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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
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第拾肆話 【2】 一息に飛び降りろ

 その後僕達は、ここのダルマみたいな妖怪さんに案内され、この屋敷の屋上に戻って来ました。というか、割と簡単に外に出られましたよ。

 僕が落ちて来たあの場所は、どうやら悪霊さん達が出入りする場所だったらしく、色々と細工をしていて、幻覚とかが見えるようにされていたようです。


 そんな中を、良く一発で厨房に辿り着けたなと、凄く感心されちゃったけれど、良い匂いに吊られて辿り着いたなんて言えません。だって、僕が食いしん坊みたいになっちゃうもん。


 それから、屋敷の屋上に出て来た僕の姿を確認したのか、あの黒い大蛇がまた迫って来ます。


「さてと。何があるか分からないし、金狐の状態にはならずに倒したいですね。それならーー玩具生成!」


 そう言うと僕は、自分の妖術でけん玉を出します。もちろん、普通のけん玉じゃないですよ。黒い炎の塊を、けん玉に付いている玉の代わりにしています。


「そしてこれを……っと、たぁっ!!」


 そして僕は、けん玉の持ち手をしっかりと握り締め、その黒い炎の玉をクルクルと縦に回し、勢いを付けた後に、黒大蛇目がけて飛ばします。紐は自由に調整出来るので、便利な飛び道具という訳なのです。


「シャァァア!!」


 まぁ、こんなのでダメージは与えられ無いし、弾かれてしまいましたね。だけど……。


「よっ……! ほっ!」


 そこは上手くけん玉の台を動かし、長い紐を使って玉を動かせば、また攻撃する事が出来る。だけど、今度は攻撃はしません。黒大蛇の口元、その周りを回転させます。つまり。


「キ?! シィィ……!!」


 けん玉の紐で、蛇の口を縛り付けたのです。それでも威嚇音が出るなんて、蛇って怖いですね。しかもこの蛇は、まだ僕達に向かって来ます。他にも攻撃方法があるからね。

 そう、僕達を締め殺そうとして来ています。だけど、僕はそれを待っていました。


「甘いです。狐狼拳!!」


「シ……ギィィィイ!!」


 そのまま突進して来た黒大蛇の顔面に、火車輪で加速させた僕の拳を叩き込みます。

 すると黒大蛇は、変な音を発した後に、霧で全く見えない下に向かって倒れて行き、そのまま姿を消しました。


 あの……地面に倒れた音がしないんですけど。


「…………」


「…………」


 そして皆も、無言で下を眺めています。

 そうですよね。さっきので、地面が無いかも知れないと、皆思っちゃっているんでしょう。


 だけどこれは、また空間が別の所に繋がっているという事かも知れないです。

 そう思うと、皆よく飛び降りたよね。一か八かの賭けが当たっただけだったんだ。もう2度として欲しくないけど。


 実は黒大蛇は、僕の舞いで何とかしたかったんだけれど、そんな暇が無さそうだったから、力ずくで気絶させました。

 駄目だったかな……? そのまま地面の無い空間に、真っ逆さまに落ちて行っているんじゃないのですか?


「それで、誰が行くの?」


 そんな沈黙を破ったのは、美亜ちゃんでした。

 流石ですね。堂々としていて、何の気兼ねもせずにそう言ってきましたよ。


「もちろん、高い所が大好きな美亜ちゃんから……」


「嫌よ」


 そうですよね。そして今気付いたけれど、何も旧校舎への道が、霧の下にあるとは限りません。


「とりあえず、下は危険そうなので、他の屋根に飛び移ーー」


 そういえば、他の屋根が無いんですけど……。


 周りには何もなくて、この屋敷の屋根しか無いです。どうしましょうーーと言っても、もうこれは飛び降りるしかないじゃないですか。

 それに、白狐さんと黒狐さんがスマホで色々と探っているけれど、表情は曇ったままで、成果は無いみたいなのです。


「う~む……この霧もしや……」


 すると、ダルマみたいな妖怪さんが、唸り声を上げてそう言うと、何かに気付いたような顔をして、僕に近付いて来ました。何でしょうか?


「やはり、間違い無い。よし、この事は翁に連絡しておく。あとでセンターから、空間を直せる妖怪を送って貰おう。お前達は、その旧校舎とやらに急ぐのだろ? ほれ、今は大丈夫だから飛び降りろ。旧校舎に向かいたいと、強く念じるだけで良い」


「えっ……?」


 するとその妖怪さんが、いきなり僕を突き飛ばしました。


「きゃぁぁぁあ!!」


 この際、悲鳴なんて何でも良いです!

 黒大蛇の巨体が地面に落ちる音がしなかった、この底無しの空間に、僕は落とされてしまいました!


