神羅豪傑
連続更新99日目
少し遅い
「おい間鵞廼!!大丈夫かっ!!!」
間鵞廼の元へ駆け付けた半葉が取り乱しながら肩を揺する。
反応が返ってこないと分かった瞬間呼吸の確認に移る。
「……息はある。腹を貫かれた様だが思ったより出血が少ないのが幸いか……クソッ!こんな状態なのに幸いもクソもあるかっっ」
ありったけの魔導具と魔法を使い応急処置を施し出血だけは止めた。
一応一命を取り留めた形になるが本格的な手術をしないと死ぬ可能性がまだある。
気を失うまでの重傷を負った場合にだけ何故か半葉の《転移》が使用できなくなるデメリットが存在した。
カトレアやダーケンにはその様なデメリットは存在しないが半葉には存在する。
それは単純な力量の差でもあり半葉のメンタルの奥底が弱い証拠でもあった。
(胸部圧迫による蘇生は息をしていない場合のみ、息はあるが意識がない場合では意味がない……もっと勉強をしておくんだった!)
ストレスで魔力に変質を齎らすほど後悔をしているといつの間にかモンスターが弱った間鵞廼と疲労の色を見せている半葉を殺し食そうと集まって来ていた。
間鵞廼を近くの建物の壁に背をもたれ掛けさせると立ち上がり守る様に立つ。
「……今私の目の前に出て来た事を後悔するがいい。『震え、慄け、愚将が翔るは神の空』」
バヂバヂッ!!!
半葉の両手から魔力が発生すると同時に雷となり音を響かせる。
「『晩鐘となり万象を知り、畏れとなれ!』」
何もない空間に手を伸ばし確かに握ると引き抜く。
「《神羅豪傑》!!!!!」
両手に巨大な剣が二振り握られている。
「私は少し……いや、かなり不機嫌だ!!!」
無造作に右手の《神羅豪傑 : 神威》を振るうと目に見える範囲全てのモンスターが暴風によって打ち上げられる。
「仕留める」
そして今度は左手に握られている《神羅豪傑 : 淵呼》を雑にだが最速で振るう。
「ぎっーーーーー」
断末魔さえ上げる事なく打ち上げられたモンスター全てが圧殺された。
潰された死体はそのまま落とされた反動で周辺にに散らばる。
視界内の少し離れた場所で死体が落ちる音がした。
「ふぅーー……っ?!」
そして魔力探知を広げた瞬間《神羅豪傑 : 淵呼》を間鵞廼の顔の真横に突き立てる。
「ギッ……」
カメレオンの様に擬態出来るモンスターが近づいて間鵞廼を食そうと口を開いていた所だった。
直前に防いだ為そのまま斬り捨てる。
魔力探知で近辺にモンスターがいない事を確認すると間鵞廼を背中に背負って立ち上がった。
「待っていろ凛兎……!」
半葉は間鵞廼を極限まで丁寧に運ぶ為に命を懸けた戦闘より集中する。
ただの直線の移動なら大した労力も無くスピードを出せるが今半葉が立つのはビルも立ち並ぶ街中、曲がり角も多くあり魔狩人協会専属の設備が整っている病院まで時間がかかのだ。
応急処置をしたとはいえ放っておけば死んでしまう可能性が殆どの間鵞廼を生かすにはそれくらいしなければ間に合わない。
「専属病院まで5キロ……5分で何とかっ!!」
☆
「よし殆どのモンスターの相当に成功。後は最下級モンスターの処理かぁ〜」
疲れ切った様子で想離が横に侍らせているドラゴンに背中を預けながら呟く。
近くには数十秒前までアバターとしてしようしていた騎士型の従僕が跪いている。
「少しずつ慣れて来たなぁ〜。魔力の扱いも上手くなったからある程度上空にいても遅延無しで《ドレッド・ゴール》を扱える様になったのは明らかな成長、進歩だっ」
預けていた背中を離して一人で立ち上がる。
流れる汗なんか気にも止めず人間サイズの従僕を召喚する為カードホルダーを漁った。
「取り敢えず腐らない偵察特化の《シャドウ邪道》」
召喚するとすぐ命令を出しその場から離脱させる。
「《マジック・アーミー》《デーケンツ》それぞれ5体程度でいいっか?」
魔法を使う従僕と近接に特化した従僕とをワンセットで5体召喚をする。
人気のない場所を中心に残ったモンスターの捜索をしろと命令を出すと勢いよく走り出す。
特別知能が高くない為だ。
「それじゃあ……私は上から見てモンスターと怪我人がいないかの確認に行くよ。《ドレッド・ゴール》はそのまま残ったモンスターの捜索と処理をして」
「ルゥウオオ」
短く返事をする。
その反応に満足した想離はドラゴンに乗ると上空へ舞い上がった。
「まだ所々戦闘はしてるか……あぁ高校から良い魔力を感じるな。ダーケンさんかな??」
高校から感じる魔力に思わずワクワクしてしまう。
「おっとぉ……こんな戦闘になってるのにワクワクするのは駄目だよぉ〜私ぃ」
想離は鼻歌を歌いながら上空でモンスターの残党の捜索、処理を始める。
モンスターの発生が連絡されてから2時間でようやく騒動は収まるがダーケンやカトレアと同じであろう存在と接触した断乃達は謎を抱える事になった。
自分でたまに武器の名前に勝手にセンス感じてニヤニヤします