魂奪
連続更新163日目
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「先祖様がいた場所に誰かいるな…………」
魔力探知に引っ掛かった影に気付く。
そしてダーケンが"塔"に向かった事に疑問を持つが影の魔力がモンスターを殲滅する動きに考えを改めた。
「敵ではないのか。しかし今まで一切感じなかった魔力が魔法の行使の際に突然現れた。
凄まじい魔力制御だ、更に火力、範囲、果てにはそのその一撃までも精密……」
カトレアの額に冷や汗が流れた。
自身も先祖であるダーケンには及ばないにしてもオルナ家当主の手足になるくらいには有能だと自負している。
だがその自信も揺らぐほど影の一撃、範囲、精密さが抜きん出ていた。
断乃と別れた地点から2キロ、そろそろ店や民家も無くなり田んぼが増えてくる。
「ある程度一掃したか……一応人間に助けに来たとだけ言っておくか」
一応近くの魔力探知が引っ掛かった家に向かう。
周りはモンスターの死骸があったり人の欠損した死体が転がったりしていた。
凄惨な光景だがカトレアとしては見慣れた光景な為慌てる事はない。
「鍵が閉まっているな。解錠しなければ」
魔力を鍵の穴から侵入させて正規の手順で解く。
そのまま扉を開けようとするがチェーンも掛けられている事に気付いた。
「モンスターが蔓延ってある中でこれは中々用心出来ている方だな。
見た所魔力で探知した所地下もないならこれが正解、人間の一般人にも冷静な者がいるのか」
そう呟くと邪魔となっているチェーンの間にカード状の紙を転移させ切断する。
切れたチェーンはぶら下がり微かに音を鳴らす。
「助けに来たぞ返事はないか!!」
10秒
静寂が支配し声はない。
訝しんだカトレアは再度魔力探知をする。
すると分かったのは対象は2階から一切合切動いていないという事。
恐怖に縛られ動けないと判断したカトレアは2階へ向かった。
複数の扉がある。
中々微笑ましい文字の書き方がされておりカトレアも頬が緩む。
そのまま部屋を開けた。
「助けに来てやったぞーーーーー」
瞬間言葉が飲み込まれる。
今まで悪魔族という関係上襲い掛かって来る人間を相手して場合によっては殺したりもしていた。
しかし扉を開けて目に入った情報によって憤怒に支配される感覚が湧き上がる。
ここ数十年味わっていなかった感覚だった。
「お前達……生きているな?」
「ぅ……ぁ……」
「ゴホッ!ガハッ!」
帰って来た反応は言葉にもならないもの。
顔には痣があり所々血がついていたり目には涙を流した後があった。
近くに寄り手を添えて顔を上げる。
良く怪我の状態を確認すると魔力で2人の体を包んだ。
「《癒しの悪魔》」
寿命、体力を無理矢理にでも使い強制的に回復させる魔法。
回復のカテゴリーに存在しているが本人の寿命、体力の犠牲にして回復力の超強化、促進を促しているだけである。
本人の魔力を使いカトレアが魔法を発動させている関係上、カトレアが《回復》魔法を使っているのではなく人を操る《人形》系の魔法にカテゴライズされる、
はっきり言ってここら辺は説明してもどうでもいいと言われて回復魔法の枠組みにぶち込まれてしまう。
「…………アレ?体が痛くない」
「う、うん。お姉さんが助けてくれたの??」
「お前達何があった?どう見てもモンスターから受けた傷じゃない。アイツらは人間を見ると武器を扱う存在以外殆ど噛みついたりするだけだ。
位が上がれば魔法も使ったりするがお前達の傷はどう見ても魔法や、切り傷、棍棒等による打撲痕ではない。大きさ、内部出血の深さから考えて人だ」
2人は事情を話す。
女2人では急にモンスターが"塔"から溢れ蔓延る世界では無力だと初めから理解していた。
しかしそれを利用しようとするクズがいるとも聞かされる。
しかも助ける条件を断り続けていたら一部の人達から暴力を振るわれ何とか逃げて来たと聞かされた。
「お前達の名前は何だ」
「「名前……??」」
「良いから答えろ」
少し怖い表情のカトレアに促されて答える。
「音無 八重」
「宗方 寧々」
「ならば寧々、八重。契約をするか?」
「「契約?」」
そうだと頷く。
「そのクズ共に思う所があるのだろ?代わりに私がその道に引導を渡す。
つまり殺してやる」
「「…………!!」」
普通に生きていれば絶対に聞く事はない言葉。
契約による報酬としての殺人、それはただの女子高生だった2人を酷く動揺させる。
しかしカトレアはそれを許さなかって。
「理不尽な扱いを受け、提案をされ、逃げて来た先でも出血やら食糧の不足から死を待つ羽目になる。
そんな原因を作ったクズにやり返したくないのか?」
優しく宥めるように伝える。
俯くがすぐに顔を上げると強い意志の込められた目で告げた。
「アイツらを殺して!!」
「まだ私達の友達や家族も捕まってる!!」
「報酬は?」
「「…………出来る範囲全て」」
その言葉に優しく笑いかける。
立ち上がり近くにあった1つの飴玉が包まれている袋を手に取った。
「これはお前達のか?」
「うん」
「ならこれを契約の代価として受け取る」
「「え"?!?!」」
予想外の言葉に変な声が出て来る。
「オルナ家が1番槍カストレア・ミール・リーリェナッゾ。代価を受け取りその願いを叶える」
2人の体から吸い上げられた少量の魔力とカトレアの魔力が合わさる。
「これより《魂奪》を行う」
休んだらモンハン再開するんだ……




