7 気になる事
西園寺優馬視点
勝也との旅行から帰って来てしばらく経ってから田中の家に飲みに集まった。
「勝也は?」
「なんか田中の家に行くのは嫌だって言ってた」
座りながらお土産、と紙袋を渡した。
「何これ? ダニ退治?」
「勝也の体にいっぱい赤い跡が付いていて、どうしたの?って聞いたら田中の家に泊まった時にダニに喰われたって言ってた」
「あー、あれ見ちゃった?」
「うん、ホテルで着替える時に見た。俺と鈴木は大丈夫だったのにね」
鈴木が田中の顔を見て何か言いたそうにしているけど田中は無視している。
「勝也が田中を退治できるくらい殺傷能力が高いのにしてと言うから少し値段が高いのにしたよ」
「ありがとう」
微妙な表情で受けとる田中の横で鈴木が爆笑している。
「うるさいな鈴木は。優馬は気にしないで良いから」
田中が言いながらビールを渡してくれる。
「旅行は楽しかった?」
「それが、初日から変な人に絡まれて」
「変な人?」
「うん、なんか馴れ馴れしくて。俺と勝也の名前も知っていたし」
「……その人とはどうしたの?」
「勝也が連絡先を交換してた」
「それって大丈夫なの?」
鈴木が心配してくれている。
「学校の先生らしいから多分大丈夫だと思うけど」
そういえば、あれから勝也にあの時の事を聞くのを忘れてたと思い出した。金髪がどうのと言っていたけれど、高校時代は勝也は真面目で風紀委員とかして忙しそうだった。
俺は部活も助っ人でたまに試合に出るくらいでちゃんとはやっていなかったし、割と遊んでいた方だったので、真面目に風紀委員をしていた勝也がチャラいって想像できない。
「名前なんだっけかな……勝也ならわかるかも」
「そんな変な奴にアドレス教えるとか、朽木って警戒心が薄いよね」
「勝也は自分はちゃんとしているって思い込んでいるのが可愛いけど、心配になる」
「一番危なっかしいのにね」
「……ねえ、それってまた俺の知らない勝也?」
勝也はこのあいだの旅行でも変な奴から俺をかばってくれてたし、子供の頃からしっかりしていると思うんだけど。田中と鈴木の言っている勝也と一致しない。
そういえば、あの先生って勝也の前世に関係あるとかじゃ無いよね? そもそも前世の話も信じないわけでは無いけどこれという証拠も見せてもらった事がない。
あの先生が前世に関係あるなら、一度ちゃんと話を聞いてみても良いかもと思いついた。