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逃げ延びた先で…とある少年の誓い…

3人とザルツを次回と予告しながら…今回盛り込めませんでした。本当にすみません。3人との絡みは次回にさせて下さい。


宜しければ、またお読み下さるととっても嬉しいです。感謝を込めて。ちかず



*** とある少年の誓い ***


「兄さん…」


静寂が痛いが誰もが声すら出ない。

覚悟は決めていた。村長である父からも繰り返し言われていたのだから。

でも…。


「エスタ。俺は村を守る。だからお前が父さんや皆を守ってくれ。後は頼んだぞ。」


村長の父を先頭に殆どの村人の避難が終わろうとしていた。それでも、しんがりを任された俺に兄が近づいた意味は知っていた。


次代の村長であるリスタ。

兄は村中からの期待に幾度も応えてきた。

中程度の魔獣ならば、1人でも引けはとらぬ。それはこんな田舎村には有り得ない事で。

そうなのだ。兄は大きな都市の騎士ですら数人で当たるそんな魔獣も瞬殺出来る自慢の兄なのだ。だから例え、魔獣が溢れてもこの村だけは大丈夫かと。何処か他人事だったのかもしれない。


「早く行け。魔獣の気配が近い。」闘気を纏った兄から差し迫ったと知る。

だから…。


「分かった。兄さん後は任せてくれ。」

決めていた答えを告げた。

その答えに満足そうな笑みを浮かべ背中を向けドアから出てゆく兄に心の中で詫びた。


本当は覚悟なんて全然決まってない。

兄さんに生き残って欲しい。ひたすらそう願うばかりのちっぽけな俺も急足になる。

逃してくれた皆の為にも絶対生き残る。

今はそれだけを考えるんだ!!そう呟いて。


森の中に小さな小屋が目的地だ。この小屋から隣村への道へと繋がっているのだ。


そのハズなのに。

何故、皆んないるのだ?そして父の顔色はあんなにも悪いのか。

この狭い小屋に全員がひしめき合って嗚咽が漏れているのは何故なのか?


「エスタよ。村からは既に何音もせん。瞬殺されたと見るべきだ。だとすれば、間もなくこちらへ魔獣達は向かってくるだろう。もう我々も、間に合わぬ。」


えっ?

では兄達は既に?!

その上、俺たちも既に逃げ道を塞がれたのか。兄達の犠牲は無駄だったと言うのか!!しかし動揺すら長くはもたない。何故なら…。


ぐるるる。

唸り声と共に魔獣独特のすえた臭いが近づく。

もう、魔獣に囲まれているのだ。小屋の中に子供たちの押し殺した悲鳴が漏れる。


俺は背中の剣を抜くと父に告げた。


「安全地帯では無いかもしれませんが、今一度村に戻るしかないかと。時間稼ぎが出来るとも思いませんが俺が出ます。」


「「「俺も!!!」」」


仲間たちが声を上げる。

次男三男…皆家族を託された者たちだ。


「他にも道はないが…」

父の顔にも苦渋の心が見てとれる。それは理解出来る。俺如きでは瞬殺以前かもしれないがこのまま全滅を待つわけにはない。


ドンッ!!!!


間に合わないのか!!

小屋が爆音と共に大きく揺れた。

囲まれている。

こうなると、ドアから出ることも難しい。


ドンッ!!

ビギッ!!


小屋に体当たりする魔獣に壁に入ったヒビが大きくなる。その時は近い。


兄さん…。

命を懸けてくれたのに、なす術もないとは。

生理的な震えを握りしめる力を強める事で抑え込もうと剣を構える。『村のために、人のために捧げる剣を持て。誰かを守るために戦う…それが戦士なのだ。』

兄の教えを心に誓いながら前を向いたその時。


「あっ!!ルルドが沢山来たよ。ルルドが家の周りに沢山いるよ。」


小さな子供の声が響いた。


ルルド…伝説の聖霊界の妖精。

幼い子供の目に、気まぐれに現れると言うお伽噺だ。恐怖心から幻を見ている子供の頭を撫でながら「だいじょ…」と言いかけたところで


「窓に、窓に蔦が!!」


誰かの叫びに全員が窓を凝視する。


まさか…。

信じられない事に光すら通さないほど窓を覆う蔦が見えたのだ。その上、ミシミシと言う音からすれば家の周りを蔦がどんどんを覆っているのだろう。魔獣の悲鳴に近い叫びすら聞こえる。


魔獣ごと巻き込んで蔦が生えているのか?

