依代
連続更新125日目
頑張りました。
2人の美男子が少年の前に立つ。
「…………その話」
「お前さん、本気で戻すつもりか?」
アーサー・ペンドラゴン、クー・フーリンが呼乃田に対して聞き返す。
「ちょっと見ちゃってね。少しまずい事になると思ったんだ。
だからそろそろこの《能力》と《アイツ》を1つにしようと思ってる」
呼乃田の言う《アイツ》とは断乃のダーケンと似た感じで体の中の別人格の事だ。
ダーケンは《絶対切断》に付随する形で封印という感じになっていたが呼乃田の別人格は似てるが全く違う。
呼乃田の中にいる別人格はその《能力》と《能力》を扱う人の適正によって選ばれた人物に宿る。
つまり完全ランダムなのだ。
前回はアメリカ、前々回はインドの人物に宿りモンスターを退けた。
しかしその能力が宿主を運命に導いているからなのかいずれも短命で30も生きていない。
そして呼乃田の言う《能力》と《アイツ》を1つにするとはどう言う意味か。
それはこの《能力》と言えば《アイツ》、《アイツ》と言えば《能力》と言えるくらいに概念として1つにするという意味だ。
「全く……何で僕を選んだのやら分かんないよ」
「俺達とここまで親和性が高くほぼノーリスクで呼び出せる時点で《能力》との相性は過去の奴らと比べて段違いだろ」
「僕もそう思うよ呼乃田君。基本的に君の呼びかけの応じるのは僕とこのクー・フーリンだけ……だけど他の気難しい英雄達も含めれば呼びかけに応じる英雄は軽く20を超える。
これをどう考えれば選ばれた理由が分かんないってなるのやら……」
普段笑顔を絶やさない天然笑顔振りまくスマイルスプリンクラーのアーサー・ペンドラゴンが呆れた様子で頭を抱えた。
「流石に本当に分からないほど馬鹿じゃないさ冗談だ、冗談」
「あまり冗談が上手くないんだな呼乃田は」
「それは言わないでおくれよ?兎も角!今日と《能力》と1つにするんだ。その為に必要な物は《アイツ》を呼び出す為の依代……」
そこまで言った所でクー・フーリンがルーンで精巧な人形を作り出した。
「準備が良いと言うか察しが良いと言うか?」
「一応はお前に呼び出された関係だ。主の意図を汲むのが呼び出された者の務め……それくらい出来なきゃ英雄やってないぜ」
「クー・フーリンはこんな言い方だけど悪く思わないでくれ」
「大丈夫、ツンデレと思ったら可愛げがあるし」
「ツンッ……?!ばっか野郎!俺がツンデレとかふざけた事をっ!!」
「そうは言うがクー・フーリン今のお前の呼乃田の言外の意図を察するのは間違いなくデレだと思うぞ?」
「何でお前がツンデレを理解出来てるんだ!!!俗説に染まりすぎだ!!」
「いや〜面白そうだったから呼乃田に頼んで見せて貰ったアニメとやらがとても面白くてね。
毎日夜遅くまで見てしまっているよ!」
ははははは!爽やかに笑うとクー・フーリンがげんなりとした顔でアーサー・ペンドラゴンに一言だけ告げた。
「寝不足とかなるぞ。他にも太ったりとかさ」
「俺達に寝不足とかいう概念はないよ」
「は?」
クー・フーリンが石像の様に固まる。
呼乃田はこの事実を既に知っている為何食わぬ顔で頬を掻いた。
「俺は今までどれだけの損を……っっ!!」みたいな表情で項垂れるクー・フーリンを横目に呼乃田は目の前の依代に見つめる。
(俺の中…………)
体の中の《アイツ》に意識を集中させると何やら語りかけて来た。
『何だ?この俺を呼び出すとは』
『時間って訳じゃないけどそろそろ君もこの《能力》と一緒になるべき時かも知れないと思った事と異世界……君に分かりやすく言うなら《異界》からこの世界に襲撃してくる気配がある』
『何?俺の箱庭に無礼にも《異界》から来て侵略をするとな?』
『《異界》の悪魔貴族が1人望まぬ襲撃をさせられて仕方なく俺の仲間が殺した』
『あの2人の女のどちらだ』
『目つきが悪い方』
『彼奴か』
《アイツ》はカトレアとダーケンの事を聞き呼乃田からダーケンだと言われると納得した様な気持ちが呼乃田に伝わって来る。
『臣下のみならず民草も蔑ろにする行動……万死に値する』
『流石、一度過ちを犯して国を治めた王の言葉は違うね』
『幾ら宿主とは言え俺にその言葉を言うとは……一線を超える気か?』
『いやいやごめん。臣下、民草を想うその気持ちは紛れも無く本物だからあまりにも尊すぎてさ、流石は僕が物語を知って初めて憧れた最古にして最初の英雄王『ギルガメッシュ』様だ』
『…………』
不機嫌な感情がダイレクトに伝わる。
『俺の別側面にこの場を任せれば良かったな……』
ハァ……
溜息が聞こえると魔力の塊が依代に移りただの人形から意思を持った英雄となる。
「そろそろ黙れそこの騎士王と…………クー・フーリン」
「おいこら俺が特徴的な王がつく名前が無いからって迷ってんじゃねぇ」
仲が悪そうだった。
……自作どないしよう