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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾弐章 華麗奔放 ~戦いの火蓋は華麗に~
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第肆話 【2】 奮起する半妖達

 覚醒した峰空に、あれだけ本気で戦ったんだから、僕の妖気が切れる寸前になるのはしょうが無いのです。だけど、もう少し考えるべきでした。


 とにかく今は、妖気を回復させる手段を考えないといけません。そうしないと、皆殺されてしまう。


「情けないですね、峰空」


「まぁ、あいつは女性だったんだ。仕方ないです」


 そう言いながら栄空は、龍花さんと虎羽さんの攻撃を軽々と避けたり、片手で受け止めたりしています。信じられない。


「くそ! すばしっこいですね」


「違う、龍花。これは、見切られているんだ」


 虎羽さんの言う通り、栄空は決して素早いわけではないです。速さだけで言ったら、閃空の方が速かったです。

 それにしても、近接戦闘を得意とする龍花さんと虎羽さん2人の攻撃を、全て見切るなんて。これは何か、カラクリがあるに決まっています。


 だって栄空は、ほんの少しの動作だけで、2人の攻撃を避けているんですから。

 しかも何故か、死角からの攻撃まで全て。やっぱりおかしい。見えている? という事はもしかして。


「今の妖気なら、これくらいは。玩具生成!」


「うん? 捕獲対象がなにを……?」


「僕はただの捕獲対象じゃないですよ」


 僕はある確認の為、取り出したパチンコを相手に向けます。


「椿様! そんなのでは相手に避けられますよ!」


「龍花さん、分かっています。だから、ある性質を持たせているんです! それに、妖気が少なくなったからって、戦えないわけじゃないんです! このパチンコの玉は凄く重くて、そして目に見えない位のスピードで飛ぶからね!」


 そう言って僕は、パチンコを引っ張っている腕を離し、パチンコの玉を栄空に向かって飛ばします。


「間抜けですね。自分からその性質を言うなんて」


「それに、見えますよ。そのパチンコ玉がゆっくりと弧を描いて、落ちーーている?」


 はい、落ちています。流石にこんな重いパチンコ玉を、そんな目に見えないスピードで飛ばすなんて、白狐さんの力を使ってでも怪しいですよ。だからねーー


「影の操!」


 僕の影の腕で、落としたパチンコ玉をキャッチして、再度栄空に投げ付けます!


「なっ?! ぐぅ!」


「避けーーぐぉっ!?」


 そのあまりにもな攻撃の仕方に、栄空は面食らったらしくて、僕の攻撃に反応が遅れ、パチンコ玉を足に思い切り受けました。

 でも、おかしいですね。1人だけ当たったのに、2人とも膝を突きましたよ。となると、もう間違い無いです。


「やっぱり。2つに分かれて、感覚や五感までもが分かれたけれど、それを2体で共有していますね!」


「なっ……!? という事は、片方が見ている風景を、もう片方が見ているという事なんですか?!」


「そうです。因みに今見たところ、痛覚も一緒ですね。そこが弱点かも知れないけど。だからさっき、僕のパチンコ玉を受けた時、1人にだけ当たったのに、当たっていないはずのもう片方も、痛がって膝を突きましたよ」


「なる程。それに気付いていたから、攻撃にワンクッションおいたのですか」


 そうしないと、2人とも僕のパチンコ玉を凝視していましたからね。

 視野2つで見ていたら、どんなスピードでも避けられる可能性があります。


「なる程。そうなると、1体に攻撃を集中させた方が良いでしょうかね?」


「龍花。それでも避けられます」


 虎羽さんの言う通りですね。

 例えトリックが分かっても、対処法までは分かっていないです。どっちにしろ、片方の目を塞ぐか、戦闘不能にさせないといけませんよ。それに僕だって、早く妖気を回復させないといけません。


 幸い、白狐さんと黒狐さんが何か持っていそうなので、急いでそっちに取りに行きたいんだけれど、栄空が僕を睨んでいます。


「厄介ですね。こうなればーー」


「えぇ、全て」


「「爆破させるのみぃぃぃい!!」」


 でも次の瞬間、栄空がそう言うと、2体がお互いの手を合わせ、そして反対側の手を横に広げます。

 まさか……2体の妖気を合わせて、この一帯を爆発させるんじゃ!!


「「重空死爆(じゅうくうしばく)!!」」


 次に栄空が叫ぶと、その周りに居た僕達の体が重くなり、思い切り地面に押し付けられてしまいました。


「あぐっ?! しまった! 栄空って確か、重力を増やすような事もしていました。これってまさか、それの合わせ技?!」


 しかも、栄空の広げた手の熱が、ゆっくりと上がっていく感じまでします。

 このままだと、その手から爆発を起こされて、皆吹き飛ばされてしまいます。更に妖気の感じからして、今までとは比べ物にならない程の、とんでもない大爆発が起きそうです。


「目的の妖狐も、体さえ残っていれば」


「そうですね。手間もかかり面倒ですが、亜里砂様が言うには、それでも記憶を抜き出せる。だから、問題は無いです」


「「さぁ、散れ!!」」


 マズいです。この爆発は何とかしないといけません!

 だけど、僕も龍花さん達も、白狐さんも黒狐さんも、皆地面に押さえつけられていて、その場から動けません。


『椿ぃ!!』


『いかん! 何とかしないと!』


「「もう遅いです!! はっははは!!」


 ーー


 ーーーー


 あれ? 何にも起きないのですけど。


「ぬっ? どう言うーー何?! こ、これは!」


 何故か驚く栄空の言葉に、目を閉じていた僕は、ゆっくりとその目を開いて確認をします。

 すると、熱が発生していた栄空の手が、何故か凍り付いていました。


 まさか、また雪ちゃんですか?!


