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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
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第拾壱話 【2】 キレた美亜ちゃん

「え~それじゃあ、作戦会議の方を……」


「姉さん。それよりも、布団から出て来て下さいっす」


 無理です、楓ちゃん。今ここには、白狐さん黒狐さんも居ますから。

 あの後、割と早くに復活されてしまって、作戦会議に加わっていますから。あのまま寝ていて欲しかったのに。


『ふっ……椿の永遠の愛の誓い。可愛かったな』


『しかし白狐。2人と言うのが引っかかる。まだまだ勝負は着いていないな』


『良かろう。それなら、どちらが先に子を宿させる事が出来るか、勝負ーー』


「勝手に決めないで下さい!!」


 このまま放っておいたら、僕の意思とか関係無しに、次々と話が決まっちゃいますよ。

 だから僕は、咄嗟にお布団から飛び出したけれど、その瞬間に白狐さん黒狐さんと目が合ってしまいました。そして、一気に顔が熱くなった僕は、再びお布団に潜り込みます。駄目です、恥ずかしい。


「ちょっと椿。いい加減に出て来なさいよ! 作戦会議が出来ないでしょうが!」


「大丈夫です。このままで出来ます」


「あのね……あ~もう。ちょっと、夫の2人。何とかしてよ」


 美亜ちゃん、それトドメ刺しているからね。僕、余計にお布団から出られませんからね。


『こういうのは、様子を見るのが1番可愛いんじゃ』


『弄って反応を見るのも可愛いぞ』


 2人とも最悪ですよ。この状況を楽しんでいるじゃないですか。もう良いです。勝手に作戦会議を進めます。


 そのままお布団に潜ったままで、僕は皆に話しかけます。


「えっと……それで、僕が通っていた学校の旧校舎に、その学校の全校生徒、そして捜査零課の半妖さん達に、京都市内に住む半妖の人達が誘い込まれた件で、僕達はそこに侵入し、その人達を助けに行きます」


 攫われた訳では無いので、原因究明が難しいのです。だから、侵入して調べるしか無いんだけれど。


「あの……それって、凄く危険だよね。何で私達が?」


 わら子ちゃんの言う通り、かなり危険なんです。そして何で僕達なのかと言うと、答えは簡単です。


「酒呑童子さんは、亰嗟の方を押さえてくれています。同じ様に、他のライセンス持ちの妖怪さん達も、それを手伝っていたり、妖界から逃げて来た妖怪さん達の把握、その犯罪抑止に努めています」


「つまり、手が空いているのが私達であり、且つ最強パーティーである私のパーティーが、1番適ーーにゃぁっ?!」


「いつから美亜ちゃんのパーティーになったんですか?」


 お仕置きとして、影の妖術で美亜ちゃんの影を操って、彼女の尻尾を握っておきます。


「椿ちゃん、椿ちゃん」


 すると、それを見た里子ちゃんがお尻をこっちに向け、自分の尻尾を振っているんだけれど、握って欲しいのかな? でも、これは無視です。話が進みませんからね。


「それで、侵入に関してだけれど、復活をしたレイちゃんが結界を破ってくれます。その後だけど、美亜ちゃんに呪術の罠を警戒して貰い、その後ろを僕達が行く、というのはどうかな?」


 僕のその提案に、龍花さんが手を上げてから意見を出してきました。


「椿様。それでは、咄嗟の事態が起こった時、美亜さんが危険ですよ」


 それもそうでした。だけど、呪術は警戒したいからなぁ。美亜ちゃんには、出来るだけ先頭に居て欲しいですね。


「龍花、椿様は呪術を警戒されているのです。美亜さんを頼りにするのは当然ですので、ここはその美亜さんを、この私が守ります」


「いや、玄葉。お前は全員を守るんだ」


「しかしそうなると、私の盾の装甲が薄く……」


「だから、そこをカバーするのが、我々4人の役目でしょう? 座敷様も居るんですよ?」


 困りました。龍花さん達4人は、それぞれ自由に動いて貰おうと思ったんだけれど、しっかりと作戦会議に加わっています。

 だってそうしないと、この人達の方が任務を沢山こなしていて、難易度の高い任務なんかもやっているのですよ。僕なんかより、もっと的確に指示が出せる……はずなんですけど。


