天井
連続更新41日目
何とか頑張った!
「…………ぅ」
ズキンと頭が割れるような痛みを感じた事で意識が覚醒して行く。
目を開けると白い天井が見える。
しかし何故か左目の視界が無い。
軋む体を何とか動かして左目を触ると原因が分かった。
(目……失くなったのか。俺が覚えている限り感じたあの衝撃。全身にドラゴンの尻尾が叩きつけられた時に鱗で目がやられたのか?
それにここは)
天井が見え、包帯に頭を覆われている状況から断乃は病院にいると断定する。
状況を理解すると自分の役目を果たせなかった事も次第に理解出来る様になった。
「………くそっ」
叫び出したい気持ちだったが負傷のせいか大きい声どろか普通の声すら出ず、掠れた声しか出ない。
「その様な恵まれた能力を持っているのにもその体たらくとは……全く泣けてくるよ」
「だ……れ……っ!!」
出来る限り早く声のした方向を見ると1人の女性が窓際に腕を組み断乃を睨み付けていた。
そして近づいて来て断乃とこ距離が20㎝まで顔を近づけると一言呟く。
「お前、その能力私に譲る気はないか?」
「は?」
何を言っているのか理解出来なかった。
切断の能力に目覚めたのが4歳、そこから10年が経ち14歳の時に起きたある事件をきっかけに絶対能力へと覚醒する。
10年以上切断能力と過ごし、断乃が自身の体の一部にまで感じるほど過ごした能力を突然奪われるかもしれない状況に混乱する。
「能力は……生涯に、一つで決して……譲る事など出来、ない!もし、譲れ……たとしても!僕の半身とも言える能力を……手放す訳がないだろぅ!ゴホッゴホッ!!」
無理矢理に声を出して咳き込んでしまう。
「この、能力は……確かに殺す能力に長けてるっ……だから、人殺しになるかも……って虐められたりしたさっ……だけど!」
女を精一杯睨み付け、声帯が痛む事もお構い無しに思いを伝える。
「この能力は……僕を助けてくれたっ、そしてこの……能力で夢を叶えたいって思った!ゴホッ!ゴホッ!……誰だか知らないけど譲る気は……ない!」
断乃の心からの声を聞き女は思案する様に顎に綺麗な手を添える。
トントントン……トントントン
リズミカルに人差し指を動かしている。
どうやら集中して考える時はそうするクセがあるらしい。
5分ほど経ち考えが纏ったのかパチンっ!とフィンガースナップをしながら断乃の目をしっかりと見る。
「ならば『契約』を提案しよう」
(提案?……何を企んでやがる。はっ!まるで悪魔の誘惑だな)
契約の言葉を聞いて断乃は脳内で笑った。
あまりにも神話等に聞く様な悪魔の誘い文句だったからだ。
当然そんな悪魔の誘惑に乗るつもりのない断乃は断ろうと口を開きかけた瞬間思わず固まってしまう単語を女は口にする。
「今回のドラゴンをここに化しかけた犯人を知っているぞ」
「?!?!?!?!ぁっづぅ!」
あまりの衝撃に大声を出し問い詰めようしたが喉に激痛が走り黙るしかなくなる。
「どういう事だと問いたい顔だな?そのままの意味だよ。いや……正確にはほぼ確実な情報で首謀者を突き止めてそれを追って来たがまだ決め手がない状況だ。
そいつは過去に何度もモンスターや魔獣を市街地に解き放つ行動をしている。まるで何かを実験するかの様にな。それはこの世界でも行なっている」
「だから……なんだ」
「この世界」の単語に疑問を抱きつつも喉を痛めない様に小さくゆっくりと強気に出る
女はふっと笑うと話を続けた。
「結論を言おう。その首謀者を見つける協力をする。そしてお前が夢を叶える為に力を貸そう。更にその目、顔全体に広がった傷跡、瓦礫等により潰れた喉を完全再生する。
人間にとって未曾有の事件の情報を与え、夢を叶える所か私生活でさえ不自由しそうな体を治してやり、夢の手伝いもする。
これで不満はないだろう?」
「その代わりに……俺の絶対能力を奪うん、だろう?」
「お前の能力じゃない、我が主が持っていた能力だ。はぁ……言っただろう?お前の夢を手伝うと?」
「でも……!能力……を奪われ、たら俺には……何もないっ」
「死後」
「ぇ?」
「お前が死んだ後その能力を回収する。これならお前は事実上ノーリスクで私の協力を貰え治療もして貰える訳だ。これで本格的に文句は言えないな?」
(確かにそれなら俺にとってのデメリットはゼロだ。だけど気になるのは何故この絶対切断の能力に拘るかという事……まぁ正直こんな不自由な体が治るなら死後に能力を回収されるくらい訳ないか)
心の内でそこまで考えた時根本的な疑問に気付いた。
「お前は……老人になった後に、この能力がいるのか?」
「ん?……あっ、……くっ!くくっ……くっ!アハハハハハハハハハ!!!」
突然爆笑動画を見たかの様に笑い出した。
「そう言えばお前には伝えて無かったな。私はモンスター、魔獣が来た世界から来た貴族であり一応人間ではない。
それに寿命はお前達の想像するよりも数倍はあるからな。死後まで待った所で問題はない」
何度目かの衝撃が走る。
「さて、もう一度聞く。先程の契約内容で私と契約をしないか?」
「…………」
断乃は深く考えた。
どう考えても断乃に有利過ぎる、都合の良すぎる内容にやはり疑問は尽きない。
数分間誘惑と格闘して結論をだす。
「その悪魔の提案……乗った」
ニィィ
良い笑顔になる
「契約はここに成った。お前を仮初の主と定義する。よろしく頼むよ、仮主殿」
読んでくれてありがとうございます
(*´Д`*)