4 幼馴染との旅行の約束
転生者(朽木勝也)視点
旅行から戻ってきてからあの教師が近くに居ないか気にしているが、今の所は一度も見かけていない。でも、たまに優馬が不安げな顔をしているのでもしかしたら変装とかして尾行されているかもしれないと警戒を強めている。
ちょっと神経質になりすぎたのか「怒っているのか」と聞かれてしまった。
「えっ!? 怒ってはいないよ」
「次の休みってまた探しに行くんだろう? どうする?」
優馬が今度の休みの予定を確認してきてくれたのでうれしい。二人で旅行には行きたいけど、あの場所は前世の記憶持ちっぽい教師が居るし、優馬に接触してくるかもしれないので危ない。
一人で行くと答えたら「わかった」とあっさり返事をしたのでちょっと寂しい。優馬は友達が多いから俺と一緒じゃなくても遊ぶ友達は多いからしょうがない。
今日、一緒に帰れるかと聞こうと優馬を探して食堂まで来たら、田中と鈴木が居たので優馬の居場所を聞こうと二人の側まで行った。
最初はこのイケメン二人組みがゲーム関連のキャラかと思って警戒していたが、名前が普通の如何にもモブっぽい名前だったので(ゲーム関係者じゃ無いな)と判断して、そのまま友達として付き合っている。
「勝也はもうご飯食べたの?」
「いや、まだだよ。優馬を探している」
「急ぎの用事じゃなきゃ食べてから探しなよ」
田中に言われた途端にお腹が空いてきたのでカレーうどんを食べながら休みの旅行の話を聞いていた。
「勝也も一緒に行く?」
「いや、俺は良いよ」
旅行には行きたいけど、田中はやつの家で飲んだ時に酔いつぶれていた俺を襲ってきたという前歴があるのだ。まあ、言いくるめられて同意してからの行為なので無理やりとかでは無いが、気分的には襲われた事には変わりがないので田中と一緒にお泊まりとか不安でしょうがない。
「なんで食べるの下手なのにカレーうどん好きなの?」
田中が笑いながらカレーのシミの付いたシャツを引っ張ってくる。顔が近づいてきて耳元で「顔にも付いてるよ」と囁いてきて超うざい。俺は「うるさいな」とシャツを掴んでいる手を払って、食べ終わったので優馬を探そうと立ち上がった所で田中が旅行には優馬も一緒に行くと言って来た。
「は? 嘘だろう」
「本当だよ。勝也に断られて暇になったって」
「そそ、落ち込んでたから誘ってあげたんだ」
「……」
「だから、勝也も一緒に行こうよ」
そんな事になっているとは思わなかった。田中はマジでやばいので優馬が危ないと感じて慌てて探して前世の嫁探しを理由に優馬に旅行の同行をお願いした。優馬はかなり怒っていたし、渋られたけど何とか一緒に行く事を約束してくれた。
(問題は探す相手が居ないってことだな)
正直に『ここはゲームの世界だよ』って言えれば良いけど、そんなの転生者とか告白した時よりも信じてもらえるような話では無い。転生者ってのもかなりおかしいしのに優馬は信じてくれて探すのを手伝ってくれている。
子供の時に打ち明けたから信じてくれたのかもしれないけど騙している感じになってしまうのが心苦しくもある。いくら考えても最善の案が浮かばないままだ。