応酬
連続更新107日目
今日は筆が乗ったぞ
少し前の断乃にとって勝ち目の無い戦い。
だが2人は画面越しとは言え断乃VSカトレア、ダーケンの模擬戦闘を見て自分達と同等、もしくはそれ以上の相手だと認めて戦っていた。
断乃は断乃で殺傷能力の高すぎる技を除いて全ての技を使って全力を出している。
2人の巧みな連携に追い詰められると《アブソリュート・ゼロ》でその場を脱出、反撃として限界まで切断能力を鈍化させた《ディセラレイト・カルテット》を乱発する。
《ディセラレイト・カルテット》は鈍器運用の為発動に必要とされる魔力量は少なく、発動に至るまでの過程も《アブソリュート》と比べると無いに等しい。
「ちっ、半径2mにまで絞ると最早斬撃じゃなく重力による圧殺だ」
「耐えられるとは遠慮がないのは好ましい!」
断乃から放たれる技は体全体で引っかかると模擬戦闘を続ける事は愚か立つ事すら難しくなる技ばかり。
故に兆候を感じたら即座にその場から離脱した。
(やっぱ強い!!呼乃田先輩を除いたら1番カトレア達に近い実力を持ってる!!)
ガッ!!!!
五色から放たれた強烈な一撃はガードの上から断乃を吹き飛ばす。
そのまま壁に激突した。
ドガッ!!!
「ッハァ」
一瞬呼吸が出来なくなった。
しかしそれは瞬きほどの時間ですぐに模擬戦闘に復帰をする。
だが目の前には屋久のガントレットが迫る。
(〜〜〜〜〜〜!!!!)
ガン!!
《アブソリュート・ゼロ》による擬似転移で避けると屋久のガントレットに包まれた拳は壁を叩いた。
「《満せ》」
言葉と共に断乃の体からかなり薄められた魔力が溢れ出し空間を満たした。
(カトレアとの模擬戦闘の時に使った《絶対切断》を使わず己の魔力のみでフィールドに作用する特殊な魔力の使用方法!!魔法にまで昇華させたこれは!!)
「白氷世界」
直接氷を作らず空間に満たした魔力で凹凸を極限にまで無くす、つまり減らした摩擦係数の影響を自分だけが受けない様にも出来るスケートリンクな空間になる為断乃はそう名付けた。
「《魔速》!」
今はワザと影響を残し《魔速》によって地面を超高速で滑った。
スケートリンクの様に滑る事が可能+断乃が持つ《魔速》等の技によって物理法則を無視した動きを再現出来る。
「くっ!」
「くぅ〜〜っ!地面が滑るからまともに踏ん張る事が出来ずに吹っ飛ばされる!」
「ハァ!」
ガギンッ!
断乃の双剣と2人の武器が交差して弾かれまた吹き飛ばされてしまう。
いっそ壁際まで行けば踏ん張れるがその対策をしているのか断乃は端に近付いたらなるべく中央で吹き飛ばしていた。
「《ディセラレイト・グラビティ》!!」
中央に吹き飛ばされたと同時に技を発動させる。
これは《ディセラレイト・カルテット》よりも範囲を絞り斬撃というより鈍撃の密度を高めたそれを高速で撃ち下ろす技だ。
決して重力を操ってなんかいない。
技名が思い付かなかった事が原因で「取り敢えずカッコイイ名前を……」で命名された。
ドン!!!
「「あっ………ぶねぇ!!!」」
中央に吹き飛ばされていたがタイミングが合わず《ディセラレイト・グラビティ》は掠りもせず地面を陥没させる。
そして断乃は思ったよりも速度の出た《魔速》とスピードに対して狭い模擬戦闘をする為の空間が思ったより狭い事で方向転換に間に合わす壁に激突した。
「ぶべ!!!」
「「…………」」
ドスッ
剥がれる様に落ちる。
ゆっくり立ち上がると鼻をさすった。
「いってぇ……!!!」
鼻血が出たがそんな事よりも断乃は五色と屋久のいる方向を見つめる。
「ヘマをしてくれて有難い事だよ」
「ヘマを有難いと感じた時点である意味負けだがな」
ギャリッ
2人が地面を踏み締めると少し変わった音が鳴った。
「「《深足》」」
それは泥沼などの劣悪が環境でもしっかりと地面を踏みしめて戦う為に魔狩人達が編み出した戦闘技術の結晶。
2人は魔力を足の裏から地面へと根を生やすが如く浸透させた。
「……これでもう遅れは取らんぞ」
「もう充分すぎるほどに実力を示したが今はただお前と戦いたい」
獰猛、苛烈
そんな言葉が似合う笑顔になると一切足を滑らせて体勢を崩すということもなく駆け出した。
「何でこれすぐに対策されるかな?!」
これで五分五分。
断乃は必死に滑り《ディセラレイト・グラビティ》やディセラレイト・カルテット》をひたすら放ち五色と屋久を纏めて倒そうとするが摩擦を減らす魔法に対策に2人にはとって避けるのはそう難しくなかった。
「くそっ!くそっ!くそっ!!これが経験の差かっ!!!」
悔しいという気持ちが爆発するがそれと同じくらい楽しいという気持ちが爆発する。
次の瞬間2人の一撃が目の前に迫っていたのをまともにくらい壁に叩きつけられて断乃の負けとなり魔狩人試験の模擬戦闘は終わった。
金冠……出ないわねぇ