ノラの昔語り
口調はお年寄りだが姿は幼…少……女の子なので少し………いや、結構 緊張しながら部屋に足を踏み入れる
まず最初、圧倒的な部屋の大きさに驚く
100人以上入っても余裕がありそうなくらい広い
だが部屋が大き過ぎて広さと家具の量、サイズが全くと言って良いほど合っていない
次に壁の色がベース緑色の所々黄緑となっており家具が木の色なこともあって森をイメージしたのだろう
「驚いておるようじゃな
この部屋はの 見ての通り、森をイメージして配色したようじゃ」
「なんで森なんだ?」
「まぁ、色々あっての
ようやく本題に入るのじゃが、レンカは妾の弟子であるのぅ」
「あぁ、そうなったみたいだけど 」
「弟子であるならば師匠の手伝いは基本だの?」
「まぁ、そうなるのか」
「では、早速 初仕事して貰うかの」
「あぁ、分かった」
「よし!仕事はこの部屋の掃除じゃ!」
「え?」
「じゃから掃除をしてほしいのじゃ!お主の生活魔法は何故かこびりついた汚れまで落ちたとレーナが自慢しておっての、
妾の部屋もピカピカにしてほしいのじゃ!」
「まぁ、いいけど………
………はい。終わった」
「おお!早いのぅ
絨毯がフカフカになったの♪
家具の色も綺麗になったのじゃ♪」
「で、ノラ
今日、部屋に呼んだ理由は?」
「終わったのじゃ」
「は?」
…………………
「う、うむ
なにやら落ち込んでおるの
…そうじゃ!今日は特別に妾に出来ることであれば叶えてやるのじゃ」
「何でもか?」
「妾が出来る限りは、じゃが」
「そうかそうか」
「なにやらお主、変な事考えておらんかの?」
「変なことじゃない!
ノラの秘密が知りたいだけだ!」
「妾の秘密かのぅ
そんなに乙女の秘密が知りたいのかのぅ?」
「……」
「はぁ…しょうがないの
答えられる限りは答えようかの」
「ストレートに、ノラって何者なんだ?」
「ホントにストレートだの
説明は後からするでの、先に妾についている肩書きから教えようかの」
「肩書きは5つあっての
1つ目は魔術師長、これは魔術士長を含めた王国の魔術隊の教師みたいなものじゃ。
2つ目はグランドマスター
3つ目は公爵
4つ目は……この国の国母…
5つ目は エルフ族長 所謂、王じゃ」
…後半、突っ込みどころ満載な気がするのだが
3つ目まではなんとか分かる?…のだが4つ目からは意味が分からない
この国の国母でエルフの王??
予想の斜め上に行き過ぎだろ!
「聞きたいことはあるかの?」
「あぁ、沢山ある
どんな経緯でそんな状態になったんだ?」
「そうじゃのぅ……
あれは百年程前の話じゃ。当時はまだエルフの国におっての一応、末端ではあったが王族に連なる者じゃったから少ししか自由がなかっての 暇になる度に家出をしておった
妾はそのうち、かわりばえのないエルフの国に飽きてしまっての
王にことわりを入れてからではあったが差別が少ない普人族の国に行くことにしたのじゃ。
此処までで質問はあるかの?」
「ん? じゃあ、普人族ってなんなんだ?」
「おお!そう言えば種族の説明をしてなかったの。
この国の9割の人がお主らのような普人族じゃ。世界的に見ても一番多い者達じゃ。
その他にも、エルフ族 ドワーフ族 獣人族 魔人族 神族 などがおる」
「へぇー 色々居るんだな
じゃあ次に差別が少ない普人族の国にってどういうこと?」
「それについては少し長くなるかも知れぬが大丈夫かの?」
「あぁ」
「普人族の数が圧倒的に多いというのは教えたじゃろ?」
「あぁ」
「それでの数が多くなると必然的に国の数も多くなる
沢山の国が出来れば考え方も色々出てくるのじゃ
