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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
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第拾肆話 【1】 創刊特大号はーーさせません!

 全員と無事に再会した僕は、卵の霊さんに謝っています。主に、つまみ食いをした事なんですけどね。

 ただ、あれは妖怪食じゃなかったのに、凄く力が湧いてきているので、とても不思議なのです。


「構わないさ。それ以上の働きをしてくれたからな。しかし、料理人では無かったのか。それであの実力とは恐れ入る。どうだ? 良ければ弟子入りをーー」


『それはいかん! 椿の手料理が食べられなくなるではないか!』


 卵の霊さんが言い切る前に、白狐さんが止めてきましたね。


「何だ。既に作ってやる相手がいるのか。それは残念だな。あぁ、そうそう。ここの料理は、神々に献上する物を、特別な処置を施し、悪霊の浄化を促す物としている。神妖の妖気を持っている者なら、妖怪食を食べたのと同じ働きをするはずだ」


 あっ、そういう事でしたか。どうりで力が湧いてくると思いましたよ。というか、そんな特別な物だったなんて。それを僕はつまみ食いして……本当にごめんなさい。


「だから気にするなと言っている。寧ろ、こちらの方が感謝している。お前のおかげで、料理を出すのが間に合ったからな」


 僕がしょんぼりとしていたからか、卵の霊さんが再びそう言ってきました。

 それでも可能なら、いつかまたお手伝いに来た方が良いのかも知れません。


「しかし、鞍馬天狗の翁にも困ったものだ。新たな部下の紹介くらい、して欲しいものだな」


 すると今度は、もじゃもじゃの髭が沢山生えて、でっぷりとお腹の出ている、叔父さんみたいな妖怪がそう言ってきました。何でしょう……この妖怪さんは。ダルマみたいなんですけど。


『すまんの。こちらも、そなたの事は聞かされていなくて……』


 そして白狐さん黒狐さんも、この妖怪さんの事は知らないみたいです。


「まぁ、ずっとこの屋敷に閉じ籠もっているからな。翁も忘れているんじゃないのか? がはは!!」


 それでも、外界の情報は得ているんですよね? だって、僕のファンクラブのパンフレットを手にしているんだもん。

 だけどその後に、黒狐さんがダルマみたいな妖怪さんに話しかけます。しかも、ちょっと落ち着きが無いです。


『とにかくだ。俺達はここから出たいんだ。悪いが、出口に案内してくれないか?』


「それは構わんが。外には謎の黒大蛇がおるぞ」


 そうでした。僕達は早く、学校の旧校舎を調べないといけないのでした。

 何か起こっているのかも知れないし、のんびりなんてしていたら、何もかも手遅れになるかも知れません。それなら、その黒大蛇は僕が浄化しないと駄目ですね。


「大丈夫です。黒大蛇は、僕達が何とかします!」


「ほぉ、それは心強いな。よし、それなら我々は、何故空間がおかしな事になっているのかを調べよう」


 その原因は恐らく、旧校舎にありますね。

 きっと、そこに来られたくない誰かが、あそこの空間をねじ曲げ、旧校舎の中に入れなくしていたんだと思います。


 多分、八坂さんの仕業でしょうね。もしくは、華陽かな?


