6 自分以外の転生者
朽木勝也視点
休みに入ってから優馬と一緒に前世の俺の嫁さんを探す旅に来ている。前回と同じビジネスホテルに泊まったので、お昼はファミリー系の店で食べた。
落ち着いたところで優馬が「探しに行くんだよね?」と言い出した。
「ああ、それなんだけど……今回はやめようかと思っていて」
「は? 何それ。勝也が探すの手伝って欲しいと言うから付いてきたのに」
優馬が怒っている。怒っている顔もかわいいなとじっと見つめながら、どう説明しようか考えていると、
「相席良い?」
と声をかけてきた人が居る。振り返って見ると転生者疑惑のある、例の高校教師だった。
優馬が俺に「知り合い?」と聞いて来るが、自分がゲームキャラとして知っている部分より、転生者かもしれないという知らない要素の方が多いのですごい怖い。
席が空いているからと四人掛けのテーブルに座って居たのが不味かったようで、ヤツは優馬の隣に勝手に座ってしまった。
「僕、三条蒼司って言います」
やっぱりゲームキャラのようだ。こちらが返事をしないのを気に留めないようで一人で勝手に話している。
「西園寺くんと朽木勝也くんだよね? 西園寺くんは変わらないんだね。勝也くんは見た目が違うから最初はわからなかったよ」
三条は俺の顔を目を細めて見ながら
「勝也くんは金髪でチャラい感じも良かったけど、黒髪もすごい似合っている」
と言い出した。
「勝也は金髪にした事ないですけど?」
「ああ、細かいところは違っちゃうんだね。君たちが学園に居ないと知った時は本当に驚いた」
「え?」
やばい、これ以上この人にゲームの話とか変な話をされては困る。
「すいません、俺たち用があるのでこれで」
「あ、待って、色々聞きたい事があるんだけど」
三条に引き止められてしまったので、仕方なく俺は連絡先を交換して、まだ引きとめようとしてくる三条を振り切って、その場から優馬を連れ出した。
「大丈夫なの?」
「え? 大丈夫だよ」
優馬は心配したように見てくるが、説明も出来ないのでそのまま移動している。
「勝也が前世の時住んでたのはこの辺?」
「住所はね」
「実際は違ったの?」
「え? いやあっているよ」
三条の事を考えていたのでついつい本当の事を言ってしまいそうだ。疲れたし、もう帰りたくなって優馬に提案してみた。
「なんかさっきの事もあって落ちつかないし、今日はもうホテルに帰ろう」
「そうだね。晩御飯はどうする? さっきの店はちょっと嫌だね」
「適当に探しながら帰ろうか」
来た時と違う道を進みながら、三条がいないか警戒しているがその後は帰るまで会う事もなく過ごせた。
結局は今回は変な人も居たから危ないね。と優馬と話して、次の日に帰る事になってしまったが、せっかく来たのだからと優馬が提案してくれて家に帰る途中で水族館に寄れたので俺的には満足だった。
それにしても、すっかり忘れてしまっていたけれど、ゲームの中の朽木勝也は高校生の時は金髪でピアスも開けて、制服も崩して着てたんだっけ。ゲームと同じだったのは風紀委員をしていた事くらいで、後はまったく違ってしまった。
そもそも進学した高校も違ってたしな。ゲームに合わせるとか思わなかったよ。すっかり忘れてたし。
優馬が田中にお土産を買いたいとドラッグストアに寄ったので購入する商品について色々アドバイスしてあげておいた。




