初風呂
オーナーに言われたところに行くと周辺の家と見た目変わらない…いや少し違うが、見た目木造でよく見ると中にレンガが組み込まれている建物がそこにはあった
なぜレンカ造りの建物なのか不思議に思いながらも入ることにした
コンコン「どなたかいらっしゃいませんか?」
「はーい! いますよー
入ってくださーい!」
という声が聞こえたので入ると職人というイメージが覆されるくらい優男って感じの和やかな人だった
「キテール(馴染みの店の名前)のオーナーさんに紹介してもらった者なんですが 」
「はい、話は聞いてますよ
作れるかは別にして、どのようなものが欲しいのでしょうか」
「木桶を作って欲しいのですが、素材はこちらから持ち込み指定です」
「なるほど。では木桶のサイズと素材を見せてもらっても大丈夫ですか?」
「はい」
一応、木桶のサイズはキテールで丁度よいサイズの木桶を買っていたのでそれを持ち出した
素材は風呂を作ったときの残りの板を持ってきた
量はどのくらいいるか分からないため、注文ができるか確認してから持ってくるつもりだ
「この素材は……少々、触らせてもらっても大丈夫ですか?」
「ええ、いいですよ」
なにやら、見たことの無かった素材なのか 様々な角度から素材を見ているようだ
「あの、少し不躾な質問ですがこの木はどこからお持ちに?」
「街から少し歩いたところに強い魔物がでる森ありますよね?そこからです」
「なっ……魔の森に行っていたのですか?」
「魔の森?」
「ええ、この辺りの人はそのように呼んでます
誰かがつけたというわけでもありませんがいつしかそのように呼ばれています あの森は余程の冒険者しか入れないはずなのですがよくご無事でしたね」
「そこまで ですか?」
「はい、まずCランク以下の方は絶対避けて通りますね
時折Aでも危ない魔物が出るらしいですよ」
「そうですか。あのそれで木桶は作れそうですか?」
「そうですね…作れると言えば作れるかもしれません
ですが私では綺麗に仕上げることは難しそうですね」
「それでも大丈夫ですが」
「いえ、私自身が許せませんね
このような 超 が付くほどの高級な木をもったいないことにするのには…
私以外にどなたか職人はご存知ですか?」
「分からないです」
「そうですか。では私から紹介しましょうか?」
「良いんですか?お願いします」
優男さん…名前を聞き忘れたので優男さんと呼ぶ…に職人への紹介状と店の場所を描いた地図を貰ったのでその職人の元へ行く
さっきの優男さんの店は商店通り。次の店はまた少し遠いギルド通りとなっているので着くまでに時間がかかった。
店に着いた
今回の店は立派な屋敷って感じの大きな所だ 一見、店か?と思うが小さい看板に店の名が書かれていた
店の名は『エルゴン』らしい
今度こそ大丈夫だと思うが少し緊張する
コンコン「ごめんください」
「はい 開いてますよ
お兄さん、どうされました?」
店番しているのが子供だったのでジーっと見てしまっていたらしい
声で気付いて目を反らすとあることに気付いた
店の中には売り物が1つも無かったのだ
とりあえず何か返すべきか…
「ああ、優男さん?のところから紹介状を貰ったのだが」
「優男さん?……ナイロさんですかね…紹介状お預かりします」
「ああ」
「少々、お待ち下さい」
子供……少女は紹介状を抱え、店の奥に入っていった
「お待たせしました」
「あなたは?」
しばらく経ち、少女と一緒に女性が出てきた
少女と手を繋いでいる辺り、少女のお母さんだろう
「私はこの店の店主のナイアと申します
ナイロからの紹介状を見させていただきました
ご依頼の物を見せてもらっても構いませんか?」
「あ、ああ ところで少しお訊きしたいのだがナイロさんとは?」
「え?あ、そう言えば聞いてないのでしたね
ナイロはこの紹介状を書いた店の店主で私の弟ですよ」
「そうでしたか っと、依頼ですがこの木桶と同じ形状の物をこの木で作っていただきたいのですが」
「!?この木は……失礼しました
拝見させていただきます」
さっきのナイロさんといいナイアさんといいそこまでこの檜に驚くのか?
