座学
連続更新91日目
主レイアの金冠個体出なさすぎて笑う。
「うむ……」
「……うぅむ」
「これは何と言ったら良いのか……」
「仮主達を見た後だと見劣りいたします……」
思わず呻く様に呟く。
ダーケンとカトレアの視線の先には直前まで見ていた想離達の戦闘とはかけ離れたレベルの模擬戦闘が繰り広げられていたからだ。
それでも実力は三級に差し掛かる程度の実力はある。
どれほどの実力かというと3年前ならば福井県の絶世祭で準決に上がれるくらいだ。
「一般的な人間と比べるならば比較的強い方だろうが、先祖である我から見ても子孫であるダンノの成長を見た後だと……な?分かるだろ?」
「仰りたい事は良く理解出来ます」
不思議とダーケンの子孫の1人である断乃の周りには才能の秀でた者がいる。
呼乃田、想離、真梨、風波、堅霧、間鵞廼、半葉と交流が多い人だけでもこれだけいる。
ちなみに風波は心剣化したい武器の都合上ダーケンとカトレアの後ろで渡された資料を見ながら完全座学に勤しんでいた。
必然的にも堅霧の取り巻きである吉村達にも何か光る物があると2人が考えても不思議ではない。
しかし今の所特徴というべき特徴が見当たらなかった。
「うーーむ。二対二の模擬戦闘をやらせてはいるが心剣化以前の問題。だけどどちらも連携は上手い。
どちらの組も上手いせいか決め手に欠けて千日手だな。ん、待てよ」
ダーケンが吉村達の模擬戦闘に対して感想を呟くと同時に思いつく。
「先祖様確かあの4人はカタキリと良く一緒にいるため息が合うようになったと聞きました。
なので4人に限りまず個人戦力より連携戦力を高める方がいいのではと考えますが如何でしょうか?」
「我と全く同じ考えとは驚いたな……?流石我が子孫の1人だ」
嬉しそうに笑みを溢した。
「よし、子孫よ。あの者達に丁度いいのを召喚せよ」
「分かりました」
普段一応だがカトレアと一緒に暮らしている断乃でさえ滅多に聞けない敬語で返事をするとすぐ様召喚に移行する。
「『取り敢えず何でもいいから弱いの来い』」
召喚を戦闘方法のメインとしている人達が聞いたらム◯クの叫びみたいな顔になりそうな程雑に召喚するとボケーーっとした感じの顔をしたオークが出て来た。
「……これならあの者達に丁度良い連携の模擬戦相手になるな」
召喚されたオークを見て頷く。
どれだけボケーーっとした顔をしていようともオークはオーク。
その力は本物だ。
このオークは知能が多少低い程度で召喚された個体である。
「それでな私はあやつらに嗾けて来ます」
「それならばついでに他の者達に助言をしていけ。その間我はこのカザナミの座学を指導する故」
一礼するとカトレアはボケーーッとした顔のオークを連れて吉村が二対二の模擬戦闘をしている場所まで移動した。
そこで今から模擬戦闘の内容を変えオークと戦う事を伝えると一同レモン汁を一気飲みしたかの様な表情になるがカトレアが二言三言何か伝えると納得してオークを見つめる。
対してダーケンにワンマンで座学の授業を受けている風波は同じクラスで仲のいい友達にさえ見せた事ないくらいの難しい顔をしていた。
「……何言っているのか良く分からないわね」
「魔法理論は良く理解しておけ。お前が心剣化をしようとしている物は雑に扱っても強いがそれ以上に魔法理論を理解すると他よりも爆発的に強化される。
それが損失する心配のない心剣化を図ろうとしているならば尚更だ。ダンノ達も比べると身体能力に劣っていようと活躍をしたいならばその武器を使って最小、最短、最速の一撃を叩き込まないと駄目だ。
魔法理論によって生成する弾の能力、火薬代わりの魔力、そして理想的で最小限の大きさ、考え覚える事は山ほどあるぞ」
「う〜〜〜!!!」
ダーケンの怒涛の捲し立てに脳がショートしかける。
しかし元の頭が決して悪くなく寧ろ良い為丁寧に教えると次第に理解し始める。
「穴を斜めに……複数作って…………噴射……これなら加速が……」
理解が深まった事によって見た目には現れないが加速度的に風波は成長していた。
常々感じていた焦り、断乃達には絶対勝てないと分かってしまう焦り、真梨にさえ置いて行かれてしまう焦り、それらが今は全く感じていない。
その表情はもの凄く楽しそうにしている。
(教え子が楽しそうにしているのは……胸が満たされる)
ダーケンの心に遥か昔の記憶が蘇る。
(やはり私のこのクセは子孫にも受け継がれているだ)
断乃は呼乃田に、カトレアは想離とキルノアとジャックの姉妹に教えている姿を見て笑う。
一通り感傷に耽るとチラリと風波の方を見てノートに書き込んでいる理論を見た。
(しっかりと教育機関があると理解も早いものなのだな)
「おいカザナミ、威力がやたら高い炸裂弾を作りたいのならば弾頭に火と水、そしてそれらが合わさった事によって出来る水蒸気を抑える魔力を込めろ。
そもそもお前の心剣化したいその武器というかアクセサリーにはそれを補助出来る能力が付いているだろう?」
「……あ、本当だ」
指摘によって気付くと直ぐにノートに改善案を書き込んでいく。
時間が欲しい