食文化
あのあと、ノラに部屋はどこが良いと尋ねると俺の部屋が良いというのが帰ってきた 当然、俺は恥ずかしいので断ったが向こうも引かないので長い間押し問答となり 結局、ノラは俺の自室の和室(敷き布団)で寝る 俺は自室の洋室で寝るということで落ち着いた
部屋の問題も解消?して気が楽になったのかお腹が空いてきた
今日はノラの為にも和食を主体にし夕食を作ろうと思う
ここニサラ王国には日本と同じような食材、調味料がある
食材はそれで代用が可能…いや、一部は無理だが…なので目を瞑る
だが調味料は全く同じを求めたいので前世の知識を活かして自作の調味料を作成した
余談だが先程、一部の食材は代用できないと言っただろう 実際には可能だがどうしても同じ物、同じ味を求めた 日本人に欠かせない…和食を作る上でなくてはならない そう 米 だ こちらにもジャポニカ米はあるのだが味が素っ気なかったので生活魔法を使い品種改良をした。おそらく生活魔法の正しい使い方から大きく逸脱した使い方だったと自分でも思う
そんなこんなで苦労と時間をかけて作った米や調味料を使い作るのは
キノコの炊き込みご飯(松茸)
ぶりの煮付け
ほうれん草のおひたし
味噌汁
このくらいでどうだろうか
まぁ、ずっと言ってはいるが炊き込みご飯のキノコも煮付けのぶりもおひたしのほうれん草も味噌汁の具材も?が付く。どれも鑑定結果に松茸のようなキノコやぶりのような魚といった具合に微妙な食材だ ただし味に関しては大丈夫だった
そうこう考えているうちにほぼ完成した
そろそろノラを呼ぼうかと思いリビングに顔を向けたが居なくなっている
その時、ふと 隣に人の気配がして振り向くと
目をキラキラさせたノラがいた
★ノラ視点★
下へ降りて夕食を食べるらしいのでレンカが作っておるのをゆったり待っておった時じゃ いままで嗅いだことのない匂いが台所から伝わってきたのじゃ レンカが作る前に言うてたのは『和食』とやらを作ると言っておったのじゃが果たしてどのようなものなのじゃろうか
…気になって仕方がないの 見に行こうかの
ノラは匂いに負けてレンカがいる台所へ向かう
そこには初めてみる料理が並べられていた
これはなんじゃ!?妾自身、結構な数の料理を見てきたはずなのじゃ なのに全て初めてみる料理なのじゃ!うむ?この茶色の穀物よく見たら東の方の地方にしかない 米 とやらではないか!ここらでは高級品じゃぞ!こんなにふんだんに使うとは『和食』とやらはなんとも贅沢なのじゃろうか……ずっと見てたらヨダレが垂れるのじゃ…早く出来んかのぅ
む?…隣を見るとレンカが驚いた顔でこちらを見ておるのじゃ どうしたのじゃろう
「おい、ノラ いつからいたんだ?」
「む?少し前からなのじゃ」
「そ、そうか。もうすぐできるからな そういえばノラって箸は使えるのか?」
「箸?」
「使えないか…どうしようか」
「箸とやらを使うのじゃ」
「え?」
「妾も同じものを使うのじゃ!…どうするのじゃ?」
「あぁ、それは……」
★レンカ視点★
びっくりした…横を向いたらノラが居たのには… それにしても匂いに釣られてやってくるとはな 外見相応ということか
それにしても箸を教えるのには苦労したな
なんせ一度も持ったことのない人に教えるのは初めてだから教え方なんてほぼ分からんかった …まぁどうにか成り行きで教えたのと、ノラの習得スピードがめっちゃ早くて助かった
今は目の前で夕食そっちのけで豆を皿から皿に移すのを繰り返している…これは夕食のこと忘れているのかな…
★ノラ視点★
突然じゃがのレンカに箸とやらの使い方を教えてもらってのその便利さに驚きながら練習してたらの、大変なことに気付いたのじゃ!
