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夏の火  作者: 水辺ほとり
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野良猫に懐かれる

これと次ページまで続きます

後日、作ったご飯を画家に届けに行った。画家は、私の料理をガツガツと食べた。あまり人に懐かない猫の餌付けに成功したようだ。長い前髪の奥の、一重の目を喜ばせて、うんうんと頷きながら食べている。

「どう?」

「美味しいです!特に、この、照り焼きハンバーグが」

「甘めが好きなの?」

「はい、子供舌で。恥ずかしいんですけどね」と細目をさらに細くして照れ笑いした。

「食べおわったら、片付けを手伝ってもらっていい?」珍しい晴れなのだ、今のうちに片付けてしまいたい。

「あっ、す、すみません、がんばります……」

笑顔がこわいです、という小声は聞こえなかったふりをする。ここに着いた時、思わず驚きの声をあげてしまった。一週間でこんなに散らかるものだろうか。他人の家でも我慢ならない。

壁沿いに大量に積んである物は部屋を一回り小さくさせていたようだ。一つずついる・いらないを作家に確認し、片付けていった結果、部屋はスッキリした。昔描いたという絵から、使った形跡のないソーイングセット、コーヒーミルの空き箱まであった。

ふぅ、と額の汗をぬぐうと、作家がふふっと笑った。

「誰かと、作業をしたのは、久しぶりです。というか、初めてかも」

「……私も久しぶりだわ」口元がほころんだ。そういえば、久しぶりに自分の意志で夫以外のために体を動かした。

夫のために社交に出ることは時折あったけれど、疲れる作法と上面のお喋りの連続だった。気を使わない会話と目的のための作業は、なんだか高校の委員会のようで楽しかった。

「私がいないとすぐ散らかしてしまうんだから」

「あはは。すみません。汚れは嫌ですけど、散らかってるのは慣れちゃって」なるほど、言葉通り、カビや絵の具での汚れはなく、整理整頓が苦手なのがわかった。


掃除が終わり、画家の家で作り置きのご飯を作り終えた頃にはすっかり日が暮れてしまった。

「急いで帰らないと」と言うと、猫背をより丸めて、わかりましたとボソボソいっていたが、

「またね!」には「はい」と笑顔を見せてくれた。

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