5 イケメンは転生者狙い
閑話
転生者(朽木勝也)視点
「勝也、こないだは来なかったよね? 今日は一緒に田中の家に飲みに行こうよ」
優馬に誘われたので気は乗らなかったけれど、休み前に皆んなで田中の家に集まって楽しく飲もうの会に参加して優馬と楽しく飲んでいたけれど、ふと気がついたら俺と部屋の主の田中しか残って居なかった。
「みんなはぁ?」
「終電に間に合わないって慌てて帰って行ったよ」
「なんれおこしてくれないんだー」
「全然起きなかったんだけど」
絶対に嘘だと思いながらも体がうまく動かせない。酔って床に寝転がっていたので背中が痛む。ちょっと嫌だったけど背に腹は変えられなくて田中に頼むことにした。
「ベッドで寝かせてくれ」
「まさかのお誘い。うれしいな」
本当にうれしそうに言うので俺は呆れてしまってどうでも良くなる。
(いや、良くないか)
「変なことしないで」
「はは、かわいいね」
とキスされて、急に酔いが覚めた俺は田中に以前した約束を確認させる。
「お前とのキスは九回までだからな、十回目はファーストキスになるから優馬とするんだから」
「はいはい、勝也の変な理論始まった。九回まではセーフなんだっけ?」
前に襲われた時に田中にキスされてしまってヘコんでしまったが、好きな相手でないしこれはファーストキスにカウントしないって言った途端にキスされまくってしまった。
無かったことに出来なくなって、九回目までは練習で十回目からが本当のファーストキスになると宣言したのだ。
しかし、この後二回キスしたら十回目になって田中がファーストキスの相手になってしまうのだ。
俺には前世の結婚してた記憶もあるし、今世と合わせたら合計年齢は四十五歳になるはずなんだが、二十五歳から四十五歳になったのではなく、赤ン坊から二十歳になったので経験値が違うようで田中にいつも丸め込まれてしまう。
前も色々言われて、優馬と上手くいくために経験しておくのも悪くないかって思ってしまったんだよな。アホだったと思う。
ベッドに寝かせてもらい、着ているものを脱がせてもらっているうちに田中の手つきが怪しくなってきて、酔っていたのもあって結局また、されるがままになってしまった。
朝起きてものすごい頭痛と共に昨夜の事を色々と後悔して動けなかった俺と違って、田中はなんだかうれしそうに朝ごはんを用意している。
「そろそろ起きて。ご飯食べよう」
「頭痛い。田中だけ食べれば」
田中はちょっと考え込んでいる。多分ろくなことじゃない。
「俺と勝也の仲で苗字呼びってピンとこないね。ちゃんと名前で呼んでよ」
「はあ? 仲ってなんだよ……それに名前知らないし」
「颯斗」
「ハヤト? え! 田中颯斗?」
(田中颯斗って乙女ゲームの攻略対象者の一人のクラス委員長の名前じゃないか?)
無駄にイケメンだなと思ってたけど攻略対象者なのか。でも、こんな顔だっけと、ゲームの中の委員長の顔を思い出そうとして田中の顔をじっと睨んでいたらキスされた。
「ちょっと! いまので九回目だから! これで終わりだから!」
「はいはい、これでファーストキスの分は終わりだね」
次からセカンドキスのカウントが始まるねと言いながらキスしてきやがった。本当にウザい。