その中にはの、過激な考え方の者達もおっての
妾などの普人族以外の人種を『亜人』と呼び
普人族を『人間』と呼ぶ "人間至上主義" を掲げる国が出てきたのじゃ」
「人間至上主義?」
「そうじゃ。
その考え方の根底にはの、エルフ族や魔人族は魔法との親和性が高い ドワーフ族や獣人族は身体能力が高い などと言った特性が普人族には強く出なかったことによる妬みだったのじゃが、いつしかそれが差別になったのじゃ
続きを話すぞよ
さっき言った"人間至上主義"はそこまで多くなくての
ほとんどの普人族が友好的な立場じゃったから普人族以外が虐殺されるようなことにはならなかったのじゃ
それにの、一定周期毎に各種族から"勇者"なるものを集めて邪の者達に対抗しないといけないからの、対立が起きるまでには発展してないのじゃ」
「邪の者ってなんだ?魔王とかか?」
「何を言っておるのじゃ
魔王が邪の者なわけないじゃろ
お主が何を間違えておるか知らぬが魔王とはの、魔人族の王や魔法国家の王の事を言うのじゃぞ」
「そっそうなのか…」
危なかった 魔王=悪い奴ってイメージ持ってたからなぁ
この話を聞く限り魔物と魔人族は全然別の存在なんだろうな
「さて、次にゆくぞ
色々あってこの国にたどり着いてからじゃがまずは日々の生活の為にギルドに言ってのそこで登録の時に妾自身にもよく分からんのじゃがほとんどの攻撃魔法・防御魔法が使える事が分かっての、討伐系を中心に次々と依頼をこなしていったのじゃ
当時の妾は冒険者の常識が分からんのでの、
気付けば数年でSランクになっていたのじゃ
Sランクになるとな、半強制でグラマスになっての
グラマスの仕事で登城することになったのじゃ
それで結構な数、登城してたらの先々代の王にの『魔術士長になる気はないか?』と言われたのじゃ」
「それで受けたのか」
「いや、受けていないのじゃ」
「は?肩書きで魔術士長になったって言ってなかったか?」
「それは魔術師長じゃ!お主が言う魔術士長とは違うのじゃ!」
「ん?何処が?」
「魔術士長とはの国の魔術士隊を率いて戦争に参加したり魔物を間引いたりする魔術士の一番上のような存在じゃ
それに反して魔術師長はの魔術士隊に時々、魔術を教えたり使えそうな魔術を編み出したりする存在じゃ」
「ふーん」
「反応が薄いの もしや分かってないのかの
まぁ良い それでじゃ、魔術士長を断ったらの『では魔術師長ではどうですか』と先々代に懇願されての、妾はめんどくさいからと思ったのじゃが」
「断れなかったのか」
「そうじゃ!」
「次に国母になってしもた経緯じゃが魔術師長となってから少し経ったときにの、先々代から素性?とかよく分からんものを調べる許可が欲しいと言われての 特に気にせんかったから直ぐに許可を出したらの
するとな、妾はエルフじゃと思っておったのじゃがハイエルフ_エルフの純血_所謂、上位種じゃ それであることが分かっての」
「エルフの国に居るときも分からなかったのか?」
「調べたこと無かったからの。今思えばエルフ族は無頓着な感じじゃったの」
「なるほどな」
「その時点ではの公爵位を貰う事になっておったのじゃ」
「えっ?国母じゃないんだ」
「そうじゃ。まだ公爵であればとやかくは言わんかったのじゃが
それでの、まだ何か無いかという事での色々と調べていくとな」
「いくと?」
「なんとハイエルフの中でも滅んだと言われておったエンシェントエルフじゃったのじゃ」
「エンシェントエルフ?」
「そうじゃ
さっきエルフの中の純血がハイエルフと言ったじゃろ」
「あぁ…ってまさか!」
「そのまさかじゃ!
