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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
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第玖話 【1】 急がば回れ

 あれから僕達は、急いでおじいちゃんの家に戻り、任務の報告をして、レイちゃんが復活した事をおじいちゃんに言いました。


「ご苦労じゃった。それに、霊狐が復活したと。つまり、またあの旧校舎に入れると……」


「そうです、おじいちゃん。だから今すぐーー」


「ならん」


「な、何で?!」


「危険過ぎるわ」


 おじいちゃんの言っている事も分かるけれど、それでもこれは、チャンスなんです。

 向こうは……八坂校長はもしかしたら、僕達が結界を壊す方法を、かなり限定的なものだと、そう認識しているかも知れないのです。


 だから今なら、奇襲出来るかも知れないのですよ。


「でも、向こうが何もして来ないのは、その結界が安全だって思っているからで」


「八坂はそうは思うとらん。それに忘れたか? 妖魔人を出入りさせているのを。むしろこれは、罠じゃと考えるべきじゃ」


「そんな……」


 確かに、罠と考えた方が説明は付くよ。


 妖魔人の出入りを隠そうとしていないのは、堂々と出入りさせているのを見せて、僕達に妖魔人の居場所を教え、奇襲させるのが目的かもしれないよね。

 でも、あんな強い妖魔人が居ると分かったら、奇襲も襲撃も成功しないと思って、余計に罠かもって警戒させちゃうよ。


 わざわざ堂々と見せるかなぁ……?


『椿よ、また頭から煙が出とるぞ』


「うぅ……また考え過ぎちゃって……」


「椿、焦る気持ちは分かる。じゃが、もう少し情報収集をしてからの方がーー」


 だけど、おじいちゃんがそう言い終わる前に、酒呑童子さんが僕達の居る部屋に入って来て、スマホの画面を見せて来ました。


「そうも言っていられない事態が起きたぞ」


 その画面には、情報サイトのニュース動画が流れていました。


『今日お昼頃。伏見区の学校で、その校内にある旧校舎に、全生徒が入って行き、そのまま出て来なくなるという事件が起きました。現在警察では、調査に乗り出していますが、何故かその校舎には入れず、捜査は行き詰まっております』


「おじいちゃん、これ!」


「む、むぅ……」


 これはもう、じっくりと調べている時間なんて無いんじゃなのですか?


「ぷはっ……あ~ヒック。お~、翁よぉ。心配なのは分かるが、もう敵さんも待ってはくれないって事なんだろう。八坂の野郎は何かしようとしていやがる。それなら、早めに潰しておかねぇと、これで亰嗟にも動かれたら、もうどうしようもねぇだろう?」


 相変わらずお酒を飲みながら、おじいちゃんに話しかけている酒呑童子さんですが、おじいちゃんの目が険しくなっていっていますよ。


「亰嗟の方は、お前さんが何とかせぇ」


「んなっ?!」


「元々お前さんが何とかすると言ったじゃろうが!」


「いや、確かに言ったがよ! あいつ等……」


「なんじゃ?」


「いや、まぁ……なんだ、分かった。そっちは、俺が何とか抑えておく」


 何だろう。酒呑童子さん、歯切れが急に悪くなりましたね。何かあるんですか? それと、随分久しぶりに美瑠ちゃんを頭に乗せていますね。


「鬼丸。鬼丸。あれ、言わないの?」


「うるせぇ。まだ時期じゃねぇ。こいつらには先ず、目先の事を何とかして貰わないといけねぇ。そもそも今の亰嗟は、華陽の行動を見ているに過ぎない。それまでは、ただ領土拡大をしているだけだ」


 酒呑童子さん。重要な情報だったら言ってくれないとダメなんですけど。

 だけど、皆がそれに文句を言う前に、酒呑童子さんはおじいちゃんの部屋から出て行っちゃいました。それなら僕は、酒呑童子さんを信じますよ。


「全く……彼奴は相変わらずじゃな。こうなっては仕方ないの。白狐黒狐、それに椿。旧校舎に向かい中を調査し、可能ならば捕らわれた者達を救出するんじゃ。椿はあのメンバーと一緒にじゃぞ? 分かったか」


「うん、分かった」


「亰嗟の方は、酒呑童子が押さえてくれるじゃろうから、鬼達の心配はするな」


 そしておじいちゃんは、テキパキと僕達に指示を出し、ついでに手元のスマホで、誰かに連絡もしています。達磨百足さんとか、捜査零課の人達かな?


 それにしても。おじいちゃんのその妖怪専用のスマホって、画面の表示形式が大きいですね。あれって人間が使っているような、お年寄り向けのスマホみたいな物なのかな?


「むぅ……この妖怪用の“すまほ”とかいう携帯は、未だに慣れんのぉ……今までので良いと言うたのに、折り畳み式のコンパクトな物を廃止するとはのぉ。人間達の方はまだ廃止されとらんのに……」


 それって、ガラケーの事でしょうか?

