8 先生は多分転生者
朽木勝也視点
優馬との旅行から帰ってきてからしばらく経ったけど、三条からの連絡はまだない。俺が転生者だと相手が気がついているのかがわからないので、こちらからどう連絡して良いのかとか、まだ考えがまとまらない。
今日は優馬が休みなのでお昼にカレーうどんを食べていた。
優馬がいる時は定食とかカッコよく見えそうなものを選んで食べるようにしている。優馬とは一緒に行動している事が多いので汁物はなかなか食べる機会がないのだ。
田中が鈴木と一緒にこちらに向かって歩いてきたが無視してたら、隣に座ってこっちを見てくるので「今度、顔舐めたら一生口聞かないから」と田中を睨みながら牽制した。
「はいはい、カレーの汁を顔に一杯つけて威張らないでくれる?」
顔をティッシュで拭いてくれながら思い出したように
「そうだ、勝也のスマホ貸して」
と手を出してくるのでロックを外して田中に渡すと何か操作をしてすぐに返してくれた。
鈴木が驚いたように聞いてくる。
「え? スマホとかって簡単に人に預ける?」
「うん。別に見られて困るような事ないし、設定とかいつも全部田中がやってくれてるから。てか、今なにしたの?」
「連絡先を一件着信拒否して消した」
「田中のアドレス? なら全然OKだな」
「三条蒼司のアドレス消した」
あ! と思いだした。田中ってゲーム攻略者キャラの委員長じゃん! つまりはあの学園の卒業生だよね?
「田中って三条蒼司って人知ってる? 田中の通ってた高校の先生らしい」
「うーん、俺の高校にその名前の先生いたかな?」
田中は少し考えて急に思い出したように俺の顔を見てきた。
「そういえば三条が俺に、何でこの学校に朽木勝也くんが居ないのかって聞いてきたんだった」
「!」
「だからここで最初に優馬の友達って勝也を紹介された時、聞いたことある名前だなって思ったんだよね」
やばい、やはり三条は転生者らしい。こちらから連絡しないで居て、優馬といる時に下手にゲームの事とか話しかけられたらまずい。俺は三条に自分が転生者とかバラすかは結論を出していないけれど、連絡はした方が良いのだろう。
「あれ? 田中、俺のスマホに何かしたの?」
「三条のアドレス消したって言ったじゃん」
「ああ。てか、何で消すんだよ!」
アドレスが消えて三条への連絡手段がなくなってしまったので、会うには、あの町に捜しに行くしか手段がなくなってしまった。