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乾坤一擲パイルバンカー♂  作者: 北瀬野ゆなき
【第二章】古の魔人編
33/43

12:作戦会議

「いたか!?」

『いや……!』

「駄目です、見付かりません!」


 別れて先に宿に戻った筈にも関わらず姿の見えないエリザを探すラスティス達。

 人手が足りないということでエルヴィもラスティスと離れて行動出来る最大の距離まで別行動してまで探したが、一向に見付けることは出来なかった。


 暫く探し回って広場に集合した三人はお互いに結果を報告し合い、落胆する。


『この村はそれほど広い村ではない。これだけ探して見付からないのは不自然だな』

「それって……」

「取り敢えず、一度宿の部屋に戻らないか? もしかすると、入れ違いでエリザが戻ってきているかも知れない」

「そう、ですね」


 ラスティスの提案で、一同は一度宿の部屋に戻ることにした。

 宿の部屋はラスティスとエルヴィで一部屋、フィオニーとエリザが一部屋だ。しかし、就寝時以外はお互いの部屋を結構行き来していたため、エリザがどちらの部屋に居るか分からない。そのため、ラスティス達はそれぞれ自分が使っている部屋を見てみることにした。


「エリザ、居るか?」

『どうやら、おらんようだな』


 ラスティスが自分達が泊まっている部屋のドアを開けて覗き込みながら問い掛ける。既に陽が落ちて暗くなり掛けているが、見えない程ではない。

 しかし、そこには人影は無かった。気配も感じないため部屋の何処かに隠れているということもないだろう。


「ん?」

『どうした?』


 部屋の中を見回していたラスティスだが、ふと気になるものを見付け目を留めた。それは、部屋に一つだけあるテーブルの上に置かれていた一枚の紙だった。

 勿論、彼らが出掛ける前には存在しなかったものだ。だとすれば、エリザが戻ってきて置いた可能性もある。


 ラスティスはテーブルに近付いて紙片を手に取り覗き込む。そこには見慣れぬ筆跡で文章が綴られていた。どうやら、これは彼らに宛てられた手紙のようだ。

 手紙の内容に目を通したラスティスの表情が険しくなってゆく。


「これは……」

「駄目です、ラスティスさん。私達の部屋にも居ません……ラスティスさん?」


 丁度その時、もう片方の部屋を確認していたフィオニーがラスティス達の部屋の方にやってきた。

 フィオニーは向こうの部屋にもエリザの姿が無いことを告げるが、ラスティスのただならぬ様子に気付いて怪訝そうな声を上げる。


「二人とも、これを見てくれ」

「あ、はい。なっ!?」

『ふむ……これはっ!?』


 テーブルに置かれた手紙を覗き込んだ二人が驚愕する。

 そこに書かれていたのは、先日彼らの前に現れた魔人モルドーラによる、ラスティス宛ての挑戦状だった。しかも、彼らが探していたエリザを攫ったことも書かれている。

 ラスティスやフィオニーは兎も角、エルヴィはその文章をそのまま信じるような迂闊な真似はしなかったが、いくら探してもエリザが見付からない現状を考えれば信憑性は高かった。何故なら、少なくともエリザが見付からなくて探していることを承知の上でなければ、そのような文章を書くことは不可能だからだ。


 エリザを攫ったモルドーラは、ラスティスにとある場所まで来るように告げている。ご丁寧に、手紙の下には簡単な地図まで描かれていた。

 地図に×印が描かれているのは、先日訪れた森の外れの辺りだ。


「返してほしければこの場所まで来い、か」

『これは間違いなく罠だぞ?』

「分かってるさ」


 エルヴィが懸念を口にするが、ラスティスはその事実自体は肯定しながらも行く気まんまんのようだ。勿論、問うまでも無く分かっていたことではあるが。

 エルヴィはチラリとフィオニーの方へと視線を向ける。すると、それに気付いたフィオニーは力強く頷いてみせた。


「勿論、私も行くよ。エリザのこと、放っておけないし」


 元より、相棒が攫われたとなれば黙って引き下がる選択肢など彼女にはなかった。拳を握るようにして主張するフィオニーの姿にエルヴィはやれやれと嘆息するが、その溜息はすぐにニヤリという不敵な笑いに変わった。


