表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
364/500

第拾伍話 【1】 旧校舎の探索

 やっと僕達は、旧校舎の中に入る事が出来きました。今居る場所は、1階の廊下。出入り口の近くですね。


 それにしても、あの霧が空間と空間を繋げる道だったなんて。それでも説明はして欲しかったですよ。いきなり突き落とすなんて……後で文句を言っておきましょう。


『とりあえず、皆無事か?』


「僕の頭は無事じゃないです……」


 皆が僕の頭の上に落ちてきましたからね。コブが沢山出来ちゃっています。それを白狐さんが優しく撫でてくれています。

 一応、治癒の妖術は使えるみたいで、それを使ってくれているけれど、妖気は大丈夫なのでしょうか?

 妖怪食で多少回復はしていても、妖術を1・2回使う程度しか回復しないみたいで、僕は不安なんです。


『全く。文句の1つでも言ってやらんとな。椿の可愛い頭の形が変わったらどうする』


 あの、白狐さん。さっきから両手で、僕の頭を撫で回す様にしていたのは、頭の形を確認していたのですか?

 別に、これくらいで変わったりはしませんよ。だからさ、ついでに耳まで触らないで下さい。くすぐったいですよ。


「それじゃ、半妖の人達の妖気を探りますね。そうすれば、どこに居るか直ぐに分かりますから」


 僕の妖気の感知能力は、こういう時に役立つんですーーって、あれ? おかしいですね。妖気が一切感じられないんだけど……。


『むっ? このタバコの匂い……まさか、捕まった三間坂の妖具の力で、妖気を感知出来ない様にしているのか?!』


「そんな!」


 そうだとしたら、1つ1つ教室を調べないといけないじゃないですか。だけどさっきの様に、空間を歪められていたら、今度はそう簡単には戻って来られないかも知れません。


 それに他の罠とかで、更にピンチになったりする場合もあります。だから、僕の力で感知したかったのです。


「椿様。こうなってはもう、1つ1つ調べるしか……」


「でも危険です。何があるか分からないんですよ?」


 龍花さんが、ガッカリして項垂れる僕に向かってそう言ってきます。やっぱり、危険は承知でやるしか無いんでしょうか?

 僕がそう言っても、そんな事は分かっているという目をしています。しかも、他の4人もです。


「椿様。その為に、私達が居るのですよ。私の盾で守りながら、全員を4人で囲い、何かあったら私達が盾になります」


「玄葉さん、それだと、あなた達が危ないです」


「四神の力を持った私達を、甘く見ないで下さい」


 僕の言葉に、虎羽さんが自信満々で返してきました。

 だけどね、相手は未知数の力を持っているから、出来るだけ危険な事はしたくないのです。だけど……。


『椿よ。時にはこういう事もやらなければならないんだ。人を気遣っていては、任務を達成出来ないぞ』


「うっ……だけど……」


 そんな事は、修行中に酒呑童子さんから口うるさく言われています。

 それでも、これだけは譲れません。僕は皆を守る為に、強くなっているんです。それなのに、その守りたい人達に危険な事をさせるくらいなら、僕が進んで部屋を調べて行きます!


「それなら……僕が調べて行きます!」


『何?! 椿、待て! ヤケになるな!!』


 黒狐さんが制止して来るけれど、そんなの知りません。

 危ない任務をしていても、それでも僕は、極力皆を危険な目に合わせたくはないんです!


 そして僕は、近くの教室の扉を開けて、その中を確認します。

 すると、扉を開けた瞬間、僕の頭の上に金だらいが落ちて来ました。コント番組じゃないんですから、これはちょっと……というか、また僕の頭に。


「美亜ちゃん。これって、呪術?」


「安心しなさい。正真正銘、手作りの罠よ」


「ですよね……」


 呪術にしてはしょうも無いですからね。

 悪意はあるのかも知れないけれど、緊張して損した気がします。だけどもしかしたら、この教室がマシだっただけなのかも知れません。


「姉さん姉さん! こっちの教室。中央に何かを煮たお鍋が置いてありますよ?」


「わぁ!! 楓ちゃん! 勝手に開けないで!」


 気が付いたら楓ちゃんが、反対側の教室の扉を開けていました。

 勝手な事をしないでくれませんか? そこでいきなり爆発なんかしたりしていたら、どうしていたんですか?!