確かに取りに行くのはめんどくさいがそこまで魔物は強くなかったはずなんだが…
「えーと…」
「あっ レンカです」
「レンカさんですね。
一応、出来るとは思いますがこれでは材料は足りないと思いますがどうなさいますか?」
「あぁ、一応 家にこのサイズと同じのが10枚ほどありますがどうでしょうか?」
「4個くらいできますね」
「……そうですか…
では今日はその4個お願いします
できれば120個欲しいのでまた日を改めて追加依頼をしようと思います」
「120個もですか…はい、分かりました。
4個でしたら2時間程でできますので日の昇っている内でありましたらいつでもどうぞ
あと、料金は完成後に試算します」
「分かりました
では、また後で」
薄々は気付いていたが木桶120個作るには材料不足だったようで現在は魔の森と呼ばれるところに再び向かっている
前は初めて森に入ったので用心をして戦い方を工夫していたが、思ったよりも魔物自体は強くなかった…というより、弱かったので今回は通常は斧を2本持ってひたすら木を刈っていくつもりだ おそらく、油断し過ぎない限り魔物も一緒に斬れるだろう
街を出てからあまり時間が経たない内に魔の森に到着した
門を出てから街道を外れ全力に近いダッシュをしたので直ぐに着くのは当然だろう
魔の森を見てみるとなんとなく前回どこから入ったか解る。だが少し予想外だったのは前回あれほど荒らした森が完全に元に戻っていたことだろう
また一からやり直すというめんどくさい気持ちもあるがそれ以上に檜の場所が同じだということが判断できるのでまた大量にいる今回も探す時間が省ける。これほど嬉しいことはないだろう
森の中に入って直ぐに魔物に出くわした 前回同様オーガだ 一応、少しだけ警戒はしているがわらわらと集まってくるオーガへさっさと斧の刃をプレゼントしよう 効率よく刈れる首を斬っていく 少しハイになっているので俺は何ともないが周りから見ると首が次々と飛んでいるのでグロいかもしれない
そんなこんなで森の入り口から奥まで一直線に斧で切り刻んできた
途中、斧が何本か折れたが想定済みだ 街の武器屋で斧を買い漁ってきたのでまだまだある
檜の木の群生地に辿り着いた。時間としては街を出てから30分くらいだ
ここにもオーガはいるが、オーガを切るのと同時進行で檜も切っていく一応、安全の為に木の倒れる向きを調整しながらなので斧は一つだけ持ち もう一方の何も持っていない方の手で斧で伐った木を思い描いている方へ押し倒す
そんな作業を1時間くらい続けると檜の群生地から檜が一本も生えていない状態へとなった。オーガもいつの間にかいなくなっている
少し落ち着き辺りを見回すと倒れまくっている木と血だらけの体、首が転がっていた
長居は無用なのでとりあえず辺り一面に生活魔法のcleanをかけ血を排除しオーガの死体と檜の木を回収した
魔の森からの帰りは何もなく無事に帰ってきた
早速、オーガを冒険者ギルドへ…と行きたいところだが先に木桶を発注しよう 時間もきっかり2時間で帰ってこれたのでついでに完成しているはずの木桶も貰って帰る
コンコン 「こんにちはー」
「あっいらっしゃいませ
木桶4つ完成していますよ」
無事に完成していたらしい
早速 手に取り見てみると良い仕上がりである 持ち上げて日にかざしても光が入ってこない これなら水漏れも気にせず使えるだろう
「良い木桶ですね」
「ありがとうございます」
「あっそれでおいくらでしょうか」
「そうですね…材料持ち込みを引いても加工費に結構かかってしまうため木桶1つにつき銀貨1枚となってしまいました」
「銀貨4枚ですね。 はい
あと、追加注文で120個の件ですが木材の確保が出来たのでお願いします」
「え?もう用意出来たのですか!?…失礼しました
はい、では木桶120個ですね。申し訳ないですが100個以上の大口注文は原則先払いとなってしまいます」
「分かりました では銀貨120枚です」
「はい、確認します 少々お待ち下さい………確認出来ました
では、そうですね…少し余裕を持って…7日後に用意できると思います」
「分かりました。では、また」
よし、木桶GET!
もうすぐ夕方になるな 冒険者ギルドへ行こうと思っていたが長くなりそうなので夕食用に何か買って帰ろうか
「ただいま~」
「おかえりなのじゃ♪」
お!やっぱりただいまって言っておかえりってのが返ってくるのは嬉しいな
今までただいまって言ってシーンとなってたから悲しかった
「どうしたのじゃ?ニヤニヤしておるぞ?」
「んん なんでもない
それより、少し早めだが夕食にするぞ!」
「む?風呂とやらには入らんのかの?」
「先にやること済ませてゆっくり浸かった方が良いだろ」
「それもそうじゃの。ではさっさと食べるのじゃ」
夕食を食べ終わり、入浴以外の家事を全て終わらした
そして今から待ちに待った、風呂の時間だ!
