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13 閑話:鈴木視点

「あれ、音楽室の君だ。今日は一人?」


 学食でのんびりとラーメンを食べていると友人の桜華(おうか)が声をかけてくる。


「たまにはね。鬼の副会長殿も一人?」

「それやめて」

「俺のもやめてよ」

「だあって〜」


 高校の時の同級生で、とても可愛い顔に合わず鬼のように学園全体を仕切り、生徒会長をアゴで使っていると噂のあった副会長とは高校の時からの友達である。


「あ、王子が今日はナポリタン食べている……あ……ソースがシャツに……」


 彼女は王子こと、朽木(くちき)の事を観察するのが好きだそうで、今も席に着くなり朽木が飯を食べているのを見ながら実況している。ちゃんと紹介すると言ったのだけど、本人に認識されないで見ているのが良いそうだ。意味がわからないけれど高校で出会った時から変だったので気にしない事にしている。


「ああ……委員長が見てられなくて手を出して怒られてる」


 実況している桜華の声につられて見ると、田中が朽木の首に大きめのハンカチをかけてあげている。前から思ってたけど食事の時の二人の関係はお母さんと子供って感じだ。


「あれは流石にないな」


 田中は朽木が食事をしているとお節介を焼いて毎回うざがられているのだけど、懲りないで手を出す。


「委員長はねえ……王子みたいな世話が焼きたくなる子がタイプなんだよねえ」

「桜華も高校の時に、田中の前でちょっとドジっ子っぽい事やってたじゃん」

「あれはねえ、最初の方にやるべきイベントでさ……もう副会長になってた時点で終わってた」


 田中の前で物を落としたり、転ぶフリして寄り掛かったりしてたけど、普通に助けられて立ち去られてたしな。


「鬼の副会長が失敗とかしても、みんな見ないように目をそらしてたよね……」

「そそそ、何か見ちゃいけない物のような感じだった」

「桜華は田中の事が好きなのかと思ってた」

「まあ、色々あってね。全部失敗に終わったし、もう良いんだけど」


 そもそも俺と桜華の出会いも不思議な感じだった。


 高校生の頃の俺は家の事情とか色々あって、登校しても教室に行かないで音楽室に籠るようになってしまったのだけど、桜華は音楽室に来ては、『またイベントに失敗した』とか聞いてもいないのに、よくわからない事を一人で愚痴ったりしてくる変な人だった。

 でも、生徒会役員に立候補したりして、学校の事に一生懸命になっている姿をカッコいいなと思って、変な人から変な友人に昇格した。普通の友達に成り切らないのは俺の事を『音楽室の君』、田中を『委員長』とか呼ぶ所とか、その他、色々とある。


「あ、王子、ご飯食べ終わっちゃった」

「桜華もさっさと食べたら?」


 こっちはもう食べ終わっているけれど、まだ食べている桜華に付き合っていると、さっきまで朽木の世話をして居た田中がこちらへやって来る。


颯斗(はやと)、もう飯終わったの?」

「鈴木は名前で呼ぶな」

「あれ、二人って名前呼びしてたっけ?」

「呼んでないだろう。副会長は今から飯?」

「副会長はやめて。桜華ちゃんって呼んで」


 田中は桜華を無視して俺の隣に座ると肘をついてため息をついている。


「颯斗、朽木が名前呼び練習してたよ」

「鈴木は呼ぶなよ。ちょっと失敗だったかも」

「失敗?」

「ああ、俺の名前が『ご飯が奢りで食べられるキーワード』に成り下がった」

「ふっ……」


 声を殺しているが、笑ってしまっているのは田中にばれてしまって睨まれた。横で桜華も反応している。


「奢ってあげるから名前で呼んでとか言うからだよ」

「ちょっと意識して欲しかっただけなのに」

「最初は真っ赤になって可愛かったのにね」

「それは私も見たかったな」

「副会長は混ざらないで」

「委員長ってばひどい」


 今思い出しても、あれはそうとう可愛かった。桜華にも見せてあげたかったけど居なかったからしょうがない。

 そういえば、朽木ってなんでご飯に関してだけ変な条件を素直に聞くんだろうか。


「王子は外食系の食事に憧れているんだよねえ」

「へえ、普通は家庭の味じゃない?」

「それは鈴木家の事情でしょ」

「鈴木って家庭の味に憧れているの?」

「いや、別に」


 昔からだけど、桜華には何も話して居ないのに、何故か家庭の事情に踏み込んで来たりするこの感じがちょっと苦手で、たまに心を読まれているんじゃないかと心配になるくらいだ。チラッと桜華の方を見ると、ラーメンの丼を両手で持ち上げて汁を飲み干している。田中が黙っていられないようで声をかけている。


「塩分とりすぎじゃない?」

「後でケーキ食べるから相殺されるはず」

「それはやめときなよ」


 桜華に対してもこんな感じだし、田中が朽木にやたら絡むのはお節介な性分だからかもしれないけれど、それをあんなにも嫌がる朽木の態度も気になる。


「田中って朽木に何かした?」

「別に」


 まあ、田中の態度も怪しいし、朽木に直接聞いて見るか。

 甘い匂いに釣られて隣の桜華を見ると、ケーキ二個目を食べ始めていて、これだとまた塩分が欲しくなるんじゃないかなと、別の心配が出てきた。

桜華は転生者でヒロインだけど、高校卒業時点でゲームには見切りを付けて普通に生活しています。

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