「そもそも、いつも龍花や虎羽が前に飛び出すので、私が全体をカバーする羽目になるんです。偶には、作戦通りに動いたらどうですか?」


「何ですって? そうは言っても玄葉、あなたは戦闘が出来ないでしょう」


「私だって出来ます」


「あっ……ちょっと、喧嘩をしないで下さい」


 この人達って、こんなんでしたっけ? あれ? しかも、僕の言葉が届いて無いです。


「そもそも、援護する私の身にもなりなさい」


「朱雀。あなたは空を飛んで、安全圏から攻撃するだけでしょうが」


「聞き捨てなりませんね、虎羽。勝手に動きまくる誰かさん達を避けて、敵だけを狙い撃つのは、至難の業なのですよ?」


 しかも、何だか徐々にヒートアップしてきて、収拾もつかなくなっているようなーーって、あっ。これはマズいです。


「4人とも、そこまでです! それ以上は……あっ、もう遅かった」


「龍花さんに虎羽さん、それと玄葉さんに朱雀さんも。何で喧嘩しているの? 私、そんな4人は見たく無いよ。う~!」


「えっ? 座敷様……? ちょっ、きゃあっ?!」


「待って下さい、これは……ぁぁぁあ?!」


「座敷様、落ち着……うわぁぁ!」


「くっ、撤た……はぁっ?! わっ、あぅ!」


 あ~あ。わら子ちゃんが不機嫌になっちゃったから、4人とも地味に不幸な事が起こっちゃったよ。懐かしいですね、この光景は。


 天井の屋根が落ちてきたり、床が抜けたり、何故か浮遊丸さんが部屋の中に飛んで来て、そのまま激突したり、逃げようとしたら足がもつれて転がって、その先の柱にぶつかったり。


「う~ん。それじゃあ龍花さん達は、各自自由に動いて貰いますね。この感じじゃ、なかなか決まりそうに無いので」


 そして、僕がそう言った瞬間……。


『これ、椿よ。何時まで布団に潜っている。流石にこれ以上は、皆に失礼では無いのか?』


「え? うわっ?!」


 突然白狐さんが、お布団の隙間から覗き込んでいる、僕の顔の間近まで、自分の顔を近付けていました。

 だから、急に白狐さんの顔が上から現れたんです。慌ててお布団を頭から被っちゃいました。勘弁して下さい。


『椿よ。我はもう気にしていないから、早く出てこんか』


「僕が気にするんです!」


「椿ちゃ~ん。あんまり抵抗すると、尻尾弄っちゃうよ~?」


 あっ、しまった。里子ちゃんの声が後ろから?

 見ないなぁと思っていたら、いつの間にか僕の後ろに。しかも、尻尾はお布団に隠せないので、いつも出しているんです。

 だからこのままだと、里子ちゃんに尻尾を握られちゃう。でも、お布団からは出ません!


「たぁ!!」


「なっ! 椿ちゃん!? お布団を被ったまま?!」


「ふっふっ……! 甘いですよ」


 これなら僕は、このお布団から出なくて済みます。立ってしまっているけれど、体にお布団を巻き付け、顔まで覆い隠しているから完璧です。


「さぁ、作戦会議を続ーーうわぁ!!」


 でもこれ、前が見えなかったです。

 地味な不幸を受けて、そのまま床に倒れていた龍花さんを踏ん付けてしまい、僕も倒れてしまいました。


「今の内です! 姉さん、いい加減にお布団から出て来て下さい!」


「わぁっ!! 楓ちゃん、お布団を引っ張らないで!」


「それなら、冷やそうか?」


「雪さん、それ逆効果っすよ!」


 そんな風にして、僕が必死に抵抗を続けていた時、部屋に一際恐ろしい声が響きます。


「フゥゥ……! あんた達、作戦会議でしょうが。これ以上騒ぐなら、全員呪うわよ」


 美亜ちゃんが怒り心頭していて、今にも僕達全員を呪ってきそうな程に、負のオーラが全開でした。


「椿。あんたいい加減布団を取らないと、一生その布団から離れられなくなる呪いをかけるわよ」


「はい。ごめんなさい」


 声がマジです。キレてますよ、これ。


 そんな呪いがあるかは分からないけれど、美亜ちゃんの雰囲気が、本当にその呪いをかけてきそうな勢いなんです。

 だから僕は、素直にお布団を体から外して、敷き布団の方に戻しました。


「それじゃあ、あとは分かっているわよね?」


「はい、ちゃんとやります……」


 この時、僕は思いました。もう2度と、美亜ちゃんを怒らせたら駄目だって。

 それは皆も分かってくれた様で、その先はただ静かに、淡々と作戦会議が進みました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 椿ちゃんが布団に篭ってる時ってどんな風になってんの? イメージ画像欲しい、下手くそでも構わないから画像ちょうだい
2021/12/13 09:28 退会済み
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