格安物件
とりあえず、土地を買いに行くところからだ
手間や費用を考えれば出来れば建物は既に建っていることが望ましい
商人を探すにあたっては毎度のことだが宿の主人に聞いた
それによると…
この街の土地の商人は大手が2件、小さいのも含めると数百件にもなるらしい
今回は比較的安定しているはずの大手を選んだ
当然だが大手2件にも特徴があり
1.堅実で建物の修繕などがきちんとされているが適正価格売る商人
2.売り手の希望価格で売るが建物には大きく当たり外れのある商人
となっている
1の利点はある程度のお金があれば揉め事なく買えること。2の利点は運が良ければ安価で良い物件買えること
できれば1の方が安心できるが、所持金が心許ないので2の商人を訪ねることにした
どちらにしろ商人ギルドを通しているらしいので詐欺とかはできないらしい
教えて貰った商人の居る店は予想以上に大きいところでそこに居る人も豪華な服を着ていたため少し不安になってきた…
「ごめんください」
「あっはい、なんでしょうか?」
「宿屋が開けるくらいの家が欲しいのですが…」
「宿屋ですか…どのくらいの大きさが希望ですか?」
大きさか…困った、そこまで考えてなかった。10部屋以上なら大丈夫かな…
「10部屋以上あるところはありますか?」
「10部屋以上ですね…少しお待ち下さい」
受付の人が奥に調べに行った。
こういうところは初めてなので凄く緊張する
「お待たせしました、10部屋以上希望のことですが1つだけ候補があります。少々お高いですが大丈夫でしょうか?」
「はぁ…どのくらいですか?」
「庭、離れ も付いていますので金貨480枚になります。それと売り手の希望で建物の確認は資料のみで現地確認は控えて欲しいとのことです」
…所持金ギリギリだな。離れもあるということはそこに住むことも可能という訳か
実際に確認できないのは痛い…が
「えっと…買うことにします」
「承りました。申し訳ありませんが先払いお願いします」
先払いか珍しいな…480枚も無くなったら懐が寒くなってしまった
「では、契約完了しましたので案内しますね」
「あの~受付は大丈夫なのですか?」
「案内まで仕事なので大丈夫です。」
ふむ…そのまま案内ということは、近くにあるのだろうな
「ここですか?」
「はい」
「大きいですね…」
今、購入した土地に来ているのだが『大きい』の一言で表せないくらいところだった…
まず、立地が良すぎる
大通りに面していて近くには冒険者ギルドや商人ギルドもある それに王城や貴族街に近いので治安も更に良い
次に外見だが建物がすぐあるのではなく土地の外周に壁があり、壁から建物までの間に馬車が置けるような庭?もある。それに建物自体も大きい
良い意味で予想外である
しばらく呆けていたが
「内装も説明したいのですが大丈夫ですか?」
という声が隣から聞こえてきた
「はい、お願いします」
「まず、部屋数ですが1階には1人部屋が7つ。 2人部屋が4つ。3人部屋が3つあります。
中央通路を進むと以前、食堂として使われていたところがあります
また建物の中央通路を奥へ進むと扉があり更に進むと離れに着くようになっています。その通路は離れまで屋根があります
2階には1人部屋が8つ。2人部屋が8つ。3人部屋が4つあります」
「なんか金貨480枚に合わないような気がするのですが…」
「あぁ、そのことについてですか…
この建物は元々、大きな宿屋がありまして建物が古くなって来たのと部屋数が足りなくなってきたらしく同業の方には安くということみたいです」
「そうなんですか」
「はい、 それでは一通り案内も終わりましたので鍵と契約書をお渡しして私は帰ろうと思います」
「ありがとうございました」
「いえいえ」
ホントにありがたいな…
これなら少し手直ししたら直ぐに開けそうだ それに親切なことに宿の受付の上に建物に手を入れるときの注意点や外にある井戸について詳しく書かれた説明書があった
さて、今日は少し遅いので明日からいろいろ見回ることにする
【資料】
・井戸
敷地の奥側の両角にあるが使用出来るのは左奥のみ
右奥は煙が出ているので注意!
昔、異世界人の知恵を借りて離れと宿のそれぞれに じゃぐち ?を繋いでもらっているので基本井戸周りは掃除のみ
異世界人曰く『じゃぐちは魔導具で造ったからメンテナンスフリー』と変なことを言っていた。
・建物
大地が突然、動くことがあるので建物は頑丈にしなければならない
宿も離れも両方とも安全とは言えないので注意!
