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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
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第陸話 【1】 黒焔の一撃

 黒いオーラを体から放出し、呪術を乱発している美亜ちゃん。だけど、第二地獄の管理者無雲には、一切効いていません。すり抜けていますからね。

 そんな中、美亜ちゃんは負のエネルギーを操りきれずに、呪いの副作用を受けてしまっています。何とかしないといけないのに……。


「う~僕のバカ!」


 慌てて美亜ちゃんの元に向かおうとしたのが悪かったです。根っこに引っかかって転んでしまい、そのまま生えてくる木々に捕まっちゃいました。


「何やってんだ、バーーうぉっ?!」


「酒呑童子さんもですよ……」


 拳の風圧で僕を助けようとしたんでしょうけど、結局足元から生えてきた木々に捕まって、酒吞童子さんまで宙ぶらりんになっています。皆も皆で、避けるのに精一杯。美亜ちゃん……なんて事をしてくれたんですか。


「この呪術……私には効かないが、私の能力を利用したのは気に入りません。先にこの子に罰を与えましょう」


「させません!! 黒焔業火狐火こくえんごうかきつねび!」


「むっ?!」


 大樹海の中で、こんな大きな火を出したくはなかったけれど、もう仕方ないです。このまま美亜ちゃんが殺されてしまうより、遙かにマシですから。それに炎なら、僕でも消す方法がありますからね。

 そして、僕の出した業火は、そのまま木々を燃やしていき、樹海を炎で埋め尽くしていきます。それと、僕が妖術を発動した瞬間に、玄葉さんが玄武の盾を展開してくれていて、それで他の皆を炎から守ってくれています。


「つ……!? くそ……」


 あれ? 無雲が熱がっているような。えっ? すり抜けるんだから、熱くらいーーって、そうか! 僕は凄い勘違いをしていました。

 体がすり抜けるから、カナちゃんと同じ霊体だと思っちゃっていました。でも、違ったんだ。こいつには実体があります!


「なる程。物理攻撃だけは効かないんですね」


 それにしても、鬼だからといって、皆熱さに強いわけではないのですね。管理している地獄の場所にもよるのかな?


「ふん。それでも私を倒す事など……」


「出来ます!」


「なっーー?!」


 僕は燃えさかる炎をすり抜けていき、相手の懐まで一気に向かいました。その後、風の神術で相手を吹き飛ばします。


「神風の禊!!」


 今の僕なら、この神術はそよ風じゃなく、突風になっています。だから、実体があるなら吹き飛ばーーせてはいなかったです。あ、あれ?


「無意味」


「ぎゃふっ?!」


 するといきなり、僕の体の正面に強い衝撃と痛みが走り、そのまま後ろに吹き飛ばされてしまいました。何かで殴られた……見えない金棒ですか。


『椿!』


『くっ! なんなんだあいつは! おい、白狐! 何とかならないのか?!』


『無理だ! 美亜の出してくる木々と、それに燃え移って次々と炎熱地獄にしていく椿の炎で、全く身動きが取れん!』


 いや、大丈夫ですよ。白狐さん黒狐さん。炎は何とかなりますから。だから炎を出したんですよ。


「くっ……!!」


 相手の攻撃で吹き飛んでいた僕は、尻尾を硬くして地面に突き刺し、何とかブレーキをかけて止まります。

 それにしても、見えない金棒って厄介ですね。手に握っている様には見えないし、宙に浮いているのかな? 見えないから分からないや。


「いっつつ……」


『椿ちゃん、大丈夫?』


「ありがとう、カナちゃん。皆は?」


『とりあえず、椿ちゃんの炎は盾で防がれているし、木にも捕まらないようにと、皆頑張って避けているよ。美亜ちゃんの方は、相変わらず黒いオーラを出したままで、威嚇中だね』


 ということは、美亜ちゃんは動いていないのですね。もしかして、殴られたダメージで? だとしたら、早く何とかしてあげないと。

 その為には、こいつを倒さないといけません。だけどさっきみたいに、風で吹き飛ばそうとしても無理だったんです。いったい、どんな体をしているんですか?


『椿ちゃん……あのね。物質がすり抜けるってさ、どういう原理なの?』


 流石のカナちゃんも、これには不思議がっています。

 僕も良く分からないけれど、難しい学問とかで、そういう可能性を研究している人がいるかも知れません。その人に聞いたらーーって、何を考えているんでしょうね、僕は。それどころじゃないし、そんな暇もないよ。


 そもそも、せいぜい分かるのは物理学とかで、分子とか原子くらいしか……。


「あっ! そうか!!」


 分子とかの事を考えていたら、ある事が頭に浮かびました。何かの漫画で読んだ事がありましたよ。物質がすり抜ける可能性についての事をね。

 そうか、考え方は当たっていましたね。ただもうちょっとだけ、攻撃を凝縮した方が良かったようです。


「よ~し。上手くいくかは分からないけれど……妖具生成!」


 今の所無雲は、ターゲットを美亜ちゃんから変えていないです。彼女を睨みつけながら、ゆっくりとそっちに向かっていました。美亜ちゃんの攻撃を警戒しているみたいです。急がないと、手遅れになっちゃうよ。


