所に来た責任取らせなきゃならないから拠点作りをするぞ。」
それぞれ、ちょっと借りた(くすねた)『防御キノコ』や何に使うのか分からない様々なザルツの持ち物を出した。
苦しそうな顔から静かな寝息になったザルツの肩はもう肉が盛り上がり出していた。
(コイツが居なきゃ…。人助けなんて柄じゃないけど、とにかく元気になって貰うぞザルツ。)
鬱蒼とした森の中は日が届かない。
この不思議な森に
ただ、静かに夜は更けていく。