宿の食堂があった場所はほとんど空部屋
その他の部屋に関しては売れるまで時折、掃除していたので直ぐに使用することは可能
・その他
店を開いた場合、税金が年間金貨10枚
商人ギルド所属時 商人ギルドが仲介になるので年が変わるまでに払うこと
冒険者ギルド所属時は依頼の報酬から分割払いが可能になり不足分を次の年に払うこと
両ギルドに所属していない場合は徴税官に渡しにいく必要がある(徴税官は何処に居るのかその時でないと分からない)
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異世界人が居たことや税金があることにも驚いたがそれ以上に気になることがある
それは建物のところの大地が突然動くという所、井戸から煙が出てくる所だ。
まず、大地が動くことそれは地震のことではないだろうか
それが事実ならば地震対策したいがまずは一部崩れそうになっている建物を直すところからだ
魔法=イメージ という考えが使えると思うので多分手っ取り早く、なおかつイメージしやすいものを考える
だが初めて魔法を使うのでお試しとして門から宿までの道をならして見た
道なんて作ったことないのでイメージは重くて平面のある物体で押し潰す感じ。前世でのプレス機を想像した
そして低くなった所に土を入れる
この繰り返し
生活魔法のみだったが成功した
たぶん固さは荷物をたくさん載せた馬車が来ても轍はできないだろう
それにこの作業では危険性は皆無である
作業の途中に小鳥が重い物体の下に来たとき、不注意で発動させてしまったが攻撃性があるとなって発動しなかったのだ
ふむ…思っていた通り生活魔法は便利だ どこから土がきたのか少し気になるがそういうものだと思いほっておく
イメージ通り出来ることが分かったので建物の補強をする
全くの素人なので思い付くのは筋交いくらいだ
それより先にこのぼろぼろをどうにかしたいと思う 簡単に考えると巻き戻したら良いと思ったので一度、建物から出てド◯えもんの道具のタイ◯ふろ◯きが建物全体にかかるような想像をして完了まで待ってみた
結果は勿論、成功である
実際にドラ◯もんのヒミツ道具(のような魔法)が使えたことに感無量だ
これで直ぐに倒れることはないので、ついでに離れも同じ容量で直した
魔力はまだあると思うが、少し心配なので補強は後回しにして敷地内を探検することにした
まず、離れと宿との間は壁があるので離れは完全にプライベート空間になっている ずっと離れと言っているが結構大きな所だと思う 四人暮らししても大丈夫なくらいと思って欲しい それに畑が作れるくらい庭も大きい
庭の活用法は後回しにして左奥の井戸に着いたので早速、掃除をする
ただ、手作業だとめんどくさいので生活魔法でclean(クリーン:清掃)を使って手っ取り早く綺麗にした。それとあまり壊れていなかったが一応、リペア(修理)を使って新築?にしておいた
ここで宿と離れで使った風呂敷でない理由を言うとあれは一定の魔力を消費する。大規模でない限り燃費が悪くでエコではないためということと、一度直る時の現象を見たのでイメージが容易にできたためだ
左の井戸は普通らしいのであまり用はなかったが水質が少し気になったので生活魔法:成分鑑定 を創り、調べてみた 結果は軟水ということは分かったので良しとする
次は右奥の井戸を見に行く
説明書には煙が出ていると書いていたが黒くないし煙っぽい匂いもないので予想通りのモノが正体の可能性が大きくなってきた
ただ、この井戸と言って良いのか分からない
結構な高さの壁がある
詳しくみるとある程度の高さ毎に継ぎ足ししたような跡が見れるので水位が上がるにつれて増やしたのだろう
近くに中を確認するための梯子があるので立て掛けて中の様子を見る
すると… 少し赤みのある湯がある、そして手で火傷に注意しながら触れてみると少し熱めの温泉であった
日本人にとってとても行幸と言って良いであろう温泉が家の敷地内から見つかったことは嬉しい
ここで、ふと思ったことだがもしかしたらここに住んでいる人達にとって温泉というものは知らないのかもしれない
普通の湯と温泉の湯では少し匂いが違うし、温泉の湯の匂い(含鉄泉の匂い)を知らない人からすると少し前に見た説明書に "注意" と書かれていたことから何か危ないものと捉えていた可能性が大きい
その辺りを考えるとここの値が安かったことも分かる。
話しを戻そうか
赤みのある湯、そして鉄錆の匂いが仄かにだがあることから鉄分が多く含まれた温泉だろうな
源泉を発見できたのは偶然だったが前から風呂を作るつもりだったので少し予定を変更して温泉らしいモノを作ることにしようか
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★注釈★(修正後)
・物件を売っている商店のうち小さい商店にはギルドに通していないところもある。ギルドに通していないところはだいたいは客に対して脅迫のようなことをして物件を売り捌いているため、普通なら近づかない
・話中に機械や某猫型ロボットが登場したのは主人公がまだ、魔法についてイメージするのが難しかったので既にあるものを考えた結果。今回の魔法の使用である程度、把握した
・主人公がいる街には温泉の概念無し
・街と町は別のものとなってます
街は日本でいうところの、県庁所在地などのこと
町は『街』が近くになくてある程度、発展している所を指す。