真価
連続更新79日目!
チャアク意外と……
断乃が体育館に入ってくると自然と視線が集まる。
魔闘部の貸し切り状態とはいえ見学している一般生徒は当然いる為視線の数も増えるのは必然だった。
そんな大勢の視線を気にしていないといった感じで呼乃田達が座っているスペースに向かう。
ダーケンも断乃の後ろを何故か暇そうに歩く。
「ふぅ〜みんなお疲れ様。カトレアとの模擬戦闘と指導はどうだった??」
「やっぱりキツいや。全身全霊で戦ってる訳じゃ無いとはいえ疲労が半端ないよ!カトレアさんなんて自分にデバフ掛けてわざわざレベル落としてくれてるのにだよ?!」
「何か流れで私の模擬戦闘削れて説教に巻き込まれるし……」
「厳しいし……」
「めっちゃ的確でタメにしかならんし」
「俺らは模擬戦闘以前の問題だし……」
「んだぁ!」
「ゔっソウリすまん……って!そこの4人は褒めてるのか貶してるのかハッキリしろ!!内容的に褒めてるのだろうが不満が見え隠れしているぞ?!そんなに戦えなかったのが不満なのか?!」
「だって門前払いじゃないか?」
「それはお前達の力不足、鍛錬不足、実力不足……どう言って欲しい??」
「「「「全部言ってもうてるやん」」」」
この割と真剣な模擬戦闘を通してカトレアと呼乃田達だけでなく堅霧の取り巻き達とも茶番に付き合う程度には仲良くなっていた。
微笑ましい光景に断乃達はニッコリする。
「それにしても断乃君なんか……雰囲気少し変わったね?」
「え?そうか?」
些細な変化に真梨が気付き断乃本人も戸惑う。
「少し違うかもしれないけど自信がついた時によくある感じ……かなぁ?」
「あぁ、諸事情によりかなり閉じていた体の中にある魔力の通る神経、通称《魔力回路》を弄って元に戻して貰った。
いや〜まいったぜ?首根っこをガッ!!って掴んでダーケンの魔力を流して閉じていた魔力回路を無理矢理広げたんだよ……。終わった後痛くてマジで動けなくて少し怖かったな」
「「「「おおぅふ」」」」
首根っこ掴まれて魔力回路を無理矢理広げられる痛さを想像したのか聞いていた全員が首を押さえて唸った。
あのカトレアでさえ首を押さえて険しい表情になっている。
「私も昔お父様にやられたな……あまりにも痛くて当時ワンワン泣いた記憶がある」
「そこまでは痛くなかったけど?」
「私は流行りで一時的に魔力回路が閉じていてな。時間が解決するが早く治したかった私はお父様に頼んで治して貰ったのだ。結果は言った通り痛すぎてワンワン情けなく泣いた訳だ」
こんな時にカトレアの意外な可愛いエピソードを聞いてダーケン含めた全員がほっこりした。
「いや待て、分家の。あの流行り病まだあったのだな?時間が経っているかは流石に治療法が確立されていると思っていたが……」
「自然治癒か無理矢理元に戻すの2択しかありません」
「うっわぁ」
この反応でダーケンも経験した事があるのだと皆が悟る。
「そう言えば想離先輩まだ模擬戦闘してないなら先にします??」
「うーーん。悪いけど先にしてくれない?その間に私はカードデッキの見直して使うカード選択するから」
「分かりました。じゃあカトレア模擬戦闘の相手してくれ」
定位置へと歩きながら話す。
「随分と自分に安心してるようだな仮主」
「激痛が伴うダーケンの治療のおかげで魔力神経の通り道が大きくなって魔力効率が今までより10倍以上良くなってるんだぜ?感覚も比べ物にならないくらいスッキリしてるから安心するのも仕方がないじゃん」
「自信もかなりあるようだな」
「……」
「……」
同時に2人は武器を取り出す。
カトレアは身の丈より大きい刀身と柄の長さが大体同じ剣、断乃は魔狩人協会からの特注である剣を心剣化した剣。
だが今は剣ではなく弓として出している。
「魔力効率が馬鹿みたいに良くなったからな。今まで出来なかった阿保火力戦法を試す事が出来る良い機かーーーーー」
「断乃くーーんここ学校の体育館だよーー」
「……」
呼乃田から指摘が入りカッコよく弓の構えたを解き弓を操作して双剣に変えた。
今度こそ双剣を構えてカトレアと対峙する。
「開始の合図はどうする?」
「仮主の好きなタイミングで来い」
「……」
返事は声に出す事なく頷く事で完了させた。
そして断乃は心の中でカウントダウンを始める。
(……3)
腰を少しだけ落とす。
(……2)
魔力を体育館全体の床に伸ばす。
(……1!!)
「ゼロ」
シュッ!!!!!!
踏み込みも何も無く摩擦がゼロになったかの様に断乃が体育館の床を疾走する。
「ぬおっ?!」
物理法則を無視した様な軌道でカトレアの周囲を回りながら攻撃を浴びせていった。
「ちっ!確かにこれはっ……相当魔力量があるか魔力効率がイカれてないと出来ない芸当だな!!」
今までの断乃とはギャップのある戦闘方法に身体強化をしていないカトレアは苦戦する。
ダーケンに閉じた魔力回路を開けてもらうまではこの様な主導権を握り続ける為の戦い方は魔力量と魔力効率の関係上出来なかったが10倍以上魔力効率が良くなったお陰で実現出来た。
「ふっ!」
「なっ?!ぐっ!」
滑るながらの回転攻撃が交差するの直前擬似転移
身体強化をしていないカトレアは反応が遅れ剣を振るう。
何とか間に合うが剣を交えた時の衝撃で膝から崩れてしまった。
しかし直ぐに魔力を爆発させてその場から離脱する。
「……不本意ながら手加減していては勝てないと判断させて貰うぞ」
目が初めて本気になった。
「《業魔》」
魔力が馴染む様にカトレアの体から溢れて来る。
そして体に纏うと一歩踏み出した。
「え?」
断乃が体育館全体に広げたのは摩擦係数を限りなくゼロにする特殊な魔力の使用方法だ。
魔力その物をそのまま加工無しに使う為魔法には位置付けられていない。
対してカトレアが体に纏った魔力はその摩擦係数に対応するための物だった。
「少しギアを上げて行くぞ」
あぁ〜弓が下手になるぅ〜w