リハビリ
連続更新45日目!
この小説もしくは前作が大賞の一次通過出来るといいなぁ
カキィン
鉄と鉄の打ち合う音が響く。
火花が散り場を一瞬だけ明るくするが直ぐに消える。
「ふっ!」
全力で剣を振り刃を届かせようとするが相手の巧みな足捌きによってギリギリの所で避けられてしまう。
ギリギリなら惜しいとなるはずだがこの戦いにおいてそれは余裕を表していた。
「魔速」
剣に魔力を纏わせて振る方向とは逆方向に小爆発を起こす事で剣速を早める。
カキンッ!
労した小細工も素の身体能力で対応されてしまった。
「元々の身体能力がこれとか……くっ!ゴリラかよっおわっ?!」
ゴリラの単語を口にした瞬間相手の武器が急加速をして迫るが反射的に頭を低くして避けた。
「お前っ死ぬ所やったやろがい!!」
「淑女にゴリラなどという言葉を使った仮主が悪い」
「淑女が軽く握力計握っただけで針が3周もするかボケぇ!!」
「仮主とは根本的に実力が違い鍛え方も違うからなっ!」
「ついでに言うなら何百年も生きてる時点で淑女じゃなくて熟熟女だわタコっ!」
「「ウガーーーー!!!!」」
絶賛カストレアと断乃は壮絶な戦闘、そして互いに聞こえる程度の声量で口撃していた。
原因は断乃の実家に居候する事になったカストレアが断乃が夜食べようと冷蔵庫の中で温めていた東京のお土産アイスの超高級抹茶を無断で食べてしまったからだ。
抹茶アイスに関しては異常なほど執着を見せる断乃がこれにキレて日曜日なのにわざわざ高校の体育館を借りて武器使用可能な本気の喧嘩をするに至る。
日曜日となると午前中限定で一部の部活動がいるため当然2人の本気の喧嘩は目撃されておりついでに自主練で来ていた呼乃田達はポテチを頬張りながら観戦していた。
「僕達が本格的に観戦してから何分たったっけ?」
「20分です。しかも聞こえてくる話の内容は抹茶アイスを勝手に食べたとかのしょーもない喧嘩……もはや惚気ですよ。あの様子だと付き合ってる訳ではなく本気で抹茶アイス食べられたのが嫌だったようですが」
呼乃田の呟きに風波が気を利かせて説明した。
「断乃君は抹茶アイスにそこまで執着するのか〜……」
「想離君も強そうなドラゴンを命賭けてまで仲間にしに行ったから引くのは違くない?」
「むぐっ」
まさかのカウンターを貰い想離は何も言えなくなる。
「呼乃田さんあの人……強くないですか?」
「そうだねぇ?少なくとも間鵞廼さんや半葉さんが勝てるイメージが湧かないな。間鵞廼さんも半葉さんの本気をまだ見た事ないとはいえだ」
「やっぱりですか。僕の"目"で見ても動きに余裕がありすぎたんでおかしいって思ってたんですよ。
魔力の流れも本当に綺麗でまるで川みたいですし荒々しく無理矢理使っても結果的に効率的にしてしまう力技も出来る……はっきり言って異常です」
「そんなにあの女の人強いの?」
風波が興味本位で真梨に聞いた。
「うん。少なくとも魔狩人の人達か東京に帰って来た時に魔力の流れを見てみたけどまるで月とスッポン。もちろん魔狩人の人達はスッポンだよ」
「あの強さなら私が戦うと仲間にしたばかりのドラゴンを瞬殺されてすぐにチェックメイトだろうなぁ」
「想離君は従僕が本体みたいな所あるからそうだろうね」
「でもその本体は絶世祭にやっと出場出来る程度の実力じゃボコボコにされるくらい強いからそうそうチェックは掛からないけどね」
観客としての呼乃田達は和やかにポテチを頬張りコ◯ラを飲みながら断乃とカストレアの戦闘もとい喧嘩を見ている。
しばらくすると断乃は「グワァーー」という組織末端の雑魚キャラのような断末魔を上げて敗北した。
「これで文句は言えないな仮主殿?」
「やっぱアンタゴリラだよ。ゴリラの中のゴリラ、ハイゴリランダーだっ」
「……仮主殿のネーミングセンスはどこか間抜けだな」
「うるさいわ淑女ゴリラ」
戦闘が終わっても口で喧嘩をしながら呼乃田達の元へやってくる。
微笑みながら話しかけた、!
「退院後初のリハビリ模擬戦としては動きすぎなんじゃないのかい?」
「別にそんな感じはしないですよ?寧ろ目が良くなってからそれに釣られるように体の調子もめちゃくちゃ良いんです。
カトレアの動きも手加減してくれてるってのもありますが読めるようになってましたし絶好調ですよ」
「東京から福井に戻って来て4日経つけどその間にも2人で鍛錬でもした?」
「仮主殿は能力が強い割に実力がまっったく伴っていなかったからな。無理矢理人気のない場所に引っ張って行ってボコボコにしただけだ。
全くそのような能力を持っていながら嘆かわしい」
「ほんと何でこんな一々小言言ってくるやつとビジネス契約したんだろ……」
「おや、仮主殿は契約の際に交わした言葉を覚えておいででない?!
「覚えてるよ!!」
カストレアがワザそれっぽい敬語を使い煽ると断乃はそれに強く反応した。
2人が契約してから6日たつがこれがテンプレなやり取りと化して来ていて呼乃田達はそれが分かっているため苦笑いになってしまう。
「呼乃田さん明日からまた地域の警護に復帰しますよ」
「大丈夫みたいだし喜んで頼らせてもらおうかな。
まだまだ警戒は怠らなと協会から連絡が来てるから頑張ろう」
今日も頑張ったナリ