「ノラ、風呂入ってきていいぞ」
「やっとなのじゃ♪では入って来るのじゃ♪」
ノラは子供のように跳び跳ねて風呂へ向かって走っていった……が直ぐに戻ってきた
「どうしたんだ?」
「風呂の入りかたが分からんのじゃ」
「ん?普通に入るだけだろ?」
「その普通が分からんのじゃ!」
「?」
「もうじれったいのじゃ!レンカも一緒に入るのじゃ!」
「え!?いやそれは…」
「男子ならしゃきしゃきせんか
早く入りたいのでの!さっさと行くのじゃ」
「えっちょっとまって!」
レンカの制止を無視してノラは半ば強引にレンカの手を握り風呂へダッシュした
★ノラ視点★
時は少し遡り、風呂へ走っていった頃。
ノラはお風呂場と名付けられた建物の前に立っていた
やっと入れるのじゃ♪楽しみなのじゃ
風呂がどのくらい気持ちいいかワクワクするのじゃ♪
そういえば、風呂にはどうやって入るのかの?服はどこで脱ぐのかの?それ以前に服は脱ぐのかの?分からないのじゃ…
こうなったらレンカに教えてもらうのじゃ……いや、それよりも良いこと思いついたのじゃ!そうと決まれば早速、行動しようかの!
というところで今に至る。
そして、レンカを強引に引っ張って来た
どうじゃ!これこそ一石二鳥というものなのじゃ!
風呂への入り方を学ぶのと、レンカと一緒に風呂に入って親密になるのと2つ一気にできるのじゃ!妾はなんという天才じゃろうか♪クフフフフ…
「あの~ノラ?何で笑ってるんだ?」
「何でもないのじゃ では風呂に入るかの」
「ホントに俺も行くのか?」
「そうなのじゃ 入ってくれないと…」
「くれないと?」
「大変なことをするのじゃ!」
「た、大変なことって…」
「もちろん、秘密なのじゃ♪」
「そ、そうか。はぁ…しょうがない。入るか」
「それで良いのじゃ♪」
上手くいったのじゃ♪やはり勢いというのは大事じゃの
じゃがまだ難関もあるからの…慎重でなおかつ大胆にレンカを逃さないようにしなければ なのじゃ!
どうしてこうなった…
俺は何度目か分からない程、この状況に困惑し考えていた
ノラが風呂について分からないと言うのは想像できる
だがまさか、2人で入るなど言うはずがない…と思っていたのだが…現在、お互いに背中を向けて…というよりは背中合わせで入っている
それなりに檜風呂は広めに作った 広めといっても1人が入ることを想定として、1人用の風呂より少し広めでゆったりできるように作られている
なので、2人で入るとは予想していなかった
入ってからずっと無言なのだがさすがにずっと無言も…と思い声をかけてみる
「な、なあノラ?」
「なに!?」
声をかけるとノラはピクッとして返事をした
「風呂どうだ?」
「気持ちいい」
「そ、そうか…それは良かった」
油断からかノラはいつも心掛けているというお年寄り口調をしていなかった
それを言うか悩んだが言わずにおいておこう
「ノラ、そろそろ俺は出てもいいか?」
「まだダメ もう少し入りたい」
「分かった。じゃあ10秒数えて出るか」
「…分かった」
………
……9…10!」」
10秒数え終わり、俺から脱衣場に出ようとしたら腕を掴まれた
「ん?どうしたノラ」
「一緒に出る」
「いやいやいや!それはマズイだろ!」
「何がマズイの?」
「いや お互い服着てないんだから危ないだろ?」
「?…レンカを1人で脱衣場に置く方が危ない」
「はぁ…俺をどんな目で見てんだ…まぁ分かった。行くぞ」
「うん」
脱衣場で俺は少しばかりケガを負いながら目を瞑り手探りで服を着、外に出た。そこまでしたのは主に精神的な打撃を受けないために。詳しくは言えない
しばらく待っているとノラも出てきた
今度はしっかり服を着ているので見れる といっても湯上がりの姿はヤバかった…ナニがとは言わないが…
風呂で多大な被害…主に俺の精神的ダメージ…はあったがなんとかのりきれた
そして、今は お風呂場 の休憩所にいる
ここには温泉には欠かせないコーヒー牛乳を置いてある 他にもフルーツ牛乳とかノーマル牛乳とかあるが俺がコーヒー牛乳ということもありコーヒー牛乳が多めだ
「ノラ、お前もコーヒー牛乳飲むか?」
「なんじゃ?コーヒー牛乳とは」
風呂から出て少し経ったこともあってか、ノラの口調が戻っていた
「風呂上がりには欠かせない飲み物だ」
「ほほう 妾も飲むのじゃ!」
「よし!じゃあ姿勢は こうな」
左手を腰に当て、右手で牛乳瓶を持ち姿勢を作る
「こうかの?」
「そうだ。それで一気にグイッと飲むんだ」