 落とされた瞬間に、皆の悲鳴も聞こえてきたけれど、それよりも、僕はこのままどうなっちゃうの?!


 物凄い落下の速度が体を襲い、あの屋敷の屋根から落ちた時を思い出してしまうけれど、短時間で何回も高い所から落ちるとは思わなかったです。今日の僕はツイていません。


「あぁ……このまま僕は、永遠に落下する運命なんだ。皆ーーごべっ?!」


 するといきなり、目の前に地面が現れて、そのままの速度でその地面に落ちてしまいました。

 だけど、そんなに痛くない。急に落下の速度が減速した? いや、違います。これは単に、それ程高くない所から落ちた感じです。な、なんで……?


 それと、急な出来事だったから、僕は大の字で地面に落ちてしまい、鼻を思い切り強く打ってしまいました。


「う~いたた……って、このボロボロの廊下。ここはまさか、旧ーーぎゃうっ?!」


「いったたた……あ~ビックリした。何よ? これ。何が起きたの?」


 ちょっと待って下さい。

 ボロボロの廊下に、ホコリとカビ臭い臭い。ここが旧校舎の中なんじゃないのかと、そう判断しようとしたら、上から美亜ちゃんが落ちて来ました。それも、僕の頭の上に。首がおかしくなるところでしたよ。


「あら、椿。ごめんなさいね」


「そう思うなら、早くそこから退いて下さい」


 美亜ちゃんのお尻は、あんまり大きくないのですね。ちょっと骨が痛かったけれど、黙っておきます。怒られそうだから。


 だけど、このパターン。まさか他の皆も、上から落ちて来るってオチなんじゃ……。


「美亜ちゃん。早くここから離れないと……」


「えぇ、分かっているわよ」


 僕の上から退いてくれた美亜ちゃんにそう言うと、僕は素早くその場から離れます。だけど……。


「きゃぁぁあ!!」


「えっ? 僕の上から悲鳴? って、ギャフン?!」


 また僕の上から誰かが落ちて来ましたよ! 何で場所を変えたのに、きっちり僕の上に落ちて来るんですか!


「わぅ……び、びっくりした……」


 このフサフサ尻尾は、里子ちゃんですか? そして、また僕の頭の上に……。


「って、椿ちゃん!?」


 だけど、里子ちゃんは直ぐに僕に気付いてくれました。気付いてくれたんだけれど、なかなか退きませんね。嫌な予感がします。


「あぁ……椿ちゃんが、私のお尻を」


「快感に打ち震えないで下さい!」


「きゃぅん!!」


 僕は何もしていませんからね。僕の後頭部の上に乗っかられていたから、何も出来ませんよ。

 とにかく、僕は慌てて起き上がり、里子ちゃんを頭の上から落とすと、また急いでその場から離れます。


 それなのに……。


「ぁぁぁあ!!」


「またですか?! ぎゃぅ!」


 今度は雪ちゃん。慌ててそこから移動しても、また僕の上から、今度はわら子ちゃん。そして楓ちゃんまで落ちて来ました。わら子ちゃん……幸運の気を張っておいて欲しかったです。


「はぁ、はぁ……もう、これ以上は」


 もう立てなくなって、その場から移動しない方が良いと思ったんだけれど……。


『うぉぉぉ!!』


「やっぱり駄目なんですか~!! ぎゃぅう!!」


 白狐さんが落ちて来ました。ここからは重量が違うから、僕死んじゃうってば!


『うぉっ! 椿よ。何故我の下に?!』


「あっ、白狐さん。できたらそのままでお願いします」


『何?』


 その後、白狐さんが倒れた僕を抱き抱えてくれたので、次は大丈夫そうです。だって、この状態なら……。


『おぉっ?!』


『ぐわっ!』


 黒狐さんが落ちて来て、白狐さんの頭とごっつんこしました。

 何で頭を下にして落ちて来ているのですか? というか、皆順番に落ちたの?!


「さて……あとは4人と、レイちゃんですか……」


 それから僕は、もう覚悟を決めて立ち上がり、天井を見上げます。だけど、そこから現れたのは……。


「あっ、椿様、座敷様。それに他の皆さんも、無事でしたか!」


 朱雀の羽を広げ、他の3人を担いだ朱雀(あやり)さんでした。

 ついでにレイちゃんも、フワフワと飛んで降りて来ましたね。どうやら、この人達は心配する必要無かったです。


 とにかくあの霧は、思った場所に転移させる妖具なのですね。旧校舎に行きたいと思っていたら、本当に行けましたから。

 という事は、皆が最初に飛び降りた時も、僕の所に向かいたいと、そう思ったからなんですね。そして今もね。だから、ピンポイントに僕の真上に……。


 もう最初から、一息に飛び降りてしまえば良かったんですね。無駄な時間を過ごしてしまった気がします。

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