何故?

何が…。


「助かった…そう状況把握するには程遠いがルルド様の思し召しと感謝するしかないだろう。」


「村長、では今のうちに村へ…」「いや。これは様子を見た方が良い。まだ何が起きる。単なる勘だがな。」大人たちの話し合いの間も外の様子は段々に伝わらなくなってゆく。


それほどの蔦。


俺は固く握りしめた剣からゆっくり手を離すとドアの前に座って警戒を解いた。


助かるのだろうか?

誰か助けは来るのだろうか?


実は助けはすぐ側まで来ていた。しかもその中にもう、二度と聞く事が叶わないと思った兄の声を聞く事になるのはもう少し先の話だ。




*** ガルクルト視点 ***


鬱蒼とした森を抜けた広場に見える魔獣の群れ。まるで折り重なる様にすら見えるあり得ない数・数・数。。。


しかし、俺は絶好調だった。

軽々と『薙ぎ倒し』を連発しながら右半分の見えている限りの魔獣を倒してゆく。普通ならば1発放てば、体力気力武力共に半分に削られる奥義の一つ。


しかし、絶好調は俺だけでない。

ラルト皇子もルティンもマルセラもだ。

それぞれが限界突破の技を繰り出してこの魔獣の群れを殲滅している。


ほぼ瞬殺。


ゴクリと喉が鳴るのがわかる。己でした事と言え人間離れしている。


それもこれも、恐らく『ダイギンジョウ』を口にしたから。


とにかく、これならばザルツの方へ駆けつける事も可能だ。

今朝、ラルト皇子が魔獣の氾濫を予測して、戦闘力の皆無のザルツを安全地帯に逃そうと授けた任務『孤児の炊き出し』へ。

その場所はエルサム国でも比較的大きな安全な都市だ。


ここからならあっという間だろう。

ほぼ制圧の終わった俺がラルト皇子に声かけしようとしてマルセラとラルト皇子が眉間に皺を寄せて相談しているのが目に入った。


「どうした?マルセラ、何か感じるのか?」

聖騎士のマルセラの特殊能力『一望千里』

この魔獣との戦いに欠かせない能力だ。


「それが、この山の向こうの村から魔獣の群れの気配がする。」「ならば躊躇う事はない。そこへ向かおう。」


俺の声かけに躊躇うマルセラ。

何故?


俺の問いに、逡巡するマルセラがため息混じりにまさかの答えを口にした。


「村はずれに魔獣はいる。そしてその村に何故かザルツとルルド様の気配がある。」


何故、そんな場所に?しかもそこにも魔獣が群れているのか。


また、何かやらかしたな…ザルツ。

俺の想いは皆と同じだったらしい。


「とにかく、魔獣の群れを殲滅しに行く。」

俺の宣言と同時にマルセラが走り出した。

全員がザルツの戦闘力の無さを知っているので、最速で駆け出す。



近づくと魔獣の気配と誰かが魔獣に戦いを挑んでいた。


無理だ!!


この魔獣は毒を撒き散らす特殊体なのだ。

普通の騎士などイチコロだ。。。??


「その方ら、我々第一討伐隊がこの場を引き受けた。引かれよーー!!!」


俺の声かけにリーダーらしき男が「加勢に感謝する。我が村人たちが囚われているのだ。」


指差す方向にまたもや驚愕する。


「ルルド様ですね。アレは恐らく…」

マルセラ、皆まで言うな。

あの様な不可思議な状況は、ザルツ以外の何者でもないだろう。


魔獣を瞬殺するとその途端に蔦が消え去り小さな小屋が姿を表す。


『あっちにザルツがビュッフェスタイルをやってるよーー!!お酒が飲みに行こう!!』


肩口からする声にルルド様だと確信する。

仲間たちも聞いた様で肩を落としている。


「兄さん!!」

「エスタ、父さん!!」


村人たちがこんなにも詰まっていたとは…。

無事を確かめ合うリーダーらしき男の肩を叩く。


「ちょっとつかぬ事を聞くがザルツと言う名に覚えはないか?」


男はハッとした顔をして「童顔の少年の事だろうか?それならば我々の命の恩人。村の恩人だ。」


「「「間違いない。ザルツだな。」」」


皆の答えに頷いた。


とにかく、ザルツの元へ行こう。

助け出すのだ。


本音は…


これ以上ややこしい事になる前にザルツと合流する。


だ。。




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