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第13話 ゾンビ退治

「いい演技だったぞレイズ」

「ハッ、お褒めに預かり光栄でございます」


 まあ、途中で殺気が漏れだ出したときは焦ったが。よく抑えたものだ。

 そう、連れていた子供はレイズが変装したものだったのだ。


 このレイズは生前、あの伯爵に嵌められたと言う。

 身に覚えの無い禁書、それを持っていたと言われ役人に取り押さえられた。

 死した後、魂は館に捉えられ地縛霊となっていたのだが、娘と共に伯爵が現れ、洗いざらい言って聞かせていた場面を目撃する事に成る。

 それ以来復讐に燃える霊魂となり、持ち込まれた禁書、リッチの作成になぞって館へ入り込んできた人間を次々と犠牲にしていったそうだ。


(あんた役者になれるんじゃない、見直したわよ!)

「ハハハハ、私は生前、劇場を巡るのが趣味でしてな」


 このゴースト執事、最近生前のことをよく思い出すようになったという。

 館から出られるようになり、あちこち回っている内に自然と記憶が戻ってくるとか。

 それに伴ってどこか雰囲気が柔らかくなってきた。

 それで今回の作戦を考え付いたのだ。

 まあ、いざ仇を目の前にした時は冷静で居れなかったようだが、それでも十分成長したと思える。


「ゴーストが成長などはしないと思いますがね」

「魂だって成長するんだろう。記憶が蓄積されるなら尚のことだ」

「…そうですな、リッチが成長するとは人々にとっては芳しくない事でしょうがな」


 まあ、いいんじゃないか?

 人々にとって良いか悪いかはこれから考えればいい。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「あれが俺達の新しい館主なのか」

「シッ、目を合わすなよ、なんでも絶望に染まっている人間を捜しているとか」

「なんだそりゃ?」

「なんでも、絶望を集めてこの世に地獄を作り出すとか…」


 奴隷市場の従業員達が少女を見てヒソヒソと内緒話をしている。

 しかし少女は耳がいい、全部まる聞こえだ。

 なんでそんな話になってんだ?


「噂が噂を作り出しておるのでしょう」

「まあいい。地下の場所はどこだ。…フェイリース、お前はちょっと散歩して来い」

(私も行く!これは目を逸らしちゃ駄目なことだと思うの!)


 フェイリースは亡霊になってからやたらと正義感に目覚めているようだ。

 あとお嬢様言葉がなくなってきたな。野生化してきているのか?


(ねえ、なんか失礼なこと考えてない?)


 地下に降りた俺達が見たものは…


「マルクス、至急生きているものを集めなさい!レイズ、浄化を!」

「「ハッ!」」


 おっと、思わず悪霊取り込みのことを浄化って言っちまった。まあ、結果は似たような感じなんだが。

 そこは大きな穴の中に、死人と一緒に放り込まれた多数の人間が蠢いていた。

 使えなさそうな者はここに放り込まれて何日も放置されているらしい。


「レイズ、疫病の心配は?」

「周りに病原菌を除去する護符が貼られております」


 そんなとこだけは用意周到なんだな。


「しかし、死体の持ち出しは…やめた方がよろしいでしょう」

「…生きている者を捜し出しなさい。残りはこのまま埋めてしまいます」


 この世界では土葬はしない。必ず死体は焼却するようになっている。なにせゾンビ・スケルトンなどの魔物と化す恐れがあるからだ。


「お嬢様宜しいのですか、それにここではゾンビが出ると噂が…」


 冒険者の一人が聞いてくる。

 まあ、その噂はこっちが作り出したものだし、魂は…レイズがすでに取り込んでいる。

 ここにいる魂は、そのほとんどが悪霊と化していた。


(ひどい…生まれたばかりの赤子まで…)

「あまり見るな」

(でも!これって…私たち貴族が楽する為に…)


 フェイリースは目を逸らさず呟く。そして、


(ねえ、私にも何かさせて!なんでもいいから役に立ちたいの!)


 そう言ってくる。

 オレはそんなフェイリースの頭をポンポンとたたき、


「じゃあ色々頑張ってもらうかな」


 そう言って意地悪そうな顔を向ける。


(うっ、あ、あんまり怖いのは無しでね?)

「忙しいのはいいんだな」

(えっ、ほ、ほどほどに)

「じゃあちょっと、館の外を見て回って来てくれないか。あの伯爵にバレると事だからな」

(も、もう変なのは出ないよね…?)


 フェイリースは恐る恐ると言った感じで奴隷市場の館を見回りに行った。


「主はお優しいですな」

「なにだがよ」

「いえ、独り言でございます」

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