完全に!忘れておったのじゃがあの『和食』とやらを食べるといっておったはずなのじゃ 妾が忘れてしまうとは 箸とはなんと魅力的なものなのじゃろうか…
それでの顔をあげるとの、目の前に暖かい目で妾を見ておるレンカと目があったのじゃ…そのように見られると照れるのじゃ
「さて、そろそろ食べるか?」
「う、うむ!なのじゃ」
「なに緊張してんだ? まぁ良いか じゃ……いただきます」
「いただき?なんじゃそれは?」
「ん?あぁ、『いただきます』ってやつか?これは神への祈りみたいなものだよ」
「祈りかの 律儀じゃのう では妾も……いただきます!」
いよいよ食べようとしたときじゃ 何から食べようかと迷ってレンカを見るとな食べ物の前になにやら緑色の液体を飲んでおったのじゃ
なんじゃ?あの奇妙なものは…
「レンカ それはなんじゃ?」
「ん?これか? 緑茶だ」
「緑茶?見たことあるがそのような緑でなくて薄い黄緑じゃったぞ」
「なんだ、緑茶 知ってるのか じゃあ抹茶は知ってるか?」
「知っておるぞ じゃが食事のときに飲むもんではないぞ?」
「あぁ。 まぁ正解を言うとな、これは緑茶の茶葉に抹茶を少し混ぜた緑茶なんだ」
「混ぜたのかの?」
「あぁ 俺は単体も好きなんだがこっちの方が好きでな」
「なるほどの」
「それより料理が冷めないうちに食べないのか?」
「いや、どれから食べようかと悩んでいての」
「そういうことか。それなら最初は熱いうちに一口 味噌汁を飲むのが良いぞ 味噌汁は熱いのが一番美味しいからな」
「味噌汁?」
「そういえば知らないのか 味噌汁はこの茶色の汁のことだ」
「ふむ、茶色いの…大丈夫なのかの?」
「なにが?」
「これ食べれるのかと思っての」
「安心しろ 美味しいはずだ」
「そうかの レンカがそういうのならば食べるかの♪」
初めて見る茶色い味噌汁に困惑しながらも思いきって飲んでみると…
少し怖いがレンカに進められるまま茶色い味噌汁とやらを飲んでみたのじゃ!するとな なんという深い味わいじゃろうか
まず最初に感じるのは独特な味わったことのない味が口の中に広がるのじゃ その後にはの、具の中に入っていないはずなのじゃが魚の風味が伝わってくるのじゃ!なぜじゃろうか…
「どうだ?味は」
「おいしいのじゃ♪」
「おお!それは良かった」
「おいしいのじゃが…」
「ん?どうした?」
「なにやら魚の味が伝わってくるのに魚が入ってない これはどういうことじゃ?」
「あぁ、そういうことか
それはな、和食を作る上で最も大切と言って良いくらい大事な 出汁 をな 今回の味噌汁には ぶりのあら を使ってみたんだ」
「出汁?あら?」
「出汁っていうのは料理を作る上で大切な 旨味 を加える上でいるもの って感じでいいかな
そんで、『あら』っていうのはな 今日でいえばぶりの煮付けを作ったときに使わなかった頭部、背鰭、尾などのことを言うな」
「ふーん なるほどなのじゃ」
「あまり分かってないな…まぁ良いか。次は何食べるんだ?」
「うむ…迷ってしまうのじゃが先程からレンカが言うておるぶりの煮付けとやらを食べるとするかの♪
ん?なんじゃ?この茶色?の たれ と丸っこいものは」
「あぁ、それか 自家製の醤油と大根だ」
「醤油?大根?」
「醤油…は食べてみてのお楽しみにしとこうか
大根は野菜だ」
「そうかの 食べてみようかの」
パクッ…!?
なんじゃ!?この食べたことも味わったこともない味は!?
でもおいしいのじゃ♪
魚にもしっかり味が染み込んでおって身はフワッフワじゃ!
それにこの大根?は 野菜じゃと聞いて味気ないものじゃと思っておったのにこの口に入れたとたん広がる 醤油?の味がすごいのじゃ♪
正直、少し侮っておったのじゃが 脱帽じゃ!
こんなに美味な料理、長生きしておるはずの妾でも初めてなのじゃ!
