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甘々短編集

妻の機嫌が悪いワケ

作者: 衣谷強

以前落語での逸話を聞いてから、いつか書いてみたいと思っていた三題噺。

リクエストを頂けたのでうきうきしながら話を作りました。

お題は「ドライブ」「初恋」「仲直り」です。

考えている内に繋がったので、『とある夫婦の暇つぶし』のアフターストーリーに仕上げました。


初心に帰って千文字制限で書きましたので、お暇つぶしにどうぞ。

 妻の機嫌が悪い。

 原因は分かっている。

 俺が小学校の同窓会で地元に帰省して、一泊して今朝戻り、同窓会の様子を聞かれてあれこれ話す内に、


「初恋の人とも会ったよ。綺麗になってたなぁ」


 そこから一言も話してくれなくなった。

 普段の妻なら、


「へぇ、私とどっちが綺麗?」


 とかからかって返して来るのに……。

 まさか一泊したから浮気を疑われてるのか?

 でもそれは元々予定してたし、実家に泊まったのも分かってるはずなんだけど……。


「な、なぁ……」

「……」

「ま、前にやった『愛してるって言わないゲーム』、やらないか?」

「……今日は、いい」


 返事があった! って喜んでる場合じゃない!

 前にやった時に凄く嬉しそうで、事あるごとに誘って来てたのに、断るなんて!

 本格的にまずいかも……。そうだ!


「な、なぁ、ちょっと出かけないか?」

「……」

「車、出すから」

「……分かった」


 気だるそうに動く妻を助手席に乗せて、車を走らせる。

 プロポーズした、あの丘へ。




「いい風……」

「気持ちいいな」


 町を見下ろす展望デッキの上で、妻はようやく笑顔を見せた。

 ここだ! ここで謝って仲直りしよう!


「……ごめんなさい」


 えっ? な、何で妻が謝るんだ?


「貴方の同窓会の話を聞いていて、馬鹿な嫉妬だと分かってるんだけど、貴方の子どもの時に側にいなかった事が凄く凄く悔しくなって……」


 そ、そんな風に思ってくれていたんだ……。


「そんな身勝手を責めもしないで優しくしてくれて……。ここも私の気分転換になるように連れて来てくれたんでしょ?」

「あ、あぁ、まぁ……」


 妻の瞳が笑みに細まり、その端から涙が伝う。


「……ありがと。大好き……!」


 胸に飛び込んで来た妻を、俺は優しく強く抱きしめた。




「あ、ごめん。どこかで薬局寄ってくれない?」

「分かった」


 機嫌は直ったはずの妻だったが、帰り道の口数は少なかった。

 具合が悪いのもあったのか?


「大丈夫だから車で待ってて」

「……あぁ」


 妻の帰りを待つ駐車場の時間は、やけに長く感じた……。




「あの、赤ちゃん、みたい」

「え!?」


 帰宅後、トイレから出てきた妻の言葉に、俺は固まった。

 え、赤ちゃんって妊娠!?

 それで機嫌悪かったのか!?

 俺が父親に!?

 嬉しい、ありがとう、頑張ろう、俺が守る、

 言葉が頭をぐるぐる回って、


「愛してる……」


 気が付けば抱きしめていた。


「私もよ、貴方……」


 嬉しいのに、涙が溢れて止まらなくなる。

 妻もそうだった。

 二人で抱き合い、笑いながら泣き続けた……。

読了ありがとうございます。


リクエスト達成! おめでとう私!

リクエストのお陰で自分でも好きな話を改めて読み直し、アフターストーリーを書く事ができました!


少しでも楽しんで頂けましたら有り難いです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず甘々な夫婦で微笑ましいですね。 ご懐妊おめでとうございます、元気な赤ちゃんが産まれますように。 [気になる点] 将来、子供が見ていて飽きれるくらいにいつまでも新婚状態ならぶらぶで…
[良い点] きゃ〜〜!!『とある夫婦の暇つぶし』のアフターストーリーを拝読できるだなんて!!!リクエストに応えていただけて幸せいっぱいの上に、さらにこんな幸せが見られるなんて!!夢のようです!! 本当…
[一言] まったく!甘すぎやわ♡ 独り身には辛すぎ!
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