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惚気

連続更新49日目!


少し早いぞ〜



「壊滅?お前らみたいな奴が所属している組織が?こういっちゃ何だけど僕の本気に追い縋る事が出来る君達がいるのに負けるのは想像出来ない」


「でしょうね?私達だって逃げる事だけに専念しても怪我を負ったし」


キルノアは左腕の袖を捲ると肩から伸びている火傷の跡が覗いた。

その傷跡に同じ女性である風波は分かりやすいくらいにビクリと肩を跳ねさせる。

想離は風波までの反応はないが眉間に皺が寄っていた。

幾ら過去に人を殺しているとはいえ年の離れた妹も助ける為に出来た傷には思う所があるようだった。


「この傷も過去に、まだ弱かった時に初めて請け負った殺しの仕事で失敗しかけた時の痛みに比べれば遥かにマシなのよ?」


「こんな事今言うのもなんだが……今まで人を殺しておいて自分達だけは死にたくないってのは少し虫が良すぎないかい?」


「こ、呼乃田さんっ!?」


普段穏やかな呼乃田の過激とも言える発言に場が凍る。

空気が読めないで部内ではお馴染み堅霧の取り巻きである三鍵(みかぎ)でさえもギョッとして石像の様に固まっていた。


「貴方はモンスターを沢山殺しました。だから私達に殺されて下さいと言われて「はい分かりました」と……死ねる?」


「っ」


雰囲気の変わったキルノアの目にピクリと反応する。


「はぁ、そう言われればあまり強く出れないのは確かだな。だけど割り切れないのが人間の感情ってもの何だよ」


チラリと断乃は呼乃田を見る。

呼乃田も友達でありライバルである早馬翔太を私生活に支障が出る程に傷付けられたからだ。

誓った再戦の約束はもう果たせない。


「そう。だけど死にたくない理由があるから人を殺していたとしても死ねないと思うのも人情よ。

 格好いい事いうくらいだし理解出来るわよね?」


「…………ちっ、分かってる」


「それで?死ねない理由、アンタの所属している組織が壊滅した理由……教えてくれたりするのかい?」


「別にいいわよ。隠すほどでも無いし隠した所で私に得なんて一切ないしね?でもその前に」


キルノアはメニュー表を断乃達へも差し出して来た。


「何のつもりだ?」


「私達だけ美味しいスイーツを食べながら話すのは少しだけ気まずいのよ?貴方達も食べながら私の話を聞きなさい。

 そっちの方が脳に糖分が行って集中力も増すわ」


それっぽい事を言ってメニュー表を完全に押し付けた。

メニュー表を持った断乃と呼乃田はキルノアを見るとじーーっと2人を見ていた。

ここで注文するまで話す気はないと察すると想離達にもメニュー表を渡してそれぞれの食べたいメニューを店主に言って頼んだ。


(コイツ、これだけ気遣いは出来るのに何で殺しの道に行った??……まぁその話は頼んだ後の話し合いで言うかもしれなけど)





「…………」


「…………すまん」


「えっと、ごめんなさい」


周りにステーキの匂いが立ち込める。

呼乃田、断乃、堅霧はゲ◯ドウポーズで険しい表情になっていた。

そしてやっぱり空気を読めず閉店間際の店主にステーキを頼んだ三鍵は何とも言えない顔の皆に謝る。

キルノアでさえステーキを頼むとは流石に考えておらず内心動揺していた。


(苺のスイーツを食べる女性の横でステーキを頼む空気の読めなさは少し驚いたわね……ふふふ。

 ジャックもそれほど不快に思っていない、寧ろその雰囲気が楽しいのか笑ってる……なら私もステーキの匂いくらいは我慢しなきゃね?)


「それじゃあ話をしましょう?」


「この匂いでするのか?」


「これくらい構わないわ。それより早く話さないと私の食べてるスイーツも美味しくなくなっちゃうから」


「本当すいません!!」


苦笑いをしながらキルノアは話し出した。


「先日東京の戦力が手薄になった時にドラゴンが襲来したのは覚えているわよね?」


「もちろん忘れるわけが無いよ。みんな大変だったし沢山の建物が破壊されたし、私も死骸から弱体化はしたけどドラゴンを3匹も仲間に出来たんだから」


「あら?凄いじゃない。でも今はその話はパス。今は理由を話すから。

 それで壊滅した理由なんだけど実はそこまで深い理由はないの。私達と同じ目標を立てていたのにも関わらず組織を裏切り敵対していた組織に身を寄せて内部情報を全て提供した……だから私達は逃げるのにも本気を出さなければいけないほど追い詰められた」


「私とお姉ちゃんは何とか逃げられたけど他のみんなは死んじゃった……」


悲しそうなジャックが呟くとキルノアは無言で頭を撫でた。


「だけど私達が生き残れたのはここの店主のおかげよ」


「ここの店主の?」


断乃達が厨房にいる店主をこっそりと盗み見た。


「彼が大怪我を負って店裏で動けなくなっている所を見つけて匿ってくれたの。ジャックもいるのによ?

 それに私が人を殺した事もあるから辞めておけと伝えても「今の俺は今のお前しか知らん。だからどうでもいい。取り敢えず治療はされておけ」って。

 格好いいわよね〜〜!!」


頬に手を当ててデレデレとし始める。

突然の変化にみんなは「お、おう」的な反応しか返せない。


「今はさっき見せた火傷程度まで治ったんだけど見つかった時はほぼ半身が焼けいてね?正直醜かったでしょうに何も文句言わず魔法も使って治療してくれたから……好きになっちゃって。きゃっ!」


「お姉ちゃんあのオジサンの事話す時何でクネクネするの?」


「オジサンじゃないわよぉ。ふふふふふっ!」


いつの間にか理由の説明からただの個人的な惚気話しに変化しかけていた。

あまりにも自然な変化に誰も言い出せないでいる。


「私達を裏切った馬鹿の事は許さないけど彼と出会えたキッカケを作ってくれた事には感謝しているわ。

 お陰でもう昔みたいな仕事はしなくて良くなったし」


一瞬だけキルノアの顔に陰がさしたが誰も気付かなかった。







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