ぶりの煮付け、美味しかったのぅ♪ 勢い余って食べきってしもうた
それにしてもこの醤油とやらはなんという深い味わいなのじゃ 昔、海辺の町でこの醤油と似たようなものを味わったことあるのじゃがなんじゃったかのぅ…たしかこれを生臭くしたようなものじゃったんじゃが……
まぁ、良いか。この醤油は一体どのようなもので作られておるんじゃろうか
「んん…レンカよ この醤油とやらは何が使われておるんじゃ?」
「材料か?…材料は大豆・小麦・塩・麹だな」
「へ?」
「だから、大豆・小麦・塩・麹だよ」
「いや聞こえておる!そうではなくてそれだけで出来るのかの!?」
「まぁ出来るな。何故できるかは先人が凄かったとしか言い様がないがな
材料はこれだけだが普通に作るなら作り方が大変だな」
「大変なのかの…ん?普通になら?」
「そそ。そこは生活魔法をちょちょいと使えばな」
「んん?今なんと?」
「ちょちょいと使えば?」
「惜しい!少し前じゃ!」
「生活魔法…「それじゃ!」…へ?」
「なぜ、そこで生活魔法が出てくるのじゃ」
「ん?生活魔法なんだから生活に関することには使えるだろ」
「なん…じゃと…」
「いや、そこまで驚くことか?」
「軽くいうでない!今から言うことを聞いてからも言えるかの?」
ニサラ王国…いや、この世界では生活魔法が便利と言われている理由は清掃・修復が出来るということくらいである
その時点で便利で重宝されるため、それ以外に使う人は まず 居ない
加えて言えば、生活魔法は消費魔力が多く その上 扱える人が少ないので清掃や修復以外に使う という発想を持ち、実行する という人は現れていない…というのがノラの考え……一般常識と思えば良いとのことだ
「ふむふむ…今まで考える人がいないってだけだったってことじゃ?」
「まぁ、そうなのじゃが…軽いの」
「まぁな。とそれより、話が脱線しまくっているぞ」
「!おお、そうじゃったな」
「んで話を戻すが、醤油に使われるものは大豆・小麦・塩・麹で生活魔法を使うってとこまで言ったよな」
「ん?そうじゃの」
「それで材料の事で聞きたいことはあるか?なかったら次にいくが」
「うむ!沢山あるぞ!」
「いや、そんなに自信持って言うことじゃ……」
「そうかの?まぁそれはおいといての、大豆と小麦はだいたい想像できるの じゃが、塩はあまりおいしいものではなかったぞよ?」
「塩か…本来の作り方をしていないから詳しくは言えんがこちらの塩は真っ白か?」
「何を言うておる 塩が真っ白なわけ……もしや真っ白なのかの!?」
「ああ ってそんなに驚くことか?」
「真っ白の塩はの、100㌘で都の一等地数個分程の価値がある最高級の塩なのじゃ!」
100㌘と聞いておおよそそれくらいの塩を取り出してみた
「そうなのか…これくらいでそんなにか」
「お主!こんなに持っているのかの!?」
「ん?まだまだあるぞ」
「マジかの!?」
「お、おう」
「…出来たらで良いのじゃが……少し舐めてもいいかの?」
「ああ、良いぞ」
「ホントかの♪では早速…」
ペロッ !?なんじゃこの甘味は!
塩といえば何かよく分からんが変な?味わいとなっておるはずなのじゃ
それなのにこの塩は甘味が広がっとる それに味がすっきりしとるせいか塩のしょっぱさが鮮明になっておるではないか!この塩…へたをすると王城……いや この王都全域を買い占める上、数え切れない程の金銀財宝が手に入る程の価値になるのじゃ!
見た目は以前食べたことのある真っ白い塩じゃ
じゃが味が全く違っとる 何故なのじゃ!
