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僕が君に恋した話  作者: 有理
3/6

僕が決意した日

僕がもう一度、君にに出会えたのは、

卒業から三年後のことだった。


町のちいさな古本屋さんで、

君の方から僕に声をかけてきたね。


「やっぱりだ!どっかで聞いたことある声だと思った」

店長のおじさんと話をしている声を聞いていたらしい。


僕は久しぶりに君に会えて

少し照れくさくなって思うように言葉が出てこなかった。


「おお」

短く挨拶すると僕は、

本を探している振りをした。

正直文字なんて見えてなかった。


君もいつもと違って、

少しテンションがあがっているように見えた。


「元気だった?」

君にそう聞かれ、僕は思い出した。


「ああ、そそ!俺、今度テレビでるんだ」

「え!ホント?!何に出るの~?見たい~」

僕が見ていた本棚の反対側にいたはずの君が、

いつの間にか僕のすぐ隣まできていた。


僕より頭一つ分くらい背が低い君は、

丁度、僕の胸の高さに顔があった。


近い。


手を伸ばせば抱き寄せれる距離だった。


僕の顔が自然と熱くなるのがわかった。


僕は赤くなってしまった顔がばれないように、

君と反対側の本棚へ逃げた。


「素人が出る歌番組なんだけどね。

俺はその人の後ろで踊るんだ」

話を続ける僕の横を、

君はちょこちょことついてくる。


君って、こんなに人なつっこい子だったっけ?


それとも僕が変に意識しすぎてるだけなんだろうか?


「バックダンサーってこと?すごいね~」

「ああ、うん。よかったら見てみて」


僕はもうこれ以上、

君からは逃げられない気がして、

少しかがみながら、君の顔を横から覗き込んで微笑んでみせた。


突然そんなことをされたせいか、

僕の赤い顔が君に伝染でもしたのか、

今度は君が頬を赤く染めたように見えた。


「あ、うん。録画するね」

うつむいて、照れている君が可愛かった。


「じゃあ、またな」

君とまた会えたことに満足して、

僕は大切なことを忘れた。


君をデートに誘うこと。


僕は君の連絡先さえも知らなかったのに。



そして、

次に君に会えるはずだった二十歳の成人式。

間が悪い僕はインフルエンザになって、

行くことが出来なかったんだ。




演劇の世界を出来る限りやってみて、

自分の力に限界を感じていたそんな時。


僕の親友が「中学の同窓会やろうぜ」

っと言い出した。


僕らの歳は、もうすぐ三十路だった。



これが君に会えるかもしれない最後のチャンスだと思った。


僕はあれからちらほら、彼女は出来たものの、

君のことがどこか頭の片隅に、いつまでも気になって残っていた。


僕の親友は結婚して、子供も居たけど、

僕は気がついたら、彼女も居らず一人になっていた。



そして同窓会。

君は現れた。



君は僕の親友と楽しそうに話をし、

一緒に写真を撮っていた。


僕はその様子をはたから見ながら、

君はまだ僕の親友のことを好きなのだろうかと思った。



「ママ!」

小さな子供が君の事をそう呼んだ。


歩き出したばかりであろうその小さな男の子は、

君に抱き上げられ嬉しそうに笑った。



僕は一人苦笑いした。


そうか、

僕が後ろばかり振り返ってる間に、

君はちゃんと前へ歩き出していたんだね。



僕の中で何かが壊れ、ようやく新しい何かが動き出した。


『演劇はもうやめよう』


この日、僕の決意は固まった。



でも、女々しい僕はこれから先も、

辛い時に君の事を思い出し、振り返るかもしれない。


君と交わした言葉一つ一つから勇気や元気をもらうため。



なぁ~、それぐらいは許してくれよ?


後悔じゃなく、前に、未来に進むため……だからさ。

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