 僕は急いで動き、その手に妖術で出したけん玉を握り締めると、更にもう一つ妖術を発動します。


「神風の禊!」


 また同じ妖術だけど、今度は違いますよ。それをけん玉の先に集めていますからね。つまり、一点集中です。これで、すり抜けようとする体ごと吹き飛ばします。


「たぁっ!!」


 そして、繋がっている紐で先の玉を振り回し、そのまま勢いを付けて無雲に放ちます。


「んっ? 何度も言っただろう。それは無意味だ。何度やってーーぐっ!?」


 よし、手応えがありました。それに、無雲が苦痛の表情を浮かべています。


「ぎゃんっ!!」


 と思ったら、僕の頭にも痛みと衝撃が走り、思い切り地面に叩きつけられてしまいました。見えない金棒が厄介すぎます。


「ぬぅ……くっ。やってくれますね」


 だけど、無雲の方も後ろに下がっていましたよ。大丈夫、これは効いています。僕の考えは合っている。


 こいつは、自分の体を構成している分子を動かし、他の物体の分子と、自分の体の分子をすり抜けさせていたんです。もちろん、肉体に影響が出ないレベルでだと思う。でもそんなの、ナノレベルの事なので、確認のしようが無いですね。

 だけどさっき、僕は風をけん玉に集めて、その分子ごと吹き飛ばそうとしました。突風のままだと、分子は飛ばせないからね。

 要するに、けん玉の衝撃も合わせて、空気圧で吹き飛ばしたような感じです。その結果、相手を吹き飛ばす事が出来たので、この考えは合っていると思います。


 その後僕は、その場で直ぐに起き上がり、右腕に付けた火車輪を展開します。当然、僕仕様の炎の輪です。それから、周りの黒焔をそれに集めていきます。


「自らの黒焔を木々で燃やして拡大し、その威力を高めるとは……」


 体中が痛いけれど、無雲がこっちを警戒している今がチャンスです。


「ぬぅっ? か、体が……! こ、これは!?」


「影の操。僕を甘く見ないで下さい!」


 今回は、自分の影の腕で捕まえていません。無雲の影そのもので、足下からゆっくりと、全身を包むようにして捕まえましたからね。しかも、その体の分子ごとです。

 これで、僕の攻撃をすり抜ける事は出来ませんよ。相手の体の分子も、簡単には動けなくしていますから。


 そして僕は、黒焔の輪を使ってブーストをかけ、尚かつ腕にも黒焔を纏わせ、無雲のお腹に叩き込みます。


「はぁぁ!! 黒焔狐狼拳(こくえんころうけん)!!」


「ぬぐぅぉぉおお!!」


 使った炎の量が凄かったから、流石の無雲も、叫び声を上げながら吹き飛びました。

 焼け焦げた木々をも薙ぎ倒し、その姿が見えなくなっちゃったよ。これはちょっと、やり過ぎたかな? それと、これで倒せたのかな? ちょっと不安です。いや、それよりも美亜ちゃんです。


「フウゥゥ……!!」


 まだ威嚇しているし……。

 しかもその度に、新たな木々が生えてきて、せっかく樹海を綺麗に焼いたのに、また復活しそうになっています。


「美亜ちゃん、美亜ちゃん!! 落ち着いて下さい!」


「フミャァァア!」


「いっ!」


 まさか引っ掻いてくるなんて……完全に我を失っていますよ。


『椿! とにかくここから離れるぞ。まだ怨嗟の声がある。美亜は恐らく、ここの負のエネルギーにあてられてしまっているんだ』


 すると、黒狐さんがそう言いながら近付いてきました。その後ろには、皆も居ます。無事で良かった。


 そうなると後は、荒れている美亜ちゃんを連れて、この先に進まないといけないですね。


「ごめんなさい、美亜ちゃん。神風の小槌(かみかぜのしょうつい)


「ふみゃぐっ?!」


 強力な神術は、美亜ちゃんの体をバラバラにしちゃいそうで怖いから、威力を抑えた神術を使いました。

 それでも僕は、小さなトンカチをイメージしたのに……これ、ハンマーですよね? 風がハンマーの形をしていましたよ。

 美亜ちゃん、大丈夫かな? 気絶させて、しかも同時に浄化させるのには、これしか無かったんです。


「あっ、息しています。良かった……」


『椿よ。もしかしてもなく、あれでもかなり威力を抑えたつもりか?』


「はい、つもりであれです……やっぱり、全然制御出来ていないです」


 僕自身の神妖の妖気、何とか制御する方法は無いのかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] つってもどこのメーカーのふりかけか知らないんですがねw
2021/12/13 14:48 退会済み
管理
[一言] 理論としては原子の99.9%がスカスカ(バスケットボールを置いてそこから100メートル離れたところにパチンコ玉を置いたのが原子)だから上手いこと噛み合えば0.1%が隙間を通り抜けて物質を貫通…
2021/12/13 14:17 退会済み
管理
[一言] なるほど。机を手で叩いた時宇宙が一個できる確率で叩いた手が通り抜けるのを人為的(鬼為的?)再現していると
2021/12/13 11:26 退会済み
管理
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