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プロローグ
よろしくお願いします。
創世記――世界は混沌としていた。大地は血塗られ。人々は彷徨い慟哭する。魔物は世界を蹂躙し全ては荒れ果てていた。
嘆いた女神は一人の勇者を遣わした。輝く様な金。それは太陽の色と酷似し、人々に勇気と希望をともたらした――。
「……でも、ゆうしゃさまはだれがすくうの?」
少女はぱたんと本を閉じて母親の黒い目を見つめた。そんな事を問われるとは思ってみなかった母親は困惑したように眉を跳ねあげたが軽く微笑んだ。
「みんなが幸せならいいのよ――勇者さまなのだから」
納得いかないような、納得いくようなよく分からない答えに少女は首を傾げるともう寝なさいとベットに促される。
母親が編んでくれた三つ編みを外すとフワフワと髪が波打ってお姫様みたい。そうクシャリと笑ってからベッドにもぐりこんだ。
「おやすみなさい」
「いい子で」
少女は目を閉じる。
それがすべての始まりと終わりを告げていた。