鬼軍曹
連続更新78日目
どの武器使うか迷い過ぎる
堅霧は初めて経験したキックボクシングの戦闘スタイルに思わぬ才能を見せ、カトレアが手加減しているとはいえ中々善戦をした。
今はまだボクシングとキックボクシングのスタイルを別々にしないと上手く扱えないが切り替えがスムーズになると対人戦ではかなり戦力強化となる。
カトレアは元々の戦闘経験からボクシングもキックボクシングも直ぐに理解出来た事で初めて指導する堅霧にも問題なく教えられていた。
人型のモンスターを含めたボクシング系での対人戦で負けた事が一切ないからかこの模擬戦闘に興奮している。
「人型のモンスター含めて人とここまで殴り合えたのは初めてだ……!!」
「お前は途中でボクシングをやめた分動きに粗が見えるな。ふっ!……一度ジムとやらに通い教えて貰え。もしジムで教わるのがっと……物足りない、遅いと感じる時は私が教えてやる、そして……」
ボクシング以外の体術を絡め堅霧の体勢を崩す。
「これがそうだっ!!」
ガラ空きの腹に堅霧にとってはそこそこ痛い拳を秒間30発の早さで打ち込む。
「ゴハァッ?!」
思い切り吹き飛び体育館の床を転がり想離達のいる場所へと辿り着く。
「……手ひどくやられたね??」
「でもこんなに本気でボクシングしたの中学で初めての試合以来だ……です」
「何スッキリしたの?」
「した……しました」
何とか年上の想離に敬語で話そうと頑張る姿に苦笑いになる。
ヨロヨロと立ち上がり自分のスペースに戻ると呼乃田に高性能カメラで撮って貰っていた一連の模擬戦闘を魔闘部専用のPCに送るとスロー再生で繰り返し見始めた。
その場にいる殆どが汗をかいていた為一時休憩となった。
カトレアは本来の実力ならば汗一つかく事はないが自身の能力にデバフで縛りをつけていた事もあり額に汗がじんわりと浮かんでいる。
気遣いの出来る男である呼乃田は余っているタオルをカトレアに投げ渡した。
「助かるぞコノダ」
「気にしないでくれ。これから休憩だけどどれくらい休むんだい??」
「1時間まではまだ30分あるからな。5分ほど休んだら次はカタギリといつも連んでいるそこの4人だ」
「「「「え?」」」」
名前を呼ばれ指名されると思っていなかったのか4人は間抜け面を披露する。
「今更なのだがカタギリ、コノダ。一つ聞いていいか?」
「ん?何??」
「何だ……ですか?」
「この4人の名前なんだ??」
カトレアの少し傷付きそうな一言を聞き4人それぞれが手を上げて名前を言う。
「割と見かけます吉村」
「名前が読み辛いよ安曇野」
「名前がアニメ小鳥遊」
「何となく初登場の気分です嵯峨無斗」
「や、やけにメタい挨拶だね?」
メタメタしい挨拶に呼乃田達が微妙な顔になる。
そんな事も気にせずカトレアは「こちらに来い」と手招きをした。
4人がカトレアの前に立つと目を細める。
「…………」
「「「「……」」」」
「ふーーむ」
見ただけで課題が見つかったのかカトレアは険しい顔で思案していた。
「な、何か分かりまし……た?」
心配になった吉村が声を掛けると顔を上げたカトレアが一言呟く。
「ある。……沢山な」
「沢山……」
「ちなみにどれほど??」
嵯峨が挙手して質問をすると「良く聞いてくれた」とばかりにカトレアが頷きながら分かった事を一つずつ言っていく。
「まず一つ目に根本的な身体能力の低さだ。その程度では4人で力を合わせてもオーガすら倒すのが厳しいぞ?連携の実力がどれだけ上手いかによるが個々人の魔力量から推測される範囲ならその程度だな」
「「「「おっしゃる通りで……」」」」
的確過ぎる推測に叱られた様に頭が下がる。
「二つ目、佇まいからして何かしらの武術の実力が一定水準にも満たしていない。鍛錬不足」
「「「「ゔっ」」」」
「コノダやソウリ、カタギリと今一緒に戦闘をする事て必然的に強い敵と戦う事が少ない。故に成長する場が無さすぎる事。
なのに普段の鍛錬も仮主やコノダは例外として女であるソウリにすら劣るのは頂けないな?」
「「「「はぃ……おっしゃる通りです」」」」
更に縮こまる。
確かに4人は周りが強すぎるせいか心の根底に「自分達は強くならなくても大丈夫か」という気持ちがあった。
それを指摘され頭が地面にめり込む勢いで下がり続ける。
「三つ目、これが一番問題だな。……それぞれ自分以外に頼りすぎだ」
「「「「あっ」」」」
簡潔かつ最大の問題に4人は初めて気付いたのか全員が驚いていた。
「はぁ……これでは私が模擬戦闘の相手をする以前の問題だ。土俵にすら立てていない。課題だ、良〜く耳を綺麗にして聞いておけ」
カトレアが命令をすると4人は一斉に正座の体勢になる。
無駄に綺麗な連携だった。
「全員鍛錬の量を3倍に増やせ明日からだ。そしてランニング基本争え、決して仲良しこよしで走るなよ?そしてランニングが終わったら全員個別メニューをする。
その個別メニューが終わったらソウリには悪いが召喚した従僕の相手をして実践練習をする。それを基本休みの日以外毎日だ」
((((どっかの鬼軍曹やんけ))))
そこからついでとばかりに全員の駄目な点をクドクドと指摘し頭が地面に埋まりかけた時断乃とダーケンが異空間から帰って来た。
走りの調子もええでぇ〜