「間に、あった……」


「ぬぅ……! 半妖如きが!」


「中途半端な奴等が、この私の邪魔をしますか?!」


「さ~て、中途半端なのは誰でしょうかね? 皆、あの手に気を付けてかかれ!」


 すると今度は、赤木生徒会長がそう叫び、同時に半妖の生徒達、そして零課の半妖の人達が、一斉に栄空に飛びかかります。


 その前に皆、相手の重力は?!

 と言いそうになったけれど、何だか体が軽いです。重力が元に戻っている?

 あっ、三間坂さんのタバコの煙が辺りを漂っていて、そのタバコの煙の中なら、体が軽くなっていました。相手の力を無効化させているよ。どんな凄い妖具を持っているんですか、三間坂さん。


 それでも、危険には変わりないです。だから僕は、必死に皆に向かって叫びます。


「皆、何やっているんですか?!」


「何って、奴の視界を塞いでいるのさ。こうやって大量の人混みを作れば、あいつ等だって、君達を見つけにくくなるだろう? そこを攻撃してくれれば」


 そうは言っても、こんな作戦は危険過ぎます! あぁ、ほら。1人狙われています。あのままだと殺されちゃう!


 僕が妖術で玩具を生成し、それを食い止めようとした時、その半妖の人達の前に、薄い六角形の盾が立ち塞がり、栄空の爆発を防ぎました。


 これは、玄葉さんの玄武の盾?!


「大丈夫です。半妖の人達の勇気は、私が守ります。玄武盾! 百葉樹、散開!」


 玄葉さんの周りには、同じような盾が大量に浮いていて、そして半妖の人達それぞれの下へと向かい、傍に寄り添っています。

 前に1度見せてくれた、玄武の盾を大量に使った防御技。それを1枚1枚切り離して、半妖の人達に付けてくれたんですね。だけどそれって、玄葉さんの防御の方が……あっ、1枚だけ玄葉さんの下に残っていました。


「椿様。半妖の人達の行動を無駄にしない為にも、私達は私達の出来る事をやりましょう。私は、半妖の人達に紛れ、攻撃を仕掛けてみます。椿様は今の内に、妖気の回復の方を」


「うん。分かりました!」


 半妖の人達を危険な目に合わせたくは無いけれど、朱雀さんの言う通り、今は皆の勇気を、その行動を信じて動くしかないです。


 神妖の妖気を使わないと、相手は倒せない。僕の浄化の力だけが、栄空を倒せる唯一の手段なんです。


 そして僕は、急いで白狐さん黒狐さんの下に向かいます。


「椿、皆は大丈夫なの?!」


 すると、夏美お姉ちゃんが真っ先にそう言ってきました。

 でもお姉ちゃん、自分の心配をして下さい。地面に押し付けられた状態から、起き上がれていないですよ。どこかやられたのですか?


「大丈夫。と言うより、皆を信じるしかないです。それより白狐さん、お姉ちゃんを見てくれませんか? それと、僕に妖怪食を」


『う……うむ』


 あれ? 白狐さんと黒狐さんが冷や汗を流しているけれど、何か嫌な予感がします。


「僕、援軍要請する時に、妖怪食のいなり寿司も一緒に持って来てって、そう言いましたよね? 里子ちゃんから、いなり寿司を貰っているんでしょ? それを貰えませんか?」


『あっ……その、だな……』


『すまぬ。白狐と一緒に、食べてしまった』


 ーーーーはい?


「えっ……と」


『いや。ここに来る途中に、全速力で急いでいたせいか、妖気が切れかけしまい、このままではと思い、つい……』


 いや、白狐さんと黒狐さんだけを責めたら駄目です。

 僕を助けるためにと急いでいたせいで、妖気が減っちゃったんでしょうね。というか、龍花さん達に持たせなかったのも、何でかなって思う。まぁ、多分「せめて荷物持ちをして下さい」って言われて持たされたのでしょうね。

 他の妖怪さん達も、任務で出払っていたのだろうし、居たとしても僕の為にと、結局2人が付き添っていただろうね。


 だけど、今の白狐さんと黒狐さんは、妖気が中々回復出来ずにいるし、常に食べーーても、あんまり回復しないよね。

 それじゃあ何故、白狐さん黒狐さんに? 我慢させていたら、2人は途中で消えていたかもね。そもそもそれも計算しないで、里子ちゃんから受け取ってしまったの? 里子ちゃんも、2人がどういう状況なのか忘れちゃっていた可能性もあるね。


 駄目です。冷静になって、白狐さんと黒狐さんを怒らない様にしようとしても、こればっかりは駄目でした。


「白狐さんと黒狐さんのバカぁぁあ!! あと里子ちゃんとかも! それに、どうせ皆も忘れていたのでしょう! 2人の妖気が回復しにくいことにさぁ!!」


 気が付いたら、僕はそう叫んでいました。それを聞いた龍花さん達も気が付いたらしく、何だか申し訳なさそうな雰囲気が背中から漂っていました。


 2人のせいじゃない、皆2人の状態を忘れていたから起こったこと。ただやっぱり、食べてしまったのは信じられなませんね。龍花さん達の誰かに頼んで、自分達はゆっくりとUターンしても良かったのに。

 そんなに僕を助けたかったの? 結果妖怪食を食べていたら意味ないでしょう。


 本当に、白狐さんと黒狐さんの馬鹿野郎です。

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