 やっぱりこっちも、時代の流れに乗ってという事なのでしょうね。それでも、その携帯を一気に廃止にするなんて、妖怪の方は思い切った事をしますね。


 すると今度は、僕の妖怪専用のスマホの方に、メッセージが来ました。


「あれ? これって」


「いや、なに。これはやっておいた方が良いんじゃろ?」


 おじいちゃんから、チャットアプリの友達承認が来ていました。

 人間達の方も有名な物が沢山あるけれど、僕達の方は1種類だけです。


 その名も『KAINE(カイン)』です。


 チャットと通話、更には日々の呟きまで出来るのです。

 チャットではスタンプも送れるし、無料通話も出来て、人間達のものと機能はさほど変わらないです。

 ただ1つ。妖怪専用のこのアプリは、手配書アプリや、妖気感知アプリとも連動しているので、任務の手助けをして欲しい時に、その手配書と妖気を送り、その妖怪にヘルプ信号を出す事も出来るのです。


 今までもそれで、増援を頼んでいたりしていたのです。結構便利なんですよ。


 そんなアプリをようやく、おじいちゃんも使えるようにしたのですね。これで、増援の連絡がまた取りやすくなったんだけれど……1つ、問題が発生しました。


「おじいちゃん。それスタンプだって……」


「うっ……ぬぬ。ちょっと待て、文字はどうやって打つんじゃ?」


「あ~もう、下の方にねーー」


 おじいちゃんがこれを使いこなすのに、時間がかかりそうな事ですね。

 ぬりかべさんのどや顔がある、OKスタンプばっかり送ってこないで? あの妖怪さんあごが凄いからさ、このどや顔はキツいってば。


「あっ……! だから、そっちは違うよ。それ、写真選択だから」


「ぬぬ、下に空白等……」


「空白と言うか、ラインが入ってーーだから、そこじゃなくて!」


 何でしょう、これ。何というか……。


『端から見たら、孫娘がおじいちゃんに、スマホの操作を教えているみたいじゃの』


 それです白狐さん。

 早くこんな事は終わらせて、皆に集合して貰って、今回の事情を説明して、旧校舎に行きたいのに~!


「まぁ落ち着け、椿よ。今さっき任務を終えたばかりじゃろうが。そんなに連続で任務をしても、疲れるだけじゃ。先ずは捜査零課の調査を待ってから、旧校舎に向かえば良い」


 むっ……確かにですね。何の準備も無しに向かって、敵の策略に嵌まってしまったら意味がないです。

 でも、全校生徒達の安否も気になるし、何よりその学校側が、何をするか分からないのです。最悪、取り壊しを進める場合もある……。


 それも、ニュースで会見とかすれば、直ぐに分かるんでしょうね。

 人間達の出方。捜査零課の動き。それを全て見てから動いた方が、スムーズに動けるかも知れませんね。


「ふぅ……分かりました。それなら今日はたっぷりと、おじいちゃんにスマホの操作を教えて上げます」


「ぬっ? いや、これは儂1人でも……」


「いや、スタンプ連投しないでくれます?」


 それ、戻るボタンじゃないから。おじいちゃん、ちょっとボケて来ましたか? 鞍馬天狗なのに。


 そして今度は、氷雨さんが項垂れているNOスタンプばっかり送らないで。雪女さんだから、落ち込み方が凄いです。何だか、気持ち寒くなってきているんですけど? 画面から、冷気出てないよね?


『翁、墓穴を掘ったな』


「ぬぐっ……」


 黒狐さん。それはどういう意味でしょうね。


「よっしゃ……! 今日の特集はこれでOKやな」


 ん? 更に上空から、浮遊丸さんの声?

 何だか気になったので、僕は上を見上げます。すると浮遊丸さんが、僕とおじいちゃんの様子を写真に撮っていました。


「浮遊丸さん。それ、何に使うの?」


「何って、そりゃあ……」


 そう言って向かったのは、おじいちゃんの部屋の出入り口。そしてそこには、雪ちゃんの姿がありました。


「ありがとう。カメラマンさん」


「いやいや~どういたしましてや~報酬はもちろん?」


「はい」


「うっひょぉ!! 椿ちゃんの未洗濯のお洋ふーーあっ」


「ん? 椿からカインのスタンプメッセージ。お母さんのNOスタンーーあっ、ちょっと、椿待って……!」


 待ちません。なに裏で手を組んでいるんですか?


 なんとなく気付いてはいたけどね。僕のファンクラブの写真、浮遊丸さんが撮っているんじゃないかなってね。

 でもね、その報酬はなんですか? 最近僕のお洋服が、洗濯に出した後、戻って来るのに時間がかかっていたんだけれど……なるほど、そういう事でしたか。


 そして、それを堂々と見せていると言う事は……。


「僕にーーいえ、私に罰して欲しいという事ですね。十分に分かりました」


「待って、椿。金狐モードは流石に……」


「雪さ~ん! 今自分の居る場所、忘れてたやろう!」


「そう言う、浮遊丸こそ……」


 厄介な人達が手を組みましたね。これ以上、僕への被害が拡大する前にーー


 って、何だか沢山のスタンプが送られて来ているんですけど!


「ちょっと、何をやっているんですか? 変なスタンプばかり送らないで下さい! おじいちゃん!」


 通知音が連続で鳴って、気になるってば!


 それに送られて来たのは、達磨百足さんのガッツポーズと、ヘビスチャンさんが仕事をしている姿と、最後は浮遊丸さんの疑問顔ですか。

 何だかどれもしっくりときているけれど、最後のは少しイラッときましたよ。


「いや、じゃから。文字がのぉ……」


「ですから~!!」


 まさかの金狐状態のままで、僕はおじいちゃんに再び操作説明をしているけれど、後ろの2人が逃げそうです。


「よっしゃ、今の内や!」


「あっ、無理……」


「そうですね。逃がしませんよ」


 影の妖術で捕らえておきましたからね。さて、おじいちゃんに説明をしている間、くすぐりの刑です。


「あひゃひゃひゃひゃ!! 待て! ちょい待ちぃ! これは流石にあかんてぇ!」


「椿、ごめん。悪かったから……くっ、あはっ、あはははは!!」


 実は何気に、雪ちゃんが笑ったのって初めてかも。何だかちょっと、嬉しいですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 妖怪たちの世界にもガラケーってあるんですね。リアルでもスマホの技術でガラケーをつくればそれなりに需要があると思うんですよね。妖怪の世界でもあると思いますけどね。
2021/12/13 09:04 退会済み
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