アイス
連続更新59日目!
少し早くなったよー!
「…………えっと」
「今回ばかりはアンタに同情するわ」
「ど、どんまい断乃君」
「帰りにパフェ奢ろうか?」
戸惑い、同情、慰め、更に慰め。
呼乃田達に朝の事を話した断乃はこれらの反応を貰った。
普段あまり仲良くない風波でさえ気の毒そうに断乃を見つめる始末だ。
部室の隅にいる堅霧達は話の途中から石像の様に固まってしまっている。
「まさか日本トップ2かつ世界的に見ても強い2人を軽くあしらうとはなぁ……。正直な話だけどなりふり構わず全力を出した僕でさえ下手したら瞬殺されるレベルだよ」
「俺はモンスター相手なら能力の相性的にかなり有利ですけど対人なら多分……いや、確定で瞬殺です。
残像しか捉えられなかったですから」
「うーーん。その義眼でさえ?」
「義眼の潜在能力的にはあの程度なら追える力があるとカトレアに言われましたけど、今の俺は全っったくその力を引き出せていません」
「少しは成長してるでしょ?」
「ほんの少しな」
ここで一旦会話が途切れ部室に全員が昼食を口に運ぶ。
2分ほど無言の時間が流れる。
イェエエエェェエエエェイイ!!!
断乃が大好物である冷凍ハンバーグを口を運ぼうとした時ポケットのスマホから某芸人の叫び声の着信音が聞こえて来る。
一瞬変な空気になるが断乃は気にせず
「……メールだ」
「えっと何何?……ここから直線で5キロ離れた住宅の地下でモンスターが発生して地上で暴れているんだってさ。これは僕が行くy「イェエエエェェエエエェイイ!!」またメール?今度は10キロ離れた場所で……モンスターの大量発生?!っ!想離君!!」
「あいよーー!!」
弁当箱を迅速かつ丁寧に仕舞うと想離と呼乃田は立ち上がる。
「断乃君は朝の件もあるからここで休んでいてくれ。他のみんなもまたメール来た時に直ぐ対応出来るように準備しておく事。想離君僕は一通目のメールの場所に行くから想離君は数の多い場所へ向かってくれ。
数ならば君が適任だろう」
「任されたり〜!」
カードホルダーを専用のベルトを使い腰に2つ、左右の太ももに2つ取り付けると2枚だけカードを取り出し呼乃田と一緒に部室の外に出る。
「『私達を運べ!ガーディアン・ドラゴン、アサルト・ドラゴン』」
カードに魔力を込めて目の前の広場に召喚する。
2匹のドラゴンは本来数十mサイズの大きさだが想離が予め『命令』していたおかげでサイズは5m程にまで小さくなっていた。
呼乃田と想離は2匹のドラゴンの背中に乗る。
「先輩!気をつけて!」
「「分かってるよ」」
そう言い残すと2匹のドラゴンは空に飛んでいきある程度高さを確保すると元の大きさに戻り加速をしながら目的の場所に飛んでいった。
直ぐに豆粒より小さくなる。
「2人なら大丈夫だろうけどやっぱり心配はしちゃうな」
「万が一を考えるちゃうのは仕方ないよ。断乃君自身東京で一回死にかけたんだから」
「うっす」
「そう言えばアンタ空でドラゴンに叩き起こされたのに良く生きてたわね……」
真梨はやや心配そうに話したが風波はしぶとり死に掛けだがしぶとい生き物を見る様な目で断乃を見ながら呟いた。
「その目か気になるが見なかった事にする。そして質問に答えるなら何で助かったかは俺も分からん。あの時最後の記憶は目の前にある鱗ゴツゴツドラゴンの尻尾だからな」
「カトレアさんが助けてくれたんじゃ?」
堅霧が何気ない疑問を抱く。
「言ってなかったか?カトレアは俺が瓦礫に埋もれてる所を見つけたんだと。その時全身血塗れで片目の欠損もあったから応急処置を施して病院に投げ込んだらしい」
「「「投げ込むって……」」」
カトレアの雑さ、乱暴さが垣間見え思わず惚けてしまう。
「私の話をしたか?」
「「「うわぁあ?!?!」」」
「いきなり部室内に転移するのいい加減やめない?」
部屋のど真ん中に現れたカトレアに3人は驚いたが断乃は普段の生活で慣れているため少し冷めた対応をする。
「仮主……」
カトレアは断乃の目をしっかりと見つめる。
ここで普段の生活から予想して嫌な予感がした為先んじて断りをいれようとしたが
「ことわ「一緒にアイスを食ぬか?皆の分も持って来たぞ」ん?!」
ビニール袋から11個のアイスを取り出して手元に転移させた。
「おいそれ俺が取っておいたやつ!!!」
「幾らでも買えるのですから細かい事は気にしないでいただけます?」
「……はぁーーー!まぁコンビニ買える少し高めのやつだから良いけど。冷蔵庫の奥のやつ取り出して来てたら俺は「え?」あ」
断乃がしまった!!という顔をした事でカトレア意外の全員が2人の数秒後の未来を察してしまう。
自分の分のアイスを手に取ると断乃をチラリと見る。
「落ち着けカトレア。コンビニで好きなアイス買ってやるから……な?」
「頂きます」
「頂きますってお前!「転移」お前ぇぇぇええぇえぇえ!!!!!!」
部室内で膝をつき大切にしていたアイスが消え去る様を幻視する。
十数秒後カトレアは高級なカップアイスをスプーンで掬い口に運びながら現れた。
「おまっ、おまぇぇえ………」
真梨は断乃に近づくとその寂しそうにしていた肩を手を置いた。
ブクマも増えて欲しいなぁ(チラッ