私は今日も、おにぎりを握ります。
――毎朝の日課。
5時40分からの、朝食作りとお弁当作り。
子供と私はお弁当で、夫は『おにぎり』を希望する。
私は料理が苦手だ。正直、苦手を通り越して作りたくもない。自粛期間なんて、自分で作る料理に飽きて食欲も落ち、体重も減ったくらいだ。
そんな私は毎朝、眠気と低血圧で重たい身体を引きずってキッチンに立つ。
レンチン御菜と違って、おにぎりの具は毎日悩む。
焼き鮭?
たらこ?
梅干し?
ちりめん高菜?
おかか?
シーチキン?
焼肉?
唐揚げ?
いっそ、スパムをぶち込むか?
考えるのに疲れてくる。適当に、揚げ物を詰めたら「油っぽいから、普通でいい」と、苦情がきた。
『おにぎり』って、難しい。
姑が握る、おにぎりは絶品だ。塩加減と、力加減、頑張っても敵わない。私は、姑のおにぎりが食べたい。
けれど……。
一度、それを上回る『おにぎり』を食べた事がある。
若い頃、海外研修中に疲れから高熱を出して倒れた時だった。
心配した、尊敬する大先輩が塩むすびを握って持ってきてくれた。
「日本だったら、もっと美味しく炊けるんだけどね。」
そう言って差し出された、真っ白なおにぎりと、黄色いたくあん。
涙が出るほど、美味しかった。
多分、大先輩が言ったのは本当だろう。
けれど、米の種類や炊き方よりも、私を思って握ってくれたのが、私にとって最高の調味料だったのだ。
だから、私は……
それを目指して、今日も『おにぎり』を握る。
仕事で疲れた夫が、お昼にたった数分訪れるホッとできる瞬間の為に。