ハイエルフの中の純血がエンシェントエルフらしいのじゃ
しかもエンシェントエルフというのはの純血エルフ族の王族でありこの国…ニサラ王国の王族の中にも流れる血であるそうじゃ」
「それで国母ということは結婚とかしてたり?」
「結婚なんぞしてないぞ!妾を何歳じゃと思っとる!」
「えっ?二百くらい?」
「そんなわけ…あるかのぅ…」
「年だけをみたら…」
「言いたい事は分かるから言わなくて良いぞ
だいたい、エンシェントエルフからするとな 二百なぞまだひよっこじゃぞ」
「?」
「分からぬか?エンシェントエルフはの大体、千から三千年生きるのじゃぞ
人間換算でまだ15から20歳くらいじゃぞ」
「マジか!俺と同じか年下じゃん」
「そうじゃ!じゃから年寄りなぞと口がさけても言うでないぞ?」
「あぁ大丈夫だ 言わない」
「うむ それで良い」
「質問良いか?」
「突然じゃの。なんじゃ?」
「なんでまだ若いのに口調が『じゃ』とかなんだ?」
「痛いところをつくの
昔の、まだグラマスになって直ぐのことなんじゃが
当時はまだ若い口調じゃった その影響もあってか頭のオカシイ冒険者共に決闘を申し込まれることが頻繁にあったのじゃ
そいつらの言う事は全てロリッコにはついていけん ということじゃった
その当時は百歳くらいじゃってのまだ、血気盛んじゃったんじゃがそれで決闘が多過ぎて冒険者不足になっておった
それでのある時それを回避しようと、お年寄り口調で話してみるとの長寿族だと言う事が冒険者共に伝わったみたいでの決闘が収まったのじゃ」
「なるほどな。決闘を避けるためのその口調なのか」
「まぁそうじゃの
最も今はこっちに慣れたという事の方が大きいがの」
「……」
「最後はエルフの国の族長_いわゆる王となった経緯なのじゃ」
「ようやく最後か 長かったな」
「お主が聞いたから丁寧に話したのじゃぞ!」
「ん?そういえばそうだったな」
「忘れておったのか!…まぁ良いわ
まず、国母になっての本当は公務をしないといけないのじゃが我が儘をいうてこの城に引きこもっておったのじゃ」
「なんで?」
「その当時はな まだ妾がこの国に居ることや国母になっていること等がエルフへ伝わってなかったのでな バレないのならそれにこしたことはないと思ったのじゃ」
「?」
「分からんかの?妾はハイエルフでエンシェントエルフなんじゃよ?
何もしとうなかっても族長にされることが明白じゃのに自分から居場所を教えるかえ?」
「教えないな」
「そうじゃ!それなのに先代国王ときたら…」
「ばらしたのか?」
「そうじゃ それもよりにもよって妾の両親に直接伝えたらしいのじゃ
それで逃げ道がなくなっての、なくなく族長になったのじゃ」
「なるほど。でもエルフの国へ帰らなくて良いのか?」
「今のところは大丈夫じゃ」
「今のところ?」
「今はエルフ族とニサラ王国が同盟関係になっておるから大丈夫なのじゃが、妾は国母じゃが実権は持ってないでの もし代替わりなどして妾に火の粉が降りかかるのであれば直ぐに敵対となってしまうのじゃ」
「怖い話だな」
「まぁそうかの
さて長い話は終わりじゃ
妾の正体が分かったところでじゃな 妾のステータスを見てみぬか?」
「ん?前に見たと思うが」
「良いから見てみい」
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エレノーラ(ノラ)
物理力 110 (90)
魔力 200 (120)
耐久性 110 (90)
運 50 (20)
・魔法
古代魔法
空間魔法
・スキル
隠蔽
鑑定
・称号
先祖帰り
強者
エンシェントエルフ
・職業
国母
グラマス
公爵
魔術師長
レンカの師匠
─────────
「は?なにこれ」
「どうじゃ!すごいじゃろ?職業のところにお主の師匠ということがしっかり書かれておるのじゃ♪」
「いや…そっち?」
「そっちとはなんじゃ?」
「俺が驚いているのは前に見た時と全然中身が違うからなんだが」
「そういうことかの 妾が秘密を話したから変わっただけじゃ」
「あの、この ( ) のところのは?」
「ん?これはの、スキルの隠蔽の効果での 妾の正体を知らぬ限りは ( ) の方と許可した範囲しか見えないのじゃ」
「あぁなるほど……って それよりノラってノラじゃないのか!?」
「ノラじゃよ?」
「いやそういう意味じゃねぇよ これ!名前が違うだろ?」
「妾の名前じゃな 『エレノーラ』を略して『ノラ』じゃよ」
「エレノーラって呼んだ方が良いか?」
「ノラで良いのじゃ!いまさらじゃ………(それにいまさら仲良くなったのに距離が開く感じで嫌なのじゃ)……」
「ん?最後の方、聞こえんかったぞ?」
「なにもないのじゃ!
もう良いからギルドに帰るのじゃ」