 そうなると、こっちからではどうしようも出来ないかも知れません。だけど僕は、その時ある事を思い出しました。


 そうだ。旧校舎の中には入れるはずです。


「多分、空間を戻す事は出来ないでしょうね。でも、学校の生徒みたいな人や、半妖の人達は、ここには来ていないのですよね?」


「ん? そうだな。お前達が来たくらいで、あとは至って平和だったぞ。空間の方も、昨日までは何ともなかったわ」


 ビンゴです。という事は……。


「それなら。外の空間の何処かに、旧校舎に繋がる道があるのかも知れません」


『なる程。そういう事か! 椿よ、良く気付いたの』


 いや、白狐さんは気付いていたでしょう? スマホを取り出して、妖気を確認する動作をしていましたよ。

 それってさ、何処かに妖怪の力を使って、別の空間と繋がっていないかを調べていたのでしょう? 黒狐さんは本当に気付いていなさそうだけどね。


「白狐さ~ん……」


『む? いや、すまん。少し試したくなってな。結果、この屋敷には何も怪しい所は無かった』


「ありがとうございます。さて、あとは……」


 僕が目を細めて白狐さんを見ていたら、あっさり白状しました。この屋敷には、別の空間と繋がっている道は無いのですね。それならやっぱり、外にあるのでしょうね。


 だって、全校生徒や半妖の人達が、旧校舎の中に入って行っているんです。

 そして少なくとも、この屋敷には来ていないのなら、旧校舎に連れて行かれた人達は、ちゃんと旧校舎の中に入っている事になります。


 ただ、その後に空間をおかしくしたというのなら、僕達が今日ここに来るのを把握していた事になります。でも、それはあり得ないよ。未来予知でもしない限りね。つまり……。


「昨日までは空間は大丈夫だったーーと、そう錯覚させられていたら?」


「なっ……!! そんな事が……」


「出来るかも知れないのです。何もかもを隠して、うやむやにしてしまうあの人なら、そんな方法の1つや2つ、隠し持っているかも」


 ダルマみたいな妖怪さんが驚いているけれど、相手はそれだけ、騙すのが得意な人なんですからね。


 そうなると、人々を連れ去りだしてから、常に旧校舎の空間をおかしくさせていたんでしょうね。その方が、いつでも侵入者を飛ばせますからね。

 だから、やっぱり外の何処かに、学校の旧校舎に繋がる道があるはずです。その道から、全校生徒や半妖の人達を、あの旧校舎の中に入れたという事です。


『とにかくじゃ、ここで考えていてもしょうが無い。1度外に出て、黒大蛇の方を何とかするぞ』


「そうですね。白狐さん」


 そうしないと、外を調べる事も出来ません。


 そして僕は、そのままホールを出ようとしたのだけれど、そのダルマみたいな妖怪さんと、雪ちゃんの話し声に、ついつい反応してしまいました。


「雪ちゃん。次のファンクラブの創刊号は、いつ頃に……?」


「そう、だね。今はドタバタしているし。来月、出せるかなぁ……」


「月1でしょ? 頼みますよ~しかも次は、偶数月。つまり……」


「分かっている、特大号。ちゃんと、椿の写真を沢山ーー」


「沢山、何ですか?」


 ファンクラブに創刊号まであるんですか? 月1ですか。それって、いつから発行されているのでしょうか?


「はっ……! 椿。いや、その……これは」


「ねぇ、雪ちゃん。創刊号って事は、お金取ってるの?」


「いや、それは流石に……」


「いやいや! 会員費が月1000円ですからね~」


「へぇ、会員費……」


 それっていったい、何処にいっているのでしょうか? 僕の会員数からして、とんでもない額になっていますよね。


「あっ、大丈夫。それは翁に管理して貰っているから。私は別に、お金儲けをしたい訳じゃないの。だけど、翁の命令で……」


 それなら、帰ったらおじいちゃんを説教です。

 何やっているんですか……というか気が付いたら、僕のファンクラブがとんでもない規模になっていましたよ。


『ふっ。いっその事、世界中にでも……』


「そうなるとね、僕を独り占めに出来ないですよ。白狐さん」


『ぬっ……それは困る』


 全くもう。馬鹿な事を言っていないで、早く行きーー


「ーー何で、皆して僕の前に並んで……?」


 ホールを出ようとしているのに、中々出られないんですけど?

 しかも、その並んでいる列に悪霊さんまでいるんですけど。


「いやぁ……俺達もファンなんだよ。だから、一緒に写真を撮らせてくれ!」


「俺もだ!」


「いや、私も!」


「馬鹿者! 料理長である私が先だ!」


 今料理長まで居ませんでした?! 皆して何をやっているんですか!


「は~い、並んで並んで」


「そして雪ちゃん!!」


 君が率先したら駄目でしょう!

 もう収集が付かなくなっちゃいますよ。だから僕は、雪ちゃんの襟首をむんずと掴み、そのまま引きずって行きます。


「ちょっ! 椿。これを、特大号の特集に……」


「却下です。触れ合い記念特集って事ですか? 僕はアイドルを目指しているんじゃないんですからね!」


 雪ちゃんには1度、ちゃんとお説教をしないといけませんね。そうしないと、止めどなくやってしまいそうです。


 カナちゃんの夢を引き継いだにしては、少しやり過ぎですよ。

 カナちゃんだったらきっと、ここまではやらないですよ。だからこれ以上はもう、雪ちゃんの願望でしかないです。


 全く……雪ちゃんはいつからこんな感じになったのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] くっ、この中に入りたい!椿ちゃんと写真撮りたい!
2021/12/13 09:43 退会済み
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