『あの魔人は、我の存在を知りながら喧嘩を売ってきたのだからな。ここで逃げては最強にして最古の武具の名折れだろう』


 何だかんだ言いながらも、エルヴィ自身とてこのまま尻尾を巻いて逃げるという考えなど皆無だった。モルドーラからの手紙を握り潰しながら、エルヴィはこの場に居ない魔人に対して逆に宣戦を布告する。


『魔人が如何なる卑劣な罠を以って待ち構えていようと、パイルバンカーの一撃で真正面から粉砕してくれよう!』


 三人はエリザの救出のため、敢えて罠の恐れが高いモルドーラからの挑戦状に乗ることにした。




 ♂  ♂  ♂




『とはいえ、だ』

「ぐぇっ!?」


 今すぐにでも手紙の地図が示す場所に飛び出していきそうだったフィオニーの髪を掴んで止めたエルヴィは、彼女とラスティスに椅子に座るように目で指示し、自分はベッドの上に座った。

 焦燥を浮かべながらも、二人は素直に椅子に座ってエルヴィの方に向き直る。


『敵が我の存在を知りながら待ち構えている以上、何らかの対策を考えているのは間違いないだろう』

「パイルバンカー対策ってことか?」

『そういうことだ。わざわざエリザを攫っておびき寄せようとしていることを考えても、間違いない』


 エルヴィの言う通り、もしもそのまま勝つ自信があるのなら真っ向から襲撃するなりすれば済んだ話だ。それをわざわざ相手の仲間を攫って呼び出そうとしている以上は、「そうしないと採れない戦術」を画策しているということなのだろう。


「成程、パイルバンカーの弱点を突くための何らかの仕掛けなんかが待ち構えているってわけか」

「パイルバンカーの弱点、ですか? ええと、どれのことでしょう?」

『ぐぬ……』


 見付からない、というよりは心当たりが多過ぎてどれだか分からないと言ったフィオニーの口振りに、エルヴィの表情が悔しげに歪む。


 実際、パイルバンカーは弱点が多い。弱点だらけだと言ってもいい。

 単発で連射が利かないし、超接近戦でしか使えない。重くて嵩張るから取り回しが困難だし、五月蠅いし、威力の調節も出来ない。


「……あ」

「え? あ……」

『どーせどーせ……』


 ラスティスとフィオニーが思い付くパイルバンカーの弱点を挙げていくと、気付いた時にはエルヴィはベッドの上で膨れっ面で不貞腐れてしまっていた。目には涙すら浮かんでいる。

 寄ってたかって自分の悪口を言われているのも同然なので、それも無理がない。


「え、ええと……それで、どんな対策を採ってくると思うんだ?」


 誤魔化すようにラスティスが問い掛けると、エルヴィは目元の涙を拭って答えた。


『考えられるとしたら、数で攻めてくるか遠距離からの攻撃で来るといったところだな』

「成程」


 エルヴィの回答に、ラスティスは納得の声を上げる。

 連射が効かないパイルバンカーは複数の相手に攻められると苦しい状況に追い込まれるし、接近戦でしか使えないので遠距離からつるべ打ちにされたら手も足も出ない。

 こちらがやられたら嫌だと思う対策であり、敵からすれば採らない理由が無い。


「で、そんな対策を打ってきたら、こっちはどうする?」

『…………さぁ?』

「おいおい」


 対策については想像出来たエルヴィだが、更にその対策をと問われるとノープランだった。

 しかし、これは仕方ない部分もある。

 エリザが攫われてしまったため、現在のパーティ構成はあまりにも前衛に偏っているのだ。

 数で攻められたり遠距離から攻撃された時に有効な力を発揮する魔法使いが不在なため、そう言った場合に対抗する手段が殆ど残っていない。


『ま、まぁ、そんな策を敵が打ってくると分かっているだけでも心構えが出来るからな。無駄にはならんだろう』

「そりゃそうだけど……」

「結局のところ、気合いで乗り切るしかないってことですか……」


 無策を誤魔化そうと無理矢理に纏めたエルヴィに嘆息しながら、ラスティス達はその後何点か行動を相談し合い、翌日に備えて眠ることにした。

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