コツ
連続更新146日目
頑張りました
「ちょっと強めに叩いたり足蹴にした事は済まなかったな。この武装には少し興奮作用があるんだ。
人とは死となる存在と対峙した時恐るもの、だがこれは"死"と対峙しても恐れる事なく前に進み恐怖を打ち砕く為の武装……だから誰が使っても前に進める様に興奮作用が付随している。
まぁ、それが……」
シルビアはスーツの姿になるとネクタイを緩め窮屈さから解放された様に息を吐く。
「恐怖に勝つ為の興奮作用が大きければ大きいほど終わった後に性的興奮も襲って来る……悪趣味だがこれを作った奴も完全に想定外だと頭を地殻までめり込む勢いで謝られたよ。
欲求に完全に負けたのは対人で一度、対モンスターで一度だ。人生の汚点だ全く」
「魔力の流れを見た感じ武装が勝手にシルビアさんの魔力を使い身体能力を俺を上回る様に使いましたね……??」
「さっきも言った通り意識のコピー……これに関しては私の思考回路のパターンを科学的に割り出しそこから魔法的に組み替え武装にコピー、付与した。
だから勝手に魔力を吸い上げたりしてくれている。"この頭"で考える事が減るだけで普段はもの凄く軽くなる」
「俺に出来ますかね?」
「出来る。私の今言った事を補助してくれるのが礼として渡した《黒森の呪槍》だ。私もこれで最初は鍛えたからな。オススメの品だ」
☆
カトレア、ダーケンの2人は改めて悪魔族に通ずる魔法の発展の仕方ではなく科学が発展した人間の魔法に心から感心した。
「分家の……お前は今すぐ真似をしろと言われれば出来るか?」
「無理です」
即答だった。
カトレアは表情を詳しさで滲ませる。
「アイデアだけ聞き独学で行けば数年、今ヒントを直接見ましたので6ヶ月……そして直接教えを乞えば1ヶ月で実戦で使える物に出来るはず……です」
「お前でも最短1ヶ月は掛かるのか?」
「アレはまだ私達より思考回路が複雑ではないので楽ですがこれが私達レベルになると単純にし過ぎるとついて来れない可能性が高く、逆に複雑にすると時間がかかりすぎる……不本意ですがあの小娘の戦闘への、強さへの飽くなき探究心は目を見張ります」
「なるほどね……」
目を閉じて良く考える。
ダーケンは自分がやるとすればどれだけ時間がかかり、どれだけ自身について来れる思考回路のコピーが作れるのか考えた。
(我の要求レベルに達するには分家のと大体同じ1ヶ月と言った所か。小娘、分家のと比べて衰えたといえ遥かに強い……しかも《絶対切断》を除き全て揃っているし少しずつ戻って来ている今の状況で1ヶ月)
溜息を吐いた。
「我もまだまだ勉強という事か……」
☆
それから断乃は《黒森の呪槍》を使い思考回路のコピーを習得しようとシルビアと戦闘を重ねるが一向にコツさえ掴める気配がない。
今までの思考回路、魔力の使い方が違う為上手く行かないのだ。
シルビアも思考回路を科学に落とし込みパターン化した後魔法的に格上げしてそこから更に鍛錬してようやく習得に至った。
積み上げた時間も労力も手伝ってくれた人の数も圧倒的に違う。
すぐに出来なくて当然だが曲がりなりにも悪魔族の血を引く断乃は世界最強の一角が使う技を習得出来ない事に悔しさを滲ませる。
「意識の細分化をより分かりやすく言うのなら自分自身を俯瞰で見る事をイメージしろ。
……日本でいうのならば幽体離脱か?それが分かりやすい。今の意識を保ったまま意識を一つ体から切り離す」
また少し分かりやすい例えに断乃はすぐさま行動に反映させる。
「そうだ。動かずやるのは多少は出来る……景色が変わらないからな!だがこれは戦闘をしている時に輝く!瞬間瞬間で変わる景色を捉える為だからな!」
背後から襲って来る断乃を反撃し少しばかり吹き飛ばす。
「もう一つヒントだ。ーーーーー頭の後ろを目をつけろ」
「どこぞの天パの発言と一緒だよそれは?!?!無理なのよ!!!」
「ふーーむ。…………一旦中止」
シルビアの声に即座に反応して斬りかかろうとしていた自身を《擬似転移》で絶対に当たらない範囲に飛ばす。
武器を仕舞うと向き直った。
「流石に最初から補助武器アリとはいえ戦闘をしながらの思考回路のコピーは無理難題が過ぎたようだ。
よって少しだけ鍛錬の内容を変える。今やった戦闘をしながらの形と比べたら遊びに興じている見えるかもしれんがな」
シルビアはジャスティンを見つめると今の今まで菓子片手突っ立っていた姿がなくなり個人の異空間を物色し始める。
「少しそこの悪魔族にも手伝って欲しいな」
「「ふむ??」」
2人は同時に首を傾げた。
そしてジャスティンがシルビアの求める目当ての物を取り出すと説明を始める。
「これはちょっとした小道具ですが戦闘をしながらよりも遥かに簡単です。
そのかわり相応な思考回路のコピーのコツしかある事が出来ません」
寝ます