「おーい ノラ大丈夫か?」
「レンカ!この塩の甘味は何故なのじゃ!」
「ひっ…ビビった…少し落ち着け。塩はしょっぱいだろ?」
「む…すまんの。塩がしょっぱいのは分かっておる そうではなくての、なぜあの…変な味わいがせずに仄かな甘味があるのじゃ?」
「変な味わい?……雑味が多すぎるのか?」
「雑味とはなんじゃ?」
「ん?…まぁ 不純物の味わいってことなんだが塩ってのはな雑味がある方がおいしいんだ」
「不純物が入っておるのかの!?」
「まぁ食べても大丈夫な不純物だ
それでな塩に適度な雑味が入っているとな少し甘味を感じたりおいしいって思ったりするんだ。だが雑味が多すぎると甘味や美味しさを感じなくなり雑味となるんだよ」
「む…あまりよく分からんのじゃが、作り方に問題があるってことかの」
「まぁ簡単に言うとそうなるな おそらくその真っ白い塩は海塩だな
それで真っ白以外は赤っぽくないか?」
「うむ。たしかに赤いの」
「んじゃ、その赤い塩は岩塩だな その岩塩は赤い程 しょっぱさが増し、白くなる程、しょっぱさが減り甘味が増す塩だな」
「なるほどの。塩でも海からの塩と岩塩?とで違うのかの」
「まぁ、そういうことだ。少し長かったが塩については大丈夫か?」
「うむ」
塩についての授業?からようやく復帰した
まぁそのあと、麹についても論争?に発展した
塩以上に紛糾したとだけ伝えようか
長い間、話したせいで味噌汁がぬるくなってきたころ やっと炊き込みご飯までたどり着いた
「んじゃ、次は松茸の炊き込みご飯だ!」
「なんじゃ?その松茸とやらは」
「食べ終わってから教えるからまずは食べ終わらないか?これ以上遅くなると完全に冷めるぞ」
「む…それもそうだの では食べるとしようかの」
「旨かったの♪ 和食がこんなに美味しいとは驚きだの!特にあの香り豊かなキノコ…松茸が気に入ったの!」
「そうか、ありがとう」
「それでの 松茸とやらはなんなのじゃ?」
「さて、何が分からないのかが分からないのだが…
松茸はキノコっていうしかないんだけど」
「むむ……妾はエルフ族だということは知っとるじゃろ?」
「なんだ?…まぁ知ってるよ」
「それでの、エルフ族は森に囲まれたところに国の都を作っておるのは知ってるかの?」
「初耳だ。まぁなんとなく想像つく」
「まぁそれでの、森に囲まれておるということは森の幸が沢山採れるということじゃ」
「お!言いたいことが分かった エルフは森の幸…キノコについて詳しいということか」
「その通りじゃ。特に妾はエルフ族でもエンシェントエルフじゃ 長い間生きとる上、高位におるから 簡単に言うとの 半端ない知識と経験を持っとるのじゃ
じゃが、その松茸というキノコは見たことがないの
似たような形・味は知っとるが全く同じと言いきれないから不思議に思っとるのじゃ」
「なるほどな だから疑問に思ったわけか
まぁ、おおざっぱに言うと品種改良した結果だ」
「品種改良?」
「そう。品種改良っていうのは簡単にいうと二つの違う食品を掛け合わせてその二つの食品の良い部分…特徴を抽出し新しい一つの食品を造り出すってことだ」
「? 全く分からんの」
「ありゃ…分からんか…
例を上げるとな、この松茸に似た形のキノコと味に似たキノコを組み合わせてみると松茸の形・味が合体?したキノコになるってことだ」
「ほう!そう言うことかの!
む?ではこの米もぶりも見たことなかった理由は品種改良したからなのかの?」
「まぁそういうこと。なんか惜しかったから品種改良したらいけるか?って思って造ってみた」
「軽いの……どうやってしたんじゃ?もし、簡単ならばこれは商売になるぞよ!」
「ん…まぁ生活魔法だ」
「そんなところじゃろうと思ったわ…」
「なんかすまんな」
「元々、期待してないから大丈夫じゃ」
「そ、そうか やっと食い終わったな 次はどうする?」
「どうすると言われてものぅ 妾は任せるしかないしのぅ」
「それもそうか。じゃあ時間も遅いし魔法使って寝るか」
「そうじゃな ではレンカよろしくたのむ」
「なにが?」
「魔法じゃ」
「自分で出来るんじゃ?」
「まぁの…さぁほれ!こい!」
「まぁいっか…はい出来た」
「うむ、気持ち良かったのじゃ 妾がするときと違い良い匂いがするの
何故なのじゃ?」
「ん?石鹸で洗っているように想像しただけだな」
「凄い発想をするのぅ」
「そうか?まぁいい もう寝るぞ おやすみ」
「おやすみ」