11.死後及び生前における将来設計-お試し編-
何というか、進み遅いですかね?
もちょいさくっといったがいい?
それとも今の感じでいい?
ご意見求む…
ユートと郁也は、酒場の外にあるだだっ広い空間に出ていた。
元より、ユートが個人的に「超リアル◯◯ごっこ(内容は想像に任せます)」と名付けた遊びを行うために、予め力場をある程度広めに設定しておいたのだが、それを転生者に向けて何か利用できないか?と考えていた。
そんな中、能力の設定を行いながら咄嗟に思いついたのが、「ユートに向かっての能力試し打ち」という形での能力テストだ。
幸い、ユートは無限の命・数々の死を否定する異能・相手を間違えて“死なせてしまったとしても”因果を曲げ救い出すことが出来るほどの力を持っている。
そんな中で、ユートと言う仮想敵に対し
「自分はどれほどの攻撃ができるのか」から「どの程度の攻撃を耐え、どの程度の攻撃で死んでしまうか」までを身をもって知ってもらい、転生先での生存率を少しでも上げよう。という試みである。
この説明を郁也に伝えると、渋々、と言った感じで納得してくれた。
元の世界で地球の日本に住んでいたユートと郁也は、こう言う事に疎く、同時に争いも好まない。
はずなのだが、なぜかユートはノリノリであった。
理由としては、「超リアル◯◯ごっこ」をやっている時に「ごっこ遊び相手超欲しい。ビーム相殺合戦みたいのとか超やりたい。」と猛烈に思ってしまった為である。
そんな独善的理由を、「らしい」理由で隠していることを、郁也は薄々だが感じてはいた。
「えっとその…本気でやるんですか?」
郁也は恐る恐る、と言った感じで言った。
「ああ、能力の程度を試すテストだからな。
出せる全力で俺に向かってこい。たぶん郁也君のステータス構成なら、もうどうすれば戦えるかはある程度わかってんだろ?」
「異能に戦闘知識がありますからね…そりゃわかりますけど…」
「気乗りしない?」
「そりゃそうですよ…人を斬ったことなんてないですし、斬ろうと思ったことだってないんですよ?ましてやユートさんに向かってなんて…」
「俺のこと思ってくれんのは嬉しいんだけどさ、郁也君だってくだらねえことで死んだり殺したりは嫌だろ?殺したくないなら殺さない加減を今学んだほうがいいと思うし、死なないラインがどこかを見極めた方がいいと思うぜ?」
上手く丸めこもうとするユート
何か必死な時には、人間饒舌になるものである。
そんなユートの気に押され、郁也は半ば諦めながら
「わかりました…試してみます…」
と折れた。
「っし!っと忘れてた。」
と言いながら、ユートは片手を振り上げて、酒場に物理障壁と魔法障壁を施す。
中に天使二人も居るし、飛び火して大変なことになるかもしれないので一応、である。
「よーしじゃあ、やりますか!」
と言いながら二振りの剣を生成したユートは、一振りを郁也に投げ渡した。
「…はぁ」
とため息をつきながら、郁也は投げられた剣を受け取り、そのままユートに向かって走った。
一瞬の助走の後、どん、という地面を蹴る音と共に、郁也はユートに向かって低い構えで飛び迫る。
時間にしてコンマ1秒に満たぬほどの刹那、郁也は“切られていることに気づいてもいない様子の”ユートに袈裟掛けに剣を振り下ろした。
剣が相手の体に“入り込んでいく”感覚とともに、ユートが斜めに分断されていくのを、加速した感覚で眺めながら、郁也は剣を振り切った。
少しの時が過ぎ、どさっ、という音と 二つになり転げ落ちている「ユートだったもの」を見て、郁也は我に帰り、叫んだ。
「ゆ、ユートさん!!!」
そう叫びながら涙を流しそうになっている郁也に、「ユートだったもの」はこう答えた。
「…とまあ、一般ピーポーな方に本気で剣を振るうと、こうなっちまうわけだ。」
「…ふぇ?」
「ほら、やっといてよかったろ?予行演習。俺じゃなきゃ死んでたぞ。」
と言いながら、既に体の再構成を終えたユートは立ち上がる。
「…確かに、そうですね。」
泣きそうになっていた郁也は、少しいじけながらそう答えた。
「じゃあ次が本番な。俺と郁也くんの強さを大体同じに合わせて模擬戦を行う。レベル設定は…そうだな、お互い1から始めて、徐々に二人のレベルを上げていく。そんで最終的に、レベル50ぐらいまでを想定して戦ってみよう。」
ちなみにユートは、今度のうち一回は、戦いのなかで‘郁也を殺す“つもりでいる。
どう言った状況で、どう言った無茶をすれば死んでしまうか
その文字通り”デッドライン“を把握しておけば、彼の生存率はグンと上がるだろう、と思っているからだ。
ユートは、郁也に嫌な思いをさせてしまったし、できる限りの事をして送り出してやりたい、と考えながら、剣を構えた。
「行くぞ!」
大きな遊び心と、小さな思いやりを込めて、ユートは叫んだ。
前置きで結局1話ぶん近いぐらいの文章を書いてしまった…