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怯え

連続更新102日目

少し遅くなったわね



「取り敢えず情報の共有をするからそこに座ってくれ」


病室に入るやいなや間鵞廼は断乃達を予め用意していた椅子に座るよう促す。

カトレアとダーケンの2人は近くの壁に寄りかかる。


「一応聞くが半葉からどこまで聞いた?」


「何処までって。そりゃあ間鵞廼さんがモンスターに不覚を取ったか何かで背後から刺されたとしか……」


「何で背後からって分かったんですか?」


呼乃田が質問をする。


「俺が記憶の限りだと背後から衝撃が来たと証言したのもあるが腹の貫通具合で前か後ろが分かるらしいわ。本当に凄いな魔狩人協会専属の治癒魔法使いわ」


思いの外早く答えが返ってくる。

この様な質問をされると思って予め答えを用意していたのだ。


「さて話は戻すが俺は決してたかがモンスターに遅れを取った訳でも油断していた訳でもねえ。確実に……少なくとも俺が覚えている限りでは周りにモンスターの気配は無かった」


「そういう暗殺というかアサシンに特化したモンスターもいて不思議ではないんじゃ……」


「確かに日本には居ないと言うか殆ど見かけないが欧州や中国では暗殺特化のアサシンモンスターの出現率が日本の数十倍。

 その数十倍の数字でも年間で見つかる個体は100にも満たない。なら日本だと見つかるのは年間で精々2.3体だ。可能性はゼロじゃないがほぼゼロだと言っても過言じゃ無い」


「そこに根拠はあるのか?」


間鵞廼が説明を始めてから初めて口を開いた。

その質問をしたダーケンに聞かれると間鵞廼は一瞬にして顔を強張らせる。

更に握っていた拳もプルプルと小さく震えて怯えが顔を出す。


「ど、どうしたん……ですか?」


風波が心配そうに声を掛ける。


「俺の腹を貫通させた奴は確固とした自我があった!それだけなら全モンスターの中から探せば多少はいる!だかな!俺は今まで流暢な言語まで話すモンスターと見た事がない!!

 しかも奴は俺の意識が完全に落ちる前に「芽は潰さねば」って発言したんだ!これだけで何か目的を持って行動してるって分かる!

 しかもだ!半葉から聞いたがお前らも言語を話す存在と出会ったんだろう?!」


半狂乱といった様子で間鵞廼は捲し立てた。

それは断乃達が目にする荒々しく、しかし猛々しく、見た目に反して優しい間鵞廼 凛兎ではなくただの怯えた兎に映る。


「ドスッて衝撃が腹に来たから見たら腕が貫通してたんだよ……しかも魔力を込められてな。

 しかも最悪なのがその魔力は俺に考える限り、想像出来る限り最悪と言える悪夢を見せる効果があった。

俺は意識が戻るまでずっとその夢の世界で地獄を味わった……何とか心は折れなかったが」


声が震える。


「今はもう……怖い。悪夢を思い出す度足が竦む」


あまりには弱々しい間鵞廼の姿に魔闘部全員は口を噤むことしか出来ない。

演技でも何でもなくその言葉、姿に嘘は無く本気で夢で見た悪夢に怯えているからだ。


「…………そう言えばダーケンとカトレアだったか」


「「どうした」」


俯かせていた顔を上げる。

決して恐怖に打ち勝った訳では無い。


「俺の記憶……読めるか。俺はしばらくは役に立たない。だからその時の戦場の記憶全てを預ける。その方がお前らの為にもなる」


2人は見つめ合うと間鵞廼を見て口を開く。


「ならついでにお前の今までの戦闘記憶も覗くがいいな?仮主の役に立つ」


「構わない。まだ断乃が戦った事のないモンスターに対する対処の仕方もあるからな。

 でもプライベート過ぎる記憶は覗くのご法度だぜ?」


「ふっ、案外冗談を言える余裕はあるんだな?」


「こうでも言ってないと恐怖に負けそうだからだ」


自重気味笑う間鵞廼見てダーケンはカトレアに自分が読むと言い近づき頭を手を乗せる。


「ほんの少しだけ痛むかもしれないが我慢しろ」


「悪夢よりマシだ」


心なしか優しく頭を手を乗せると魔法を発動させた。


「メモリー・ダイブ」


記憶を読まれた間鵞廼は副作用で気絶するがカトレアがそれを支える。

ダーケンは頭を手を乗せたまま目を閉じていた。





「あっ」


断乃達はまだ記憶を読んでいるダーケンと補助をしているカトレアによって部屋から追い出される。

そして廊下の角を曲がった瞬間半葉と鉢合わせた。


「なんだ来ていたのかお前ら」


「はい、高いお肉も買ってお見舞いに。ベットの近くに置いておいたので良かった2人で食べてください」


「気が利くな後輩」


乱暴に頭をわしゃわしゃと撫でられる魔闘部全員。


「あっ今は病室に入らない方がいいです」


「ん?何故だ?」


「うちのカトレアとダーケンが間鵞廼さんの戦闘等の記憶を読む約束をして今まさに読んである最中なので……ちなみに僕達は集中するのに邪魔だと追い出されました」


「なるほど……分かった。取り敢えず人のいない屋上に行こう。そこで話そう」


「分かりました」


「……間鵞廼が迷惑かけなかったか?」


半葉は何か知っているかの様に断乃達に質問をした。

質問の内容を察すると首を横に振る。


「いえ全く迷惑は掛かりませんでしたね。ただ少しだけ疲れてるようでした」


「分かった。……ありがとう」




主ブロスゥゥ……

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