礼
連続更新145日目
少し良くなったけど、まだ少し
(世界最強と言っても所詮は"人間"……悪魔族の血を仮主は勝てはせぬまでも良い勝負をすると思っていた。
だが何だこれは…………あまりにも一方的ではないですか?!本気を出さないとは言え普段の私に届きうる実力とは!!
"人間"だからとあの小娘を過小評価し過ぎていたようだなっ)
カトレアは目の前で繰り広げられる激戦
断乃が一方的に攻撃を仕掛けシルビアが悉く避けカウンターを決める光景を見て驚いていた。
その心内で思った通りシルビアの実力は普段奥の手を使わないカトレアの本気……を、出さない実力と同等の力を有している。
それだけ聞くと大した事ないのでは?と思ってしまうが今の断乃がどれだけ本気を出そうと本気を出さないカトレアには勝てないほどだ。
もっと分かりやすく伝えるのならカトレアとダーケンは本気を出さずとも10分も掛からずシルビアが人外相手に死にかけたSSSランクのモンスターを容易く屠る。
更にシルビアはSSSランクモンスター相手に短期決戦を挑み3時間以上時間を掛けた。
「《魔速》!!!」
加速によって《変刃 : トラスフォーゼ》に加わる重さが跳ね上がった。
しかしシルビアはガントレットで受け止めると目の前の断乃でさえ上手く認識出来ずまるで時が飛ばされたと感じる程のスピードで裏拳を顔面に喰らう。
「うぐっ!??!」
「武器の特性を活かしきれていないな。大剣は大振りで振ってこそ埒外が破壊力を生むがーーーーー」
《擬似転移》で背後に回る。
(取った!!!!)
「把握されていれば木偶の坊も変わらないな」
半身になりギリギリのギリギリで避ける。
あまりにもギリギリで避け過ぎた為髪がほんの少しだけ斬られた。
そしてまたかなり強化した義眼でも追えない異様な動きをすると気付いた時には体に槍が添えられている。
「ふっ!」
刃が付いていない方の部分で吹き飛ばした為切り傷はゼロだが思い切り叩き込まれた横っ腹は服の上からは分からないが赤紫色に変色していた。
「づっ……!」
「《黒森の呪槍》……そろそろ特性掴めただろ?」
「…………」
「大剣を片手で振るっても全くその威力を損なわない力は褒めてやるが意識が傾き過ぎだ。
両手それぞれに異種の武器を握るのなら五分五分の意識を割くのではなく十分十分に意識を割く、そして特性を出し切り相手を追い詰める」
今の戦闘での反省点を上げられ反省する気持ちと同時に疑問が浮かぶ。
人の意識は1つなのにそれぞれの武器に全ての意識は割けないーーーと。
「私達を囲むこの剣は何故精霊を憑依させたのに動かないのか。それは私が動かず囲めと命令したから。
そして浮かぶ剣全てが私の脳の役割をしているとも言える」
「?……?!」
「気付いたか?召喚した精霊全てと意識を同期させて擬似的に脳を数十個にする。
演算能力自体は変わらないが単純に手が増えたみたいなもの……かな?まぁつまり私の強さの秘密は意識をコピーして武器に精霊として宿している事にある。最初は超が付くほど難しいが慣れれば右手と左手、右足と左足とでそれぞれ全く別の動きをする事が出来るになり、能力を複数同時に大雑把ではなく正確に使用でき」
一気に話した為一息入れる。
「いきなり言っても出来るわけがないからな。お前はまず新しい武器の特性、能力を把握する為に一本に絞れ配列思考とかの話は後だ」
シルビアに言われ断乃は二刀流から《変刃 : トラスフォーゼ》を戻し《黒森の呪槍》だけになる。
魔力を込めて武器の特性を改めて感じ取った。
(これ……中々クセの強いいや、趣きのある槍だよ。普段複数の斬撃とかに意識を割いている俺には比較的相性の良い能力も持っている。
更に今シルビアさんから教えられたヒントの意識のコピーを出来るようになれば手数は今の数倍以上になる!しかもどれもが正確な意思を持った一撃の!!)
「くっ……ふふふ!」
あまりの相性の良さに断乃は思わず悪役の様な笑い声を漏らす。
ダーケンはシルビアの予想外の実力に目を少しだけ輝かせ、カトレアは自分でも出来ない意識のコピーにただただ驚愕する。
「よし、分かった。この武器特性がっ!」
「なら早く掛かって来い。そして強くなるヒントでも掴め」
「…………《魔速》!!!」
《擬似転移》
口では《魔速》と叫び、体は《擬似転移》を行う。
意識のコピーではないが予め《擬似転移》を組み上げる事で一時的にだが擬似的に並列思考を実現させた。
そして《魔速》の言葉が叫ばれた時反射的に身構えたシルビアは断乃の巧さに感心した。
(並列思考ではないがこれは心理戦も少し入れた良いブラフ!!!)
真後ろではなく真上からの攻撃を更に上を取る事で回避、そして反撃をする。
「おしまーーーーー」
ドン!!!!
この日初めて断乃がシルビアを吹き飛ばした音が響く。
1つ目は離脱の《擬似転移》
2つ目は反撃の《アブソリュート・デュオ》
これらを同時に行った。
「《黒森の呪槍》の特性は《枝分かれ》……斬撃を射程を意識を……そのまま《枝》の様に伸ばし分かる事が出来る。
シルビアさん、自分の完成形の劣化を俺に渡して目の前で完成形を披露する事によって俺を成長させる……これは粋なお礼ですよ」
「バレたかーー」
シルビアは悪戯がバレた子供の表情で武装を完全解除した。
ブクマ……増えてけろ