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食事処の付加魔法師  作者: シンカワ ジュン
幕間 男たちの手紙
23/38

幕間三 手紙〜アウロ男爵〜

 長い休養から戻ってきました。大変お待たせしました。 また今後ともよろしくお願いいたします。

拝啓


 春のうららかな陽気に王都や城の庭園の花々も美しく咲き誇り、芳しい香りを殿下の元へと運んでいることでしょう。穏やかな気候のこの季節、殿下におかれましては健やかにお過ごしでしょうか。


 こちら、アウロ男爵領にも一足遅い春がやってまいりました。厳しい冬を乗り越え、領民たちの顔にも安堵の表情が浮かんでおります。これからまた畑を整え実りの秋に向けての準備が始まります。今年は昨年よりも良い実りを迎えられるよう、領民たちと相談し、土作りから改良をしていこうという話になりました。若輩者である私の言葉にも耳を傾けてくれる良い領民たちです。彼らのためにも私はよりいっそう、この領地を豊かにするために働く所存です。


 そんな厳しい土地であるアウロ男爵領にも、この時期だけ見られる美しい景色があります。小高い丘の上、名も知らぬ薄紅の可憐な花が一面に咲き誇り、春の風に揺れる様はまるで小川のせせらぎのようです。ぜひ一度見ていただきたい景色ですが、殿下のご身分ではおそらく難しいかと存じます。なので、その花の押し花を贈らせていただきたく存じます。贈り物とも言えないほどのささやかなものではありますが、お納めいただければ幸いです。


 手紙という形ではありますが、こうして殿下と言葉を交わせる私はなんと幸福なのでしょうか。季節の花の香水が振り掛けられ、良い香りの漂う便箋に綴られた、殿下の人柄を表しているかのような小さく可愛らしい文字を目で追えば、学園での日々を思い出します。そのことを語り出すと長くなってしまいそうなので、短いですがこの辺りでペンを置くことにします。


 それでは、これからのますますのご多幸をお祈りいたしております。


敬具


 フリードリヒ・アウロ


  ***


「……今の私には、あなたの気持ちに応える資格がない。だが、いつか必ず、あなたの元へ行く。だから……それまで、待っていてくれ」


 私の、愛しき人よ。

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