「ね、姉さん……自分、何故だか分からないけれど、あれ、食べたいっす……」


「駄目です」


「ひっ!! ね、姉さん。尻尾は……」


 あれ? そういえば楓ちゃんの尻尾って、何気に触った事がなかったです。僕以上にフサフサじゃないですか。狸の尻尾って、凄いですね。


「姉さん~自分も尻尾が弱いんっすよ……は、離して下さいっす~」


「そっか。それじゃあ、このまま教室から離れますよ」


「あぁぁぁ……!! そんな~あれを、あれを食べさせてくれっす~!!」


 もう楓ちゃんの目の色が変わっています。

 尻尾を引っ張って引きずっていても、まだそんな事を言いますか。


「あの、美亜ちゃん……」


「う~ん。これも呪術じゃないわね……何これ」


 でも、教室の扉を開いた瞬間、楓ちゃんが中央のお鍋に執着し出したから、多分扉に何か仕掛けているんでしょうね。


 それを仕掛けたのは、八坂さん? それとも華陽?

 このレパートリーは、おふざけが大好きな八坂さんかな? あのお鍋の中も、コントで良く使われている物が入っているはずですよね。


「う~ん。そうなると、扉を開けずに調べないといけませんか……」


『しかし、そんな事が出来るのか?』


「扉に手を触れなければ良いのならーー玩具生成!」


 僕はそう言って、妖術で固いメンコを作ると、そのまま次の教室の扉に叩きつけます。次の瞬間、そのメンコが衝撃波を放ち、扉を吹き飛ばしました。

 これは普通のメンコではなく、叩きつけたら衝撃波が出るようにしておきました。


「さてと、中は……?」


 ガランとした教室の中に、和傘と……玉? あっ、何だろう……あれを、あれを回したい。


『むっ? 椿、いかん!!』


「きゃぅ?! 白狐さん、止めないで下さい! あれを、あれを回したいんです! そして、いつも以上にーー」


『それ以上は言うなぁ!!』


 それでも、僕の欲求は止まらないんですよ!

 例え白狐さんに尻尾を掴まれて、思い切り引っ張られていても、黒狐さんに怒鳴られても、あれを回したい!!


「お鍋……お鍋を!」


『いかん! 誰か楓を止めていろ!』


「ちょっと、楓。ストップストップ」


「雪姉さん。止めないで下さいっす!」


 いつの間にか楓ちゃんも、お鍋の方に行こうとしているけれど、今なら気持ちが分かる気がするよ。とにかくやりたいんですよね、アレを。


『くっ、何とかならないのか! このままでは、コンビ名が「狐と狸」なんて言って、お茶の間に出続け、化かし合いをしなければならなくなるぞ!』


『何を上手い事言っているんじゃ、黒狐!!』


 するとそんな時、僕の耳に龍花さんの声が聞こえて来ました。


「椿様。少し失礼」


「へっ? いたぁっ!! って、あれ? 僕はいったい?」


 何だか、頭に強い衝撃を受けたと思ったら、あれだけ固執していた、教室の中の和傘への執着が無くなりました。

 いったい、何をしたんですか? ちょっとだけ頭が痛いし、同時に凄く清々しい音が鳴り響きましたよ。


「んっんぅ。まぁ、定番の物を使っただけです」


 龍花さんはわざとらしく咳払いをして、何か誤魔化しているけれど、そんなに知られたくない物なの?


 ただその後に、僕の後ろで軽快な音が鳴り響き、楓ちゃんが悲鳴を上げていました。

 えっと……紙を何枚にも折りたたんで、それを叩きつけた様な音ですね。


 もう察してしまいました。

 アレですか……昔ながらのこういう事に対抗するには、アレしかないんですね。ベタベタですけど、かなり有効みたいです。


 ずっと龍花さん達が、教室の様子を伺ったり、僕達の様子を見て難しい顔をしていたけれど、僕と楓ちゃんに起こった症状を直す為に、これを考えてくれていたのですね。ありがとうございます。


 だけど、何回もは勘弁ですよ。


「さて。お次は誰ですか?」


 あの、龍花さん……もしかしてだけど、ソレ気に入ったんですか? 表情は変わらないけれど、何だか嬉しそうに見えますよ?


「えっと、僕と楓ちゃんはやったから、次はーー」


 あっ、待って下さい! 皆凄い勢いで後ろに下がらないで下さいよ! それは卑怯です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