10 捜索は休業にするらしい
西園寺優馬視点
今日のお昼の日替わり定食は、カレイの煮付定食でとても美味しい。でも、勝也はあまり食べ進んでいないようだ。
「それ、あんまり好きじゃないの?」
「そういうわけじゃないけど」
と言いつつも手が止まっている。そういえば、と思い出して聞いてみる。
「あれどうした?」
「ん?」
「旅行先であの先生と連絡先を交換したでしょ」
「ああ、あれは連絡先を消してしまって……」
「そっかあ、どうする?探すやつ」
「……あの先生、危険かもしれないから。しばらくはやめておくよ」
勝也が考え出してしまったので昨日の飲みの話題に切り替えた。
「そのほうが良いかな。そうだ、昨日の田中の家での飲み会楽しかったよ。勝也も来れば良かったのに」
そう言った途端に、ものすごく嫌そうな顔をするので溜め息が出る。鈴木や田中とも仲良くして欲しいのに、田中の名前出すといつも嫌悪感丸出しの顔をするので困る。
話が止まってしまって困ったところに田中がやってきた。勝也の隣に座ってチラッとカレイの煮付けの皿を覗き込んで自分の生姜焼きと交換してしまう。
「ちょっと、それ勝也のだし。取っちゃだめだよ」
「え? 良いだろう。ほとんど食べてなっかったし」
田中が勝也の顔を覗き込んで「魚より生姜焼きの方が食べやすいよね?」と話しかけているけど、勝也は何も言わないで眉間にしわを寄せて生姜焼きをかじりだした。田中を嫌がるのはこういう勝手な所があるからかもしれないとため息をついた。
勝也はあっというまに食べ終えて「先に行っている」と席を立ってしまう。すぐ後に鈴木が来て勝也が座っていた所の席に着いて、田中が魚を食べているのを見て不思議そうにしている。
「あれ? 颯斗が魚って珍しい。今日は肉の方食べてるかと思った」
「二人って名前で呼び合ってたっけ?」
「いや、なんか名前呼び強要されちゃって」
「鈴木には言ってないから。名前で呼ぶなって言ったろ」
「えー、良いじゃん。名前で呼んだら奢ってくれるって言ってたじゃん」
「鈴木には言ってないだろう」
田中にしては珍しく不機嫌な感じでいるけど鈴木が楽しそうなので良いかと、そのまま二人を置いてご飯も食べ終わったので席